著者 : 山本泉
「町の向こう側の子か。御用聞き用の出入り口を使うべきだ」仕立ての仕事をする母の使いでメリック邸を訪れたマーゴの胸に、密かに憧れていたジョーダンの言葉が突き刺さった。裕福な家に生まれた彼と、そうでない自分ーそれを痛烈に意識させられ、17歳のマーゴの心は深く傷ついた。注文の品を届けに来ただけなのに、こんなふうに言われるなんて…。彼女の淡い恋はその日、無残に砕け散ったのだった。ところが7年後、看護師となったマーゴに皮肉な運命が降りかかる。以前よりはるかに魅力を増したジョーダン・メリックが、彼女の働く病院に、上級外科医としてやってきたのだ!
富める者と貧しき者ー線路を境に、マーゴの住む町は二分されていた。貧しい地区に生まれたマーゴは少女のころから裕福な一族出身のジョーダン・メリックに心ひそかに憧れていた。けれども17歳のとき、その淡い恋心は無残にも打ち砕かれた。仕立ての仕事をする母の使いでメリック邸に注文の品を届けに行くと、応対に出たジョーダンの口から、ひどく侮辱的な言葉が放たれたのだ。「町の向こう側の子か。御用聞き用の出入口を使うべきだ」以来、マーゴは町の富裕層を嫌悪し、かかわり合いを避けてきた。ところがそれから7年後、彼女が看護師として働く病院に、上級外科医としてジョーダンが新たに着任することになるとは!
17歳の牧師の娘ヴィクトリアは、ある日、村で美しい青年に微笑みかけられ、ひと目で恋に落ちた。彼の名はロバート。領主の息子で爵位を持つ彼は信じられないことにヴィクトリアに愛を囁き、結婚を約束するーだがふたりの恋は身分違い。駆け落ちの夜に彼女は父親に閉じこめられ、翌日、真実を知らされた。ロバートは彼女と結婚する気など毛頭なく、ロンドンへ発ったと。打ちのめされたヴィクトリアは家を出て家庭教師となり、辛いながらも平穏な生活を手に入れた。7年後ロバートが屋敷の客として現れ、彼女を睨みつけるまでは。