著者 : 小泉喜美子
ある冬の日曜日、推理作家・泉川ミカ江女史の許にかかって来た殺害予告の脅迫電話。誰の仕業か判らず仕事も手につかない。だが、恐怖と憤りを酒に紛らすうちに職業的好奇心が芽生え、女史は脅迫者についての考察を始めた…。純粋推理を実践した表題作のほか、古き良きパリの街を舞台にした中編など、ミステリーの粋を凝らした傑作全八編、すべてが文庫初収録!
大手出版社に勤務する志賀子は、幾人もの一流作家を抱える敏腕編集者として忙しい日々を送っていた。そんな折、ミステリー作家志望の美しい青年に出会い、少女のように胸をときめかせ、彼との将来を夢見るようになった。だが、青年が妻帯者だと知ったとたん、殺意が…。著者の体験に基づく表題作などミステリー本来の洗練された味わいが光る珠玉の八編を収録!
粋で艶やかな新橋芸者の“まり勇”は、ハードボイルドなどの海外ミステリーが大好き。少女時代はメイヴィス・セドリッツやハニー・ウエストのような女探偵を夢見ていた。忙しいお座敷の合間に起きるミステリアスな事件に胸を躍らせ、恋しい刑事と謎を推理。聖ルカ病院、魚市場、歌舞伎座に本願寺ーなんでも一級品の揃う築地を舞台にした都会派連作ミステリー!
推理作家が親友に古今東西の「殺し方」を話したその晩、人が殺された。驚きの方法で…(「冷たいのがお好き」)。昔の恋人を消す計画を練っていた男が落ちた陥穽(「殺さずにはいられない」)。幻のショートショートを含む傑作短篇集第二弾。著者選「ミステリーひねくれベスト10」も収録する。
先生、ごめんなさい…。痛みと後悔に苦しむ少女が知らぬ“真実”(「痛み」)。裕福な人妻はなぜホテルで突然命を絶ったのか?(「かたみ」)。天才舞踊家をずっと見つめてきた女の心裏は(「妬み」)。息詰まる駆け引き、鮮やかなどんでん返しー人生の裏も表も知る大人のためのミステリ。入手困難・幻の短篇集の増補復刊。
青山墓地で発生した幼女惨殺事件。その被告人は、独房で奇妙な独白を始めた。事件は40年前の東京にさかのぼる。戦前の公使館で、金髪碧眼の兄妹と交遊した非日常の想い出。戦時下の青年期、浮かび上がる魔性と狂気。そして明らかになる、長い回想と幼女惨殺事件の接点。ミステリーとホラーが巧みに絡み合い、世界は一挙に姿を変える。1982年発表。復刊希望が相次いだ、幻の名作がついに復刊。
あっと驚くどんでん返し! 財閥の放蕩息子に見初められ結婚した蓮子は、慣れない生活に息苦しさを感じていた。そんな折、財閥当主が殺される。殺人罪の裁判の行方は? 驚愕のどんでん返し、ミステリの金字塔!(解説/道尾秀介)
ズニ族の少年と、その友人であるナヴァホ族の少年が行方不明になった。ナヴァホ族警察のリープホーン警部補は、ズニ族警察と共同で二人の捜索を始めた。が、ズニ族の少年は遺体で発見され、さらに新たな殺人事件が、やがてFBI、麻薬取締官も介入し、事態は複雑な様相を呈してくるが…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した傑作。
大統領候補のブレーンも務める著名な社会科学者が謎の転落死を遂げた。直前に彼と口論していた女性記者のアーストリッドに殺人の容疑がかかるが、彼女は事故を主張するばかりか、逆に驚くべき告発をする。死んだ社会科学者は、悪魔的な第2の顔を持っていたというのだ。アーストリッドの無実を信じ、かつての恋人であるデイモン刑事は捜査を開始するが…。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞の緊迫のサスペンス。
クラスでふたりは際立った。英語をきれいに発音できる少女と、訳出が上手な少女。ふりたの奇妙な友情は、大人になり、互いの社会的条件がちがってきても、表向き続いていたが…。洗練されたセンスと鋭い感性に裏うちされ、優美と毒とを巧みに織りまぜる秀作12編。惜しまれつつ急逝した著者の“忘れがたみ”というべき作品集である。