著者 : 小林多喜二
本書は、「日本プロレタリア傑作選集」の一冊として昭和5(1930)年に刊行された。このシリーズは全13巻で、黒島伝治・徳永直・葉山嘉樹など、名だたるプロレタリア文学の旗手たちの作品を集めている。本書には、表題作「不在地主」と「救援ニュースNO.18.附録」の二篇が収録されている。 「不在地主」 の初出は「中央公論」 昭和4 (1929)年11月号。 昭和2(1927) に北海道で起きた磯野小作争議を題材にしている。 「救援ニュースNO.18.附録」の初出は「戦旗」昭和5(1930)年5月号。労働運動に関わったかどで父親を拘留された少女が、「先生」に向けた書簡という体裁の作品である。 日本プロレタリア傑作選集 (日本評論社創業100年記念復刊/底本:1930年1月20日発行) 不在地主 救援ニュースNo.18附録
これまで高校国語教科書に掲載されたことのある、プロレタリア文学のアンソロジー。教科書に準じた注と図版を付した。理解を深めるプロレタリア文学についての対談も収録。
オホーツクのソ連領海を侵して蟹を捕り、缶詰に加工する蟹工船では、貧困層出身の人々が奴隷のような過酷な労働を強いられている。船には海軍の軍艦が寄り添い、この搾取が「国策」により行われていることを示していた…。「ワーキングプア」の文学として脚光を浴びる、日本プロレタリア文学の金字塔「蟹工船」。小林多喜二虐殺後、遺作として発表された「党生活者」。新たに雨宮処凛による解説も加えた、文字が読みやすい新装版。
大正から昭和初め、働きつつ学ぶ青年多喜二は、文学への熱情、人間を抑圧する社会への怒り、知り初めた恋の苦しみをノートに書きつけ雑誌に投稿した。虐げられる弱き者への優しい眼差しと苦の根源への鋭い問いを秘めたこれら初期作品群こそは、二十九歳で権力に虐殺されたプロレタリア作家の多感な青春の碑である。八十六年ぶりに発掘された最初期の「老いた体操教師」、秀作「瀧子其他」を含む十六篇を精選。
おい地獄さえぐんだでー函館を出港する漁夫の方言に始まる「蟹工船」。小樽署壁に“日本共産党万歳!”と落書きで終わる「三・一五」。小林多喜二のこれら二作品は、地方性と党派性にもかかわらず思想評価をこえ、プロレタリア文学の古典となった。搾取と労働、組織と個人…歴史は未だ答えず。