著者 : 岡本かの子
12月のある日、加奈江は同僚の男から突然平手打ちをされる。しかも男はそのまま退職してしまった。加奈江は悔しさのあまりその男を探して銀座を歩き回るが…(「越年」)。恋愛にまつわる傑作短編を収録!
2019年、岡本太郎の母でもある岡本かの子、 生誕130年、没後80年! 華麗な豪奢さと 豊饒で積極的な愛を湛えた名作の数々! 妖艶耽美な作風で知られる岡本かの子は、 戦争の影が忍び寄る昭和十年前後の文壇にあって 異端の存在だった。 そもそも女性作家の少なく、女性が男に伍して知的職業を 成すことに偏見を持つ人も少なくない時代だった。 ややもすれば女性作家には好奇の目が注がれ、 兎角スキャンダルの種にされた。 そんな風潮のなか、 岡本かの子は堂々たるナルシストぶりを発揮し、 嫣然たる女王の如く振る舞い、 噂好きも辟易しかねないほど自儘に振る舞った。 とはいえその自儘さは、多くの苦痛と背中あわせだったし、 自儘も苦悩も共に飲み込んで作品に昇華する強さを、 彼女は持っていたのである。 現代仮名遣いによって甦る、岡本かの子 珠玉の作品集! 【収録作品】 豆腐買い 象牙の床 病房にたわむ死 愛よ愛 小町の芍薬 兄弟 花は勁し 高原の太陽 過去世 呼ばれし乙女 娘 家霊 蝙蝠 真夏の幻覚 越年 窓 美少年 星 解説 豪奢なる気骨、溌溂たる耽美 長山靖生
波乱万丈な“女の生涯”を耽美に描いた巨編 素封家ながらも実は貧民窟に出自を持つ男と、その妾の間に生まれ落ちた美しい娘・蝶子。 第一部では蝶子が女体育教師・安宅と園芸手・葛岡という男との三角関係に巻き込まれる展開を中心に、そこから逃れる目的で選んだ裕福な青年・池上との奇妙な同居生活が描かれる。 第二部では乞食に落ちぶれた蝶子が市井の人々を観察しながら自らの半生を振り返る流浪の月日を描く。芸術家・岡本太郎の母親であり、歌人としても名高い岡本かの子の耽美妖艶な大巨編。
湖の畔に建つ不可思議な別荘……その美しい奴隷たちが主人の奇妙な生活を語り出す「天鵞絨の夢」。メデューズ号の残酷悲惨な事件を描いたノンフィクション・ノベル「海難記」。美貌の兄弟の心中を主題にした耽美的物語「過去世」。宙に浮かぶ三島由紀夫の首と著者が対話を交わす「冬の旅」。他全34編。幻花の物語。
命の意味を問う食にまつわる究極の食文学選 毎晩泥鰌をねだりにくる老彫金師と女将の秘められた情念を描いた「家霊」。食という魔物に憑かれた男の物語「食魔」他、「生命とは何か」を問う小説、随筆を精選