著者 : 小野田和子
はるか未来、容姿も社会体制も変貌しきった人類は、古い歴史をもつ異星種族セネクシと果てしない戦いを続けていた。原始星群をめぐる巡航艦“混淆”で、敵の抹殺だけを教えられて育った少女プルーフラックスはきたる初陣に思いを馳せていたが…。圧倒的なスケールと美しいヴィジョンで人類と異星人との戦いを描いたネビュラ賞受賞作「鏖戦」。近未来、200万の人口を擁する月コロニー。そこにある天然の洞穴を利用した科学施設“氷穴”では、絶対零度達成の実験が進行中だった。ここに、100年以上ものあいだ冷凍保存されていた人間の頭部410個を地球から持ち込み、一大データベース化しようとする新たなプロジェクトが動き出す。月世界での壮絶かつ衝撃的な実験を描いた星雲賞受賞作「凍月」。2022年11月に逝去したベアの真骨頂たる、ハードSFの代表中篇2篇を収録した一冊。
未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく宇宙へ飛び立った男は、ただ一人人類を救うミッションに挑む! 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント
ジャズがトロンドから依頼された仕事は、企業買収が絡んだ破壊工作だった。普段の運び屋仕事と違う内容に戸惑うジャズ。だが、彼女は破格の報酬に目がくらみ、仕事を引き受ける。溶接工を父にもち、自らも船外活動の心得があるジャズは、友人の凄腕科学者スヴォボダの助けを借り、ドーム外での死と隣り合わせの作業計画を練っていく。地球の6分の1の重力下での不可能ミッションを描く、傑作サスペンスSF。
アメリカ南部ジョージアの小さな町に住むスティーヴィ・クライは数年前夫を亡くし二人の子どもを養うためフリーランスライターとして生計をたてていた。ある日愛用する電動タイプライターが故障し、修理から戻ってくると、なんとひとりでに文章を打ち始めた!妄想か、現実か?その文章はスティーヴィの不安と悪夢、欲望と恐怖を活写したものだった。それを読むうちに彼女はーそして読者もー現実と虚構の区別がつかなくなり…ネビュラ賞作家ビジョップによる異形のモダン・ホラーにして怒涛のメタ・ホラー・エンターテインメント!巻末に“30年後の作者あとがき”を収録。(1984年作)
“自分”という意識や自由意志が幻想でしかないことが証明された近未来。神経科学者ライダが十年前に開発に携わった新薬「ヌミナス」-ニューロンを再成長させ、脳を物理的に再編するこの薬は、摂取者にとっての自我と現実を決定的に書き換える。葬ったはずのその薬がなぜか、再び流通しはじめているという…。最先端の知見を駆使して精神と心の謎に迫る、新世代の脳科学SF。
脳のほとんどは潜在意識であり、“自分”という意識は判断を下す主体ではなく脳の活動の結果、つまり幻想でしかない。ヌミナスは脳を再編し、摂取者にとっては現実そのものとしか思えない“神”の幻覚を見せるーだが意識そのものが幻想であるなら、“神”が幻覚だと言うことになんの意味があるだろう?ヌミナスを追うライダは驚愕の真実に到達する。新世代の傑作脳科学SF。
少年は、14歳の誕生日のあと間もなく、農場を出て街をめざす自分を、毎夜夢に見るようになった。だが、彼の行動はある強固な意志によって制御されていた…。現代SFのトップランナー、イーガンによる本邦初訳の表題作。スタージョン記念賞を受賞したマルセクの究極のVRSF「ウェディング・アルバム」ほか、ブリン、マクドナルド、ソウヤー、ストロスら現代SFの中心作家が、変容した人類の姿を描いた全12篇を収録。
人類が火星移民を始めて100年を経た22世紀後半。火星市民はナノテクを初めとする先端技術を適度にとりいれた共同体生活を謳歌していた。だが、火星が独立憲法の制定と政治的統一をめざしていたそのとき、母なる地球は密かな陰謀をめぐらしていた。テクノロジーの袋小路につきあたった地球の目的はただひとつー独立にはやる火星を従属化、搾取すること!未曾有の動乱の嵐は、いままさに赤い惑星をまきこもうとしていた。ネビュラ賞受賞。
火星の命運は若き女性政治家キャシーアに託された。困難な地球との交渉にあたる彼女は、かつての恋人だった物理学者のチャールズから、超兵器としても応用可能な“ベル連続体理論”の存在を知らされる。だがそれは両刃の剣だった。その理論の潜在的な破壊力に気づいた地球によって、火星への全面攻撃が開始されたのだ…近未来火星のヴィヴィッドな描写と破天荒なプロットでネビュラ賞に輝いた、ベア畢生の超大作登場!ネビュラ賞受賞。
メルポメネーは13歳。地球ー火星間を巡る小惑星改造船で暮らしている。文章を書く才能は誰もが認めるところだが、おかげで担任の先生に大変な仕事を頼まれてしまった。地球の人たちにここの生活を紹介する本を書けというのだ。さあどうしよう。とまどい悩みながらも彼女は書きはじめた。ほんの一年前に体験した小さな「戦争」のことを…宇宙育ちの少女の心の成長をみずみずしい筆致で描く、さわやかな青春冒険SF。
人類は、木星軌道上に設置したワームホールをタイムマシンに転換すべく奮闘していた。そんな時、そのワームホールから未来人の船が現れた。乗っていたのは〈ウィグナーの友人〉と名乗る人々で千五百年未来の地球を支配する異星種属クワックスを滅ぼすためにやって来たのだという。だが、その裏には途方もない意図が。ハードSFの新たな旗手が、千五百年の時に隔てられた二つの太陽系の抗争を壮大に描いた傑作長篇。
銀河を越えて送られてきた遺伝子情報をもとに,十肢生物ナーによって作られた人類。だが、人類をあくまで庇護しようと考えるナーと、自らの独自性を追求する人類とのあいだには、深刻な対立が生じてしまった。人類がその解決策として選んだのは、ナーに別れを告げることだった。宇宙を航行する巨大なスペース・ツリー〈イグドラシル〉に乗りこみ、自分たちの故郷、3700万光年の彼方にある地球めざして旅立つのだ…。
遥かな地球をめざす壮大な銀河間航宙の途上で人類は、二つのブラックホールが一つに融合しようとする、恐ろしい光景に遭遇した。しかもそこから発生する膨大なエネルギー流が、前方に迫ってきている。スペース・ツリー《イグドラシル》も瞬時に呑みこまれてしまうだろう。人類が助かるには、ブラックホールとブラックホールのあいだのわずかな〓@68D2間を、決死の覚悟で通りぬけるしか方法はない…。好評『創世伝説』の続篇。
満天の星空のもと、知的生命探査のため、遥かな銀河を仰いでいた無数のパラボラアンテナが、突然ひとつの信号を受信した。ついに異星知的生命と接触したのだ。3700万光年の彼方から人類が発信したメッセージを受け取ったのは全身黄色で、上肢下肢それぞれ5本ずつを有する十肢生物ナーだった。かれらは、メッセージにあった遺伝子情報をもとに、人間をまるごと創りあげるきわめて困難なプロジェクトに着手する…。