著者 : 山口守
日本と台湾の歴史を言語接触から読み解くアンソロジー 日本の製糖会社の進出により父を亡くし、貧しい家族を養うため台湾から日本へ渡って来た楊青年。しかし、やっとのことで見つけた新聞配達の仕事はあまりにも不当な条件だった。台湾での階級対立を、帝国日本と植民地台湾の権力勾配に重ねながら、労働者の連帯を描く「新聞配達夫」。内地人風の生活を夢見ながら、立身出世の勉強に励む陳有三は、台湾の役所に勤めている。内地人に対しては家畜のように卑屈な台湾人の上司、製糖会社勤務の友人、結納金と引き換えに売られていく想い人……。表題作「パパイヤのある街」ほか、日本統治期の台湾人作家による七篇の日本語文学作品を収録。 多層的な言語空間をもつ台湾で生まれた作家たちは日本の言語政策の変遷にいかに翻弄され、そのアイデンティティを形成し、自己表現へと辿り着いたのか。言語という枠組みからその過程に光を当てるアンソロジー。 自然にかえれ! 呉濁流 新聞配達夫 楊逵 夜明け前の恋物語 翁鬧 パパイヤのある街 龍瑛宗 牛車 呂赫若 志願兵 周金波 花咲く季節 楊千鶴 編者解説 山口守 台湾文学関係年表
革命のたびに巨大化する銅像を崇拝する都市、精神状態の沈殿を再構成することで甦る絶世の美女、人間とロボットが逆転した世界、時間を貯める永遠時計…。ノンセンスな奇想と風刺と感傷が渾然一体となった台湾SF小説集。
1968年12月21日、毛沢東は「知識青年は農村へ行って貧農・下層中農の再教育を受ける必要がある」との指示を発した。いわゆる“下放(挿隊)”である。69年1月、本書の作者史鉄生は陜西省の農村に向かった。彼、17歳の冬であった。その村で見たものは…。-文革期の青春の“光と影”と今を生きる自分の思考と感性を過去への巡礼として総括した記念碑的作品の邦訳ついになる。
ヨーロッパを舞台にした小説から、寓意小説、抗日戦争時の小説まで。他の近代中国の作家と作風を異にする巴金の純粋なヒューマニズムに裏付けられた作品を収録する。近代中国文学の再発見をうながす恰好の短篇集。
半世紀前の北京。中国に生まれ育った西洋人である著者が、〈家〉のなかに視点を据え、一中国人女性の生き様を描く。彼女の冷静で愛情に満ちた視線は、急激な時流の底に息づく中国の伝統と心性の連続性をかいま見させてくれる。