著者 : 小泉まや
ギリシアの海運王、サキスの有能な秘書ブリアナ。ロボットのように黙々とボスの命令に従いながら、じつは彼への恋心を胸の奥に秘めている。だがサキスに熱いまなざしを向けられるたび、彼女はおびえた。いくら興味を持たれたからといって、恋に目がくらんではだめ。愛なんてなくても生きていけるはずよ。名前を変えるほどの事件が起きた過去を彼に知られたら、私は生きていけない。ああ、もっと早く彼に出会えていたら。だから今は秘書としてそばにいられればそれだけでいい…。
派遣社員のダーシーはある日、書類の配達を頼まれてホテルへ向かった。だが指定された部屋にいたのは不穏な表情をした屈強な男2人で、中に引きずりこまれた彼女は、恐怖のあまり気を失ってしまう。次に目覚めたとき、ダーシーはネーヴという名の見知らぬ大富豪が住む豪邸に連れてこられていた。先ほどの男たちは彼の用心棒だった。ダーシーをなぜか脅迫犯と誤解したネーヴは彼女を囚われの身にしたのだ。一瞬だけ情熱的なキスをされたとき以外、冷徹な態度の彼に恐怖を覚え、彼女は隙をついてどうにかこうにか自宅へ逃げ帰った。その翌週、新しい派遣先で念願の秘書として働くことが決まり、喜んだのもつかの間、ダーシーは社長の顔を見て驚愕するーネーヴ!
振り向いたエミーは、ふくらみかけた自分のおなかに手をあてた。一夜をともにしたマルコが、ニューヨークの大富豪だったなんて!マルコは彼女の職場に突然現れ、自分に子供ができたと知ると、家族が欲しいと言って結婚を申しこんできた。私がイギリスから引っ越さなければならなくても、彼は贅沢な生活をちらつかせれば問題ないと思っている。それでもマルコの父が病気と聞くと、エミーは婚約を受け入れた。この再会は運命で、彼がくれた婚約指輪を愛の証と信じられたら。だがマルコは男児の誕生を願い、彼女を利用する気でいて…。
まさか、船が動いている!ヴィヴェカは窓の外を見て慌てた。ここは豪華なクルーザーの船内、持ち主はミコラス・ペトライデス。今日、妹が政略結婚するはずだったギリシアの大富豪だ。ヴィヴェカは不憫な妹のために、花嫁になりすまして祭壇に立ち、妹が恋人と逃げおおせるまでの時間稼ぎをする予定だった。ところがすぐにミコラスに見破られ、この船に連れてこられた。密室で男性と二人きりになり、無垢なヴィヴェカの体がこわばる。それを知ってか知らずか、ミコラスは傲慢な口調で宣言した。「代わりに僕と結婚してもらう。寝室に移ろう」
長年、シレナは実業家ラウルの優秀な秘書だった。そして数カ月前、夢がかなって彼の恋人になれたと思った。だがその翌日、ラウルはシレナを警察に突き出したー彼の口座からお金を盗んだと、一方的に決めつけて。優しかった彼が、法廷では別人のように憎しみを露わにした。裁判が終わり、安堵したシレナはその場で気を失ってしまう。意外にも、駆けよって抱きとめたのはラウルだった。朦朧とする意識のなかで、シレナは無言の叫びをあげていた。だめよ、彼に妊娠していると知られては。絶対にだめ…!