著者 : 尾島恵子
ポーラ・ホープは家族を亡くし、22歳のとき故郷のフロリダを離れ、たった一人で憧れのビバリーヒルズにやって来た。男に裏切られ、辛いことばかりだった今までの人生。金もなく、将来のあてもなかったが、いつか素敵な男性と出会い、愛し合い、そして仕事でも成功して有名人になりたい、という夢を抱いていた…。ぼんやりと街角に立ちつくしていた彼女は、偶然アメリカでトップのインテリアデザイナーと知り合い、ひと目で隠れていた才能を見出され、彼の下で働くことになった。人生がいきなり、大きく動き出したポーラの前に、“運命の男”が現れた。映画俳優のロバート・ハートフォードだ。思いがけない出会いをきっかけに、二人は恋におちていく。欲望と虚飾が渦まくこの街で、ポーラはデザイナーとして成長していき、そして二人の愛は…。
29歳のマキシ・アンバービルはさっそうとコンコルドのタラップを降りた。これからマンハッタンのアンバービル出版の緊急役員会に出席するのだ。しかし、意気揚々と会議室にのりこんだマキシを待ちうけていたのは、思いもかけない事件だった。こともあろうに叔父のカッターが母のリリーを言いくるめて結婚し、社の実権を手中にしようとしていたのだ。あまつさえ、いまは亡き父のザッカリーが心血を注ぎ、理想に燃えて創刊した雑誌四誌を、業績不振を口実に廃刊にするというではないか。そうやすやすとあの男の思いどおりにさせはしない。なんとかして取り戻してみせる。何年、たとえ何十年かかろうとも、私の手に取り戻してみせてやる。マキシはやさしかった父のおもかげに誓いながら、怒りに身をふるわせ、足音も荒く席を蹴ったのだった…。
決然と役員会の席をたち、みずから強引に新雑誌の編集長におさまったマキシは、娘のアンジェリカと前の夫ロッコに助けられながら、生来のきかん気とバイタリティにまかせて雑誌づくりをおしすすめていった。そして創刊の日、彼女のつくった女性の味方「B&B」は、またたくまに売り切れてしまった。カッターの鼻をあかして、マキシは有頂天だったが、カッターもだまってはいなかった。経費の膨張を理由に、社の売却を画策しはじめたのである。彼は、ともかくザッカリーが憎かったのだ。その名前を地上から消すためならなんでもするつもりだった。そしていま、憎しみは彼の愛娘にむけられている。カッターVSマキシの対決。波瀾にみちた彼女の人生の幕があいた…。成功の甘い香り、挫折と苦悩。男と女の愛の苦しみ、憎悪と嫉妬。華やかなマンハッタンの街を背景にマキシとリリーがくりひろげる一大叙事詩。