著者 : 山田正紀
探偵小説『宿命城殺人事件』の列帖装本と、善知鳥良一の手記とおぼしき折本には、50年の時空を隔てた世界をつなぐ昭和13年の不可解な出来事が綴られていた…。“この世には探偵小説でしか語れない真実というものがあるのも、また真実であるんだぜ”-人間消失、列車消失、三重密室、ダイイング・メッセージ、暗号、見立て殺人、仮面の男…本格探偵小説のあらゆるガジェットを投入した第2回本格ミステリ大賞受賞作。第55回日本推理作家協会賞受賞。
デビューのその瞬間、すでにして日本SFを代表する名作であることを証明した、前作『神狩り』。あれから30年。読者はもう一度、あの衝撃に出会うことができる。お待たせいたしましたー。現代SFエンターテインメントの最先端、書下し1100枚。
あの日おとずれた、長いお別れの後…、かけがえのない存在だったひとりの女が消え去った街に、その広すぎる世界に、彼はいた。ほとんどが機械となった強靭な身体をもてあましながら。生きているーいや、生きていられるとはどういうことなのか?話題のアニメーション映画『イノセンス』へといたる、孤独のなか、ただ懸命に何かを求めた男のもうひとつの物語。
両親を失った少年が復讐のために、日本最大の暴力団の組長を狙撃し逃走したことで、全国的なやくざ戦争が始まった。時を同じくして、新戦略専門家・宗像一佐は、レーダーから消えた、最先端の科学を結集した対潜哨戒機の調査を命じられ、事件の背後に、元同僚のゲーム理論家の影を見ていた。暴力団から逃げる少年と元同僚を追う男が交錯するところに見たものとは果たして…長篇本格アクションの金字塔。
生きている食糧“視肉”、猿を思わせる怪物“猩猩”、空を飛ぶ魚、二メートルを超える大グモ…。悪夢のような動植物がはびこる世界で、守護神が甲虫である戦士ジローは、恋する女、ランへの思いをとげるために、女呪術師ザルアー、“狂人”チャクラとともに「月」を求めて旅立った。「月」とは何かを知らない三人は「空なる螺旋」を探せと教えられるのだが…。
超常能力ゆえに、自らに滅びの運命を課す独覚一族。その一人である結城弦は、長老から、人類を第三次世界大戦の危機に陥れようとする、正体不明の独覚の存在を知らされる。ところが、一族の掟に従い、悪しき独覚を除こうとする結城たちの前に姿を現したのは、ブッダ入滅後五十六億七千万年を経て現世に出現し衆生を救うといわれる弥勒だったのだ…。“神”をテーマに描く傑作SF。
「犬男が『女を襲え』といったんだ」-婦女暴行殺人で起訴された男は、法廷で主張した。責任能力の有無が争点になるとの大方の予想を裏切り、弁護士が主張したのは、男の無罪だった。裏付けるがごとく、全く同じ手口の第二の犯罪が起きる。「長靴」と「奇妙な犬神伝説」。異質な二つの要素が事件の鍵なのか。
若き天才情報工学者、島津圭助は、神戸市で調査中の遺跡、花崗岩石室内壁に、ある『文字』を見せられる。十三重に入り組んだ関係代名詞と、二つの論理記号のみの文字。論理では解くことのできないその世界の言葉を執拗に追うある組織は、島津の卓越した頭脳に、この文字を通じて『神』の実在を証明することを強要する。-語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない。ヴィトゲンシュタインの哲学に反く行いに幕を開ける、SF小説の金字塔。
語れよ、あまたの世界の物語を。19世紀の詩人バイロンの娘にして、天才的な数学の才能を持つエイダ。彼女が世界初のプログラマーとして開発協力した階差機械は、幾多の世界を改変していく…。晩年の杉田玄白の許を訪れた間宮林蔵が語ったエトロフで出会った怪人とは誰なのか。ライヘンバッハの滝の上からモリアティ教授に落とされたシャーロック・ホームズに、殺人の冤罪を晴らして欲しいと依頼したフランケンシュタインの怪物の真意は。ロンドンの夜の路上で、メアリ・シェリーがチャールズ・ディケンズにひそやかに頼み込んだ重大事とは。…虚実ないまぜの人物たちが綾なす並行世界の物語。
偏屈で漁師たちから恨まれている網元が、突堤の先端で射殺された。犯人は、どんなトリックで被害者を前から狙撃したのか。書下し表題作「見えない風景」ほか全5篇収録。放浪探偵・呪師霊太郎、映画探偵・相司卓間、そして謎の路上探偵…山田ミステリの名探偵が総登場でくりひろげる華麗な謎と論理の競演。著者初の本格ミステリ短篇集。
どうしたんだ。能登呂はどうしたんだ。あ号作戦はどうなったんだ。榧や響はどうして救援に来ないのだ。超高速駆逐艦波風の砲術長兼副長の水島吾郎は焦っていた。米第七艦隊の激しい集中攻撃にさらされ、戦況はほとんど絶望的といってもいい。あ号作戦の目的は、敵の主力艦隊をおびき寄せ、影の艦隊の主力をもってして、一気にこれを殲滅することにあったが、これはあまりに危険な作戦だったのか?このままでは轟沈させられる…。波風、危機一髪。世界最強の米第七艦隊を相手に打つ手はあるのか?
極度に発達した“メディア”が支配し、現実と疑似現実が錯綜する近未来都市・東京では、麻薬テクに溺れ、罪悪感をなくした若者たちが犯罪を繰り返していた…。電脳少女・ユイは、超人的パワーとアイドル並みのルックスで、麻薬テク組織の壊滅へと乗り出すが、彼女の行手には次々と強敵が出現して…。鬼才が贈る近未来アクション長編。
白昼のテニス・クラブで、女性の焼死事件が発生。死者として18年前に忽然と姿を消した女子大生が浮上する。当時の彼女に一体何が起ったのか、無惨な火だるま事件とのつながりは?哀調漂う雪の瓢湖に舞うブラックスワンをキーに展開する青春時代の謎を詩情豊かに追う、著者初の本格推理長編。
おれ、怪盗七面鳥。聞いたことがないって?そりゃまだ怪人二十面相ほど有名じゃないが約束しよう、そのうち必ず有名になってみせる。パトロンがとんでもない男でとんでもない盗みの相談ばっかり持って来る。やれ某国お妃のファッション・プランを盗めとか、香港の百万ドルの夜景を盗めとか…。儲けになるなら何でも盗って見せるぜ、これホント。
小島が犯した不可解な殺人事件は、刑事を辞めた今もくすぶり続ける。最初は被害者の未亡人に興味を覚えたことから始まった。しかし事件の背景が少し見えるようになるや愕然となった、関係者はみなおれにそっくりなのだ。ということはおれも人を殺すかもしれないし、殺される可能性もあるー鏡の迷路にも似て、次々と増殖する不可解な影の恐怖。
“ブラックスワンは死んだ”著者初の本格長編推理!白昼テニス・コートでの美女焼死事件。その謎は、18年前の女子大学生失踪につながる。悲愴に奏でられる失われた青春への挽歌…。推理特別書下ろし。