著者 : 小杉健治
周次郎の女房おきみが失踪した。実家の大店の質屋『甲州屋』の差金だと考えた周次郎は、亡父の今際の際の言葉を手がかりに、甲府へ女房捜しに向かう。だが、旅の途中、謎の刺客に襲われる。一方、悪質な金貸し妹尾別当を探る青柳剣一郎は、妹尾と『甲州屋』の関係を語る家訓に違和感を覚えていた。やがて江戸で起きた破落戸の連続殺しが、新たな事件の始まりとなる。
刺客の魔手から逃れた周次郎だったが、辿り着いた甲府で再び命を狙われる。誰が何のために?青柳剣一郎と縁ある旗本高岡弥之助の手助けで、おきみを捜し、亡父の遺した“言葉”の謎を追う周次郎は、『甲州屋』の誕生に黒い利権が渦巻いているのを知る…。その頃、江戸で金貸し妹尾別当の素性を洗っていた剣一郎は、江戸と甲府で暗躍する、闇の組織に立ち向かう!
大関大龍が横綱推挙を断る!!前代未聞の出来事の裏側にどんな事情が!?本場所千秋楽、好敵手である富士穂鷹との取り組みでの不可解な無気力相撲。両国・回向院で発見された初老の男の死体。高度経済成長時代に起こった誘拐事件。集団就職に隠された闇…。複雑に絡みあういくつもの謎から、真相が炙り出される。吉川英治文学新人賞受賞、社会派ミステリーの傑作。
鶴見弁護士の中学の恩師夏川が、札幌から上京した。城巡りが趣味の夏川は、雲海に浮かぶ城として有名な竹田城へ行く予定だという。数日後、神戸から竹田城へ向かった夏川が、忽然と消えたと連絡が入る。事故か事件か、恩師の安否を心配し鶴見は竹田城へ。やがて、教育熱心で生徒に慕われた男が抱えた暗い秘密を突き止めるが…。驚愕の真実を前に若き弁護士が下した決断とは?書下ろしミステリー。
鮮やかな斬り口だった。矢先稲荷脇で発見された死体を検死した青柳剣一郎は剣客による犯行と判断。三月前の刃傷事件と絡め、連続殺人を疑い探索を始める。浮上したのは同じ頃に一刀流仁村道場の師範代を辞め、姿を晦ました神村左近という男だった。一方、その道場の門弟高岡弥之助は事件当日、現場付近で左近を目撃、独自に追っていたが、第三の死体が発見され…。
瓦職人の藤助は、屋根の上から盗人が商家へ押し込む様子を遂一見ていた。真面目に仕事に精を出しても浮かばれない世の中…。そう悟った藤助は、大名家の下屋敷に忍び込む。天井裏から見たのは、武士を強請る願人坊主・宗善の姿。藤助は宗善とともに大名家を相手に、大金をせしめる謀に手を染めるが…。世にはびこる悪事に般若同心・柚木源九郎の鉄槌が下る!
幕末の名君松平春嶽の師に、と請われるも固辞、俗世を捨て和歌にすべてを捧げた橘曙覧の生涯。年番方与力宇野清左衛門は、詮議所にいた男にある面影を見て、疑念を抱く。長谷川平蔵の幼馴染で南町奉行となった男の矜持と心意気ー。小説好き必読!書下ろし時代文庫の人気執筆陣が、人の世を彩る感情“喜怒哀楽”を描き切る特別企画。第一弾は、三つの“喜び”が溢れる。
太物店『山形屋』の主は、店に置き忘れられた三十両の持主探しに嫌気がさしていた。貼紙をしても現われるのは偽者ばかり。ついに本人かと安堵するも、受け取りに来たのは代理の男だった。それでも主は男を信用するが、話を聞いた青柳剣一郎はあまりの大金と都合のよい話に不審を抱く。しかし、男はすでに行方をくらましていた。同じ頃、掬摸の死体が発見され…。
浅草の質屋『万屋』へ、竹紋の刺繍入りの財布を質入した男が、殺された。主人の藤十郎は、竹紋が自害した女形大瀬竹之丞のものと気づく。財布には大坂の質屋の証文が縫い込められていた。竹之丞が亡くなる前に、上方で芝居をしたことに繋がりがあると睨んだ藤十郎。折しも、鴻池から縁談が持ち込まれ、大坂へ向かうことに…。幕府を脅かす巨悪の陰が迫り来るなか、大逆転の名裁き!痛快人情捕物帳。
強風吹き荒れる大伝馬町で、火の手が上がった。青柳剣一郎たち風烈廻りの働きで小火に済むが、数日後、今度は通旅篭町で付け火未遂が起きる。しかも、犯人を目撃した男が刺された。当夜の風向きからすると、狙いは牢屋敷の解き放ちか!?死罪で入牢中の五人と関係の深い者を探る剣一郎。やがて、事件の真相が人の心に棲む“善と悪の奥深さ”にあると気付くが…。
旗本・御家人の救済のために借金を棒引きにする棄捐令を出す。それによって困窮する札差を支援するため幕府が金を下すー。貸し下げ金二万両の差配をした結城屋三津五郎に柚木源九郎は不審をいだいていた。上州の侠客・国定忠次との関わりも疑われた。武士の矜持を失った直参を相手に、結城屋が画策した謀とは…。般若同心が正義の十手で、大きな闇に挑む!
直参の谷地友次郎が何者かに殺された。柚木源九郎が調べをすすめると、その裏側に有力札差と棄捐令に関わる大きな闇がー。幕府による二万両の貸し下げがあった。この莫大な金子を、結城屋三津五郎が差配していたという。源九郎は、結城屋と懇意にしている侠客の辰五郎を訪ねるが…。男の器量の真っ向対決!般若同心は真相を探り出せるか!?シリーズ新章開幕。
困窮する彦崎藩は財政再建に迫られていた。藩内では茶と椎茸の栽培に期待をかけるが、野心家の藩主・隆興は幕閣への道を志す。重荷になる多額の賄賂に藩が割れる中、領民からの信頼の篤い江戸家老・大藤主水は苦悩の末、忠義を貫き隆興を支持。一方、反隆興派は藩を守るべく主水の暗殺を企んだ。そこに、風烈与力の青柳剣一郎は密かに主水の警護を依頼され…。
莫大な賄賂の金策に走る彦崎藩江戸家老の大藤主水が、刺客に襲われた。護衛の風烈与力・青柳剣一郎は主水を守り抜くが、賊の手際のよさに疑問を抱く。やがて反隆興派の内通者の存在が判明、諌めることで藩はまとまったかと思えた。だが、藩の特産品支配を狙う者の暗躍が…。武士にとって真の忠義とは。緻密な陰謀の真相究明に、剣一郎が江戸の町を疾駆する!
奢侈禁止令による風俗取締まりで、日本橋にあった芝居小屋は猿若町に移転。だが、依然として取り潰しの噂が囁かれていた。中村座の興行を仕切る新五郎に、御用商人の市郎兵衛がある取引を持ちかけた。千両を出せば、芝居小屋の存続を南町奉行の鳥居耀蔵に働きかけるという。そこには、般若同心・柚木源九郎の宿敵の影が見え隠れしてー。大好評シリーズ第五弾。
深手を負った、七人殺しの下手人・野うさぎの鉄二を匿い、施療をした師・幻宗に疑問を覚えた新吾だったが、幻宗は「医者の務めを果たしたまで」と言い切る。鉄二は順調に快復していったが、ある日、看護をしていた老夫婦が惨殺され、鉄二の姿は消えてしまった!新吾は鉄二を捜して奔走する。書き下ろし青春時代小説、シリーズ第二弾!!
佐渡から江戸へと帰り着いた鉄次と弥八。鉄次は水替人足として酷使されるなか、唯一の支えが許嫁のおきみだった。だが、苦界に沈んだと知らされ、身請金のため押込み一味に。一方、弥八も親友のため、ある企みに加担しようとしていた。弥八はかつての恩人青柳剣一郎を頼るべきか悩むが…。大切な人のため、悪に染まろうとする二人。剣一郎の救いは間に合うのか?
長崎で蘭方医学を学び江戸に戻ってきた宇津木新吾は、師に託された手紙を携え、町医者・村松幻宗の施療院を訪れた。幻宗は、患者から薬代をとらないという。その真摯な姿勢と、見事な施術を目の当たりにした新吾はしだいに幻宗へと傾倒していくが、一方で施療院を支える資金についての疑問も膨らんでいくのだった…。書き下ろし青春時代小説、シリーズ第一弾!!