著者 : 小池水音
あのころの僕はあのころの僕は
母を病で失った五歳の「僕」は、いくつかの親戚の家を行き来しながら幼稚園に通っていた。大人たちが差し出す優しさをからだいっぱいに詰め込み、抱えきれずにいた日々。そんなとき目の前に現れたのは、イギリスからやってきた転入生のさりかちゃんだった。自分と同じように、他者の関心と親切を抱えきれずにいる彼女と仲良くなった「僕」だったが、大人たち曰くこれが「初恋」というものらしく…。コンビーフのサンドイッチ、ひとりぼっちのハロウィン、ひみつの約束、悲しいバレンタインデー。降り積もった記憶をたどり、いまに続くかつての瞬間に手を伸ばす。第45回野間文芸新人賞候補作となった『息』に続く、注目の若手による最新中編。
息息
「おとなになっても苦しいままだったら、どうする?」喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い姉と弟ー。弟の春彦が若くして死を選んでから十年、姉の環も、父と母も、悔いと悲しみを胸に抱きながら、たがいに語ることなく生きてきた。環の十五年ぶりの喘息発作をきっかけに、喪失を抱えたこの家族のあいだをあたらしい風が流れはじめる…。
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