著者 : 山田正紀
すべては人がやったことなのだ。より人らしく作り替えちまったって、いいじゃないか。饒舌に過去語りをするが、本当かどうか判然としない勝海舟。旅順特務機関の作戦における不在証明を偽装した満鉄の測量技師。戦時中、呉で「張込み」と「舞姫」が混ざったような案件にかかわった防諜専門員。明智光秀謀反の夜の、最後の食事。そして、武田残党の若者たちが請け負った、ご神木の大輸送計画ーあったかなかったか知らねえが、あった方が面白え。軽妙にして痛快、異色の歴史小説集!
ぼくは職業がら人を探すのが得意だ。人と話をするのも嫌いじゃない。けれども名前も知れぬ「彼女」を探し出すのは、いささか難航せざるをえなかったーー不特定多数の人に届けられる彼女からの手紙には、いつも「おまえの大切な人がもうすぐ死ぬ」と不吉な予告が書かれていたのだった。破格の想像力が描き出す、これぞ山田正紀流マジック!
表の顔は同心、その裏に隠された素顔は川衆頭領。川瀬若菜率いる川衆の反撃が始まる。山田正紀版ミッション・インポッシブル!
南町奉行所の最底辺、牢屋見廻り同心・川瀬若菜に吉原随一の花魁から相談が舞い込む。英国人の恋人からプレゼントされた大切な指輪が盗まれたという。江戸の闇を二分する泥棒寄合・川衆の棟梁という素顔を持つ若菜は、盗難事件の背後に、天敵陸衆の蠢きを察知する。天保の江戸を舞台に華麗な殺し合いが今始まる!
1994年、北朝鮮・寧辺の核燃料保有施設を訪れた、国際原子力機関の核特別査察官である蒔野亮子は、使用済み核燃料の沈むプールの中で謎めいた生物が泳ぐ様を目撃するーーそれは戦争によって文明という負のエントロピーを正のエントロピーに“精算”する際に誕生する四次元生命体〈戦争獣〉。生態系ならぬ死態系に潜む死命(シノチ)の最優勢種である彼等は、永遠の闘争を生きる種族「異人(ホカヒビト)」のみが扱える。奔放な想像力が生み出す本格SFの新たな傑作!
16歳のぼくを置いて母は逝った。宮沢賢治研究に生涯を捧げた母は、否定されている『銀河鉄道の夜』の第四次改稿版の存在を主張していた。花巻へ散骨に訪れたぼくは、気がつくと、昭和8年、賢治が亡くなる2日前にいた。辿り着いた賢治の家でぼくを迎えたのは、早逝したはずの妹トシと、彼女の娘「さそり」だった。永遠に改稿され続ける小説、花巻を闊歩する賢治作品の登場人物たちーー『銀河鉄道の夜』をモチーフに時間と物語の枠を超える、傑作長編SF!
「旅」「旅行」をキーワードに精選した短掌編16本を収録するアンソロジー。旅への期待感、まだ見ぬ土地への不安、遠くに来たことへの感慨……。さまざまな感覚が味わえる贅沢な一冊。(解説/西上心太)
16歳の僕を置いて、母は逝ったーー宮沢賢治を生涯にわたって研究した彼女の希望で、花巻まで散骨に訪れたが、事故をきっかけに自分が80年前、宮沢賢治の亡くなる前の日にタイムスリップしていたことに気がつく。そこで巻き込まれたのは、あの〈カムパネルラ〉が殺されたという想像を絶する事態だった。時間と物語の枠を超えて展開する長編SF。
「見事に咲いた花ならば、心おきなく散り候らえーー」最愛の妹・響と決別した八郎。伊賀と甲賀を率いる若き棟梁達は、もう二度と相見えないはずだった。しかし、一度は退いたはずの異形の忍者集団・成尋衆が徳川二代将軍の死をきっかけに再び現世に現れた。動く城「叢雲」の五層に待ち受ける化物たちを斃し、この世に平穏を取り戻すため、甲賀五宝連と伊賀五花撰は死地へ挑む。 猿の王国 鳳輦車「叢雲」 桜花、集うべし 桜花、咲くべし 桜花、散るべし
山田風太郎『甲賀忍法帖』が『バジリスク』に。そして今、『バジリスク』が新章に突入する! 天下の座を争い歴史の裏側で行われた甲賀vs伊賀の忍法殺戮合戦は双方全滅という血に塗れた結末で幕を閉じた。十年の時が過ぎ、寛永三年、再び甲賀伊賀の精鋭が結集する。甲賀五宝連を束ねる矛眼術を操る少年、甲賀八郎。伊賀五花撰を率いる盾眼術使いの少女、伊賀響。運命の双子である二人は、成尋衆と名乗る、人外の力を操る正体不明の集団との戦いに巻き込まれていく──。 甲賀、散るべし 成尋衆、現る 伊賀、散るべし 伊賀・甲賀連合忍者隊十人
甲虫を守護神に持つ少年戦士・ジローは、従姉妹ランを愛してしまう。禁忌を破ってその想いを遂げるため、ジローは、女呪術師ザルアー、“狂人”チャクラとともに失われた宝石「月」を求めて旅立った。異形の怪物たちの跋扈する地を経て、三人は「空なる螺旋」を目指す。旅路の果てで知る人類の運命と世界の謎とは?SF的想像力の極限を描き切った鬼才の最高傑作が新装版で登場!
昭和二十年東京。八王子の神社の神主を務める明比家に伝わる秘能。それは、衆人環視の状況下で如何にして母親が子殺しの人買いに復讐したかを観客が推理する、世界最古の探偵小説というべきものだった。内容に呼応するように、上演中、演者が何者かに殺される。身近な悲劇と終戦目前の歴史的悲劇に人はどう立ち向かうのか。若き日の“検閲図書館”黙忌一郎が導く驚愕の真相。3・11を越えて著者が贈る破壊と再生を紡ぐ本格伝奇ミステリ。
イラストレーター森山由海(別名フジワラヨウコウ)氏のオリジナル・イラスト二点を渡された三人の小説家が、そのイラストが扉絵・挿絵になるような短篇小説を執筆。森山氏はそれぞれにあらためて三点目のイラストを描き下ろすー。「SF Japan」と「問題小説」の二誌にまたがって、三年間連載。二十四名の人気作家が集結し腕を揮った前代未聞の競作企画が遂に単行本化。まずは第一弾、「奏の1」の開演。
山田正紀の膨大な作品群のなかでも、きわめて重要な意味をもつ「犯罪ゲーム」という概念。本書では、実行不可能と思われる作戦に果敢に挑む男たちの、手に汗握る活躍を描くシリーズ「贋作ゲーム」計四篇に加え、「アマゾン・ゲーム」「マッカーサーを射った男」「伊豆の捕虜」の計三篇を収録。著者が「“ミッション・インポシブル”と“地下室のメロディ”の中間ぐらいをねらった」と述べる、痛快無比なる「泥棒小説」の粋をぜひお楽しみあれ。