著者 : 山野紗織
幼い頃に両親を亡くし、車の整備士の伯父に育てられたイジー。その伯父も亡き今、天涯孤独の彼女に遺されたたった一つの母の形見は家族に伝わるという古い木箱だが、鍵がないため中身を知らない。ある日、イジーの職場に黒塗りのリムジンが横づけされた。側近を従えて降りてきたのは、ブルーグリーンの瞳の端整な若い男性。「イザベル・ポーサードだね。僕はベルノニアの皇太子ニコラだ」親しい人しか知らない彼女の本名を口にした彼は、驚きの告白をした。「君が持ってる箱は、君が赤ん坊のときに僕が贈ったものだ。王子が結婚するとき、妻に“花嫁の箱”を贈る。僕は君の夫だ」口をぽかんと開けたイジーをまっすぐに見据え、ニコラは鍵を差し出した。
幼くして両親を失った天涯孤独のナタリーにとって、隣人で、大牧場の所有者、キレイン家の人々は家族も同然だ。なかでもマックは、ある日を境にかけがえのない存在になった。友人を亡くし、涙にくれる17歳のナタリーの肩を抱き、甘い口づけでなぐさめてくれたあの夜から…。愚かにも彼に純潔を捧げる日を心待ちにしていたのに。あるとき、マックの妹の恋人を奪ったと誤解され、それを信じた彼の、冷たい言葉にナタリーの心は砕け散った。「二度とこの家に来るな」-彼女は誰にも告げず故郷を去った。
嵐の夜、シャイアンは海で溺れかけた男性を助けた。野性的な魅力をもつ彼の虜になり、純潔を捧げたあと、しかし彼の正体を知って愕然とする。カッター・ロードー名家の御曹司の彼はシャイアンを、弟をたぶらかす悪女と思い込み、排除するために近づいたのだった。私はカッターに騙されたのだ…。シャイアンは絶望し、カッターの弟と形だけの結婚をする。7年後、夫が亡くなり、カッターを頼らざるを得ない状況に追い込まれた。息子を誘拐されたのだー7年前に身ごもった、カッターの子を。