著者 : 小池滋
嵐が過ぎ去ったクリスマスの朝、大聖堂の町から忽然と姿を消したエドウィン・ドルード。河の堰で彼の懐中時計が発見され、以前よりエドウィンと反目していた青年ネヴィルに殺人の嫌疑がかかるが、事件の背後にはある人物の暗い影が…。英国の文豪ディケンズが初めて本格的に探偵小説に取り組み、その突然の死によって未完となった最後の長篇。原書挿絵を全点収録。残された手掛りからドルード事件の真相を推理する訳者解説を付す。
イギリス風ペーソスとユーモアでくりひろげられるクリスマスのお話二篇。原書の持つ雰囲気を生かした落語調の翻訳で、また違った味が楽しめる「クリスマス・キャロル」。クリスマス本の二冊目として熱狂的に迎えられた「鐘の音」。風刺雑誌『パンチ』の画家として有名なジョン・リーチらの幻想性に満ちた挿絵と現実が奇妙に溶けこんだ不思議なファンタジー。
リトル・ドリットの父親の急死により、ようやく訪れた幸わせも長くは続かなかった。そのうえ愛するアーサー・クレナムは破産をし、獄中生活をおくることになる。クレナム家敷の崩壊、獄中での病気…。絶望し自暴自棄になるアーサーと、献身的な愛をささげるリトル・ドリットの行末は?全4巻完結。
莫大な財産と自由を手に入れたウィリアム・ドリットとその家族は、何人かの女中と従者をつれて豪華な旅へと出発する。監獄暮らしを思い出させ、暗い影をおびたロンドンから明るい陽光ふりそそぐイタリアへ。宮殿への宿泊、上流社交界での晩饗会…。環境の変化に適応出来ないリトル・ドリットは、とまどいや不安わアーサー・クレナムへの手紙で切々と訴える。ドリット一家に訪れる幸せとは?
リトル・ドリットの父ウィリアムは、破産して長いこと債務者監獄暮らしをしていた。家族と共に。リトル・ドリットに心ひかれるアーサーは、何とか助け出せないものかと奔走する。その結果、ウィリアムは莫大な遺産を得、25年にわたる監獄生活から解放されることになった。19世紀イギリス社会における影の部分を描きだす問題作。
中国帰りの資産家アーサーは、母親の家でお針子として働いている、か細い身体つきでひどく怯えた顔をした若き女性リトル・ドリットに会った。興味を持ったアーサーは、ある夜尾行し、マーシャルシー監獄へ入って行く彼女の姿を見た…。19世紀、華やかなロンドンの裏にひそむ悲惨な生活、社会の矛盾や不正のしわ寄せを背負いこまされる貧しい者、弱い者たちの姿を鋭い観察眼で描いた『リトル・ドリット』を全4冊で刊行する。
18××年初、イギリスのとある町の救貧院で、一人の男の子が生まれ落ちた。母親は、子どもを産むとすぐ、ぼろ布団の中で息をひきとった。孤児オリヴァーはその後、葬儀屋サワベリーなどのもとを転々、残酷な仕打ちに会う。ついにロンドンに逃れたオリヴァーを待ちうけていたのは狂暴な盗賊団だった…。若いディケンズが、19世紀イギリス社会の暗部を痛烈に暴露、諷刺した長編小説。
主人公の孤児オリヴァーの運命の星は、いっそう酷薄に、光を失ったままである。盗賊団の仲間ビル・サイクスに従って強盗に出かけた夜、オリヴァーは瀕死の重傷を負って仲間に置き捨てられる。かろうじて篤志なメイリー夫人に救われたオリヴァーの運命はしかし二転三転して…。『ピクウィック・クラブ』でユーモア作家として成功したディケンズが、ジャーナリト的立場をとって挑戦した初の社会小説。
たがいに反目し合っていた二人の青年、エドウィン・ドルードとネヴィル・ランドレスは、嵐のクリスマス・イヴにエドウィンの叔父ジャスパーの家で仲直りの食事をしていた。その翌朝、甥の姿が見えない、とジャスパーが騒ぎだす。捜索の結果、河の堰でエドウィンの懐中時計が見つかった。彼の身に何が起こったのか?最後まで一緒だったネヴィルに嫌疑がかけられるが、決め手となる証拠はない…。さて、事件の真相は?19世紀の文豪ディケンズが、本格的な推理小説に挑み、志半ばで絶筆となった未完の書。