著者 : 岩瀬孝雄
映画脚本の基礎を確立した、ハリウッドの大物ゴードン・キャントウェルの邸宅で、月例パーティが催された。しかしその席上、脚本家志望の青年レイザー・ジャファーリが突然死してしまう。さっそく警察が呼ばれたが、彼がゲイであり、HIVに感染していたことが明らかになると、単純な病死として片づけようとした。たまたまパーティに出席していた元新聞記者ベンジャミン・ジャスティスは、その死因に疑問を抱き、調査を始めるのだが、その過程で殺人の疑いが…前作『夜の片隅で』で絶賛された甘くせつない世界が甦る、異色ハードボイルド。
授業料免除を掲げ、優秀な学生を集める全寮制の人気医科大学イングラム。新入生のクイン・クリアリーは、ある日妙なことに気づく。医療は受ける人の社会的価値で差をつけるべきだ、とクラスメイトがみな同じ考えをもち始めたのだ。そして、彼女と同じように疑問を抱いたボーイフレンドが、突然姿を消してしまう。いったい何がこの大学に起きているのか?理想的なキャンパスに隠された、恐怖の真実。戦慄の医学サスペンス。
息子とふたり暮らしのアニーは、マフィア同士の殺人事件の裁判で陪審員を引き受けた。その途端、得体の知れぬ謎の男から脅迫を受ける。残る11人の陪審員を説得し裁判で無罪評決を出さなければ、愛する息子や友人に不幸が訪れるというのだ。明らかに有罪と思われるマフィアのボスを無罪にするため、アニーは気力と知力をふりしぼって説得にあたるが…。アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した異才が放つ、力作サスペンス。
ニューヨークの公園内の洞窟で暮らしていることから、“ケイヴマン”と呼ばれるホームレスのロミュルス。彼はかねて、悪の首領がクライスラー・ビルを根城にしているとの妄想を抱いている。ある二月の朝、洞窟の前で美青年の死体が発見された。警察は凍死と断定するが、その事件に悪の首領が関わっていると感じたロミュルスは、再調査に乗り出す。期待の新鋭が斬新な人物造形と文体で描くアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
闇を裂く一発の銃弾が、眠っていた記者魂に火をつけた!エイズ患者を扱ったドキュメンタリーでピューリツァー賞を受賞したものの、記事が捏造であることが発覚し、職を追われた新聞記者のジャスティス。今は安アパートで失意の日々を送る彼のもとに、かつての上司が現われ、資産家の息子が射殺された事件の取材に力を貸してくれという。失ってしまった何かを取り戻そうとするかのように、ジャスティスは事件にのめり込んでいくが…。さまざまな哀しみを背負った人間たちが交差するハリウッドのアンダーワールドを舞台に描く、新シリーズ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞受賞作。
子供は無事だ、きみのキャリアは保証する。ただし、ひとこと無罪といってくれればの話だが-マフィア絡みの殺人事件の公判で陪審員に選ばれたアニーは、ティーチャーと名乗る謎の男から無罪評決を強要される。明らかに有罪である被告人を、残る11人の陪審員を説得して無罪とすることが果たして可能なのか。恐怖におののきながらも、アニーは気力と知力をふりしぼるが…。
クイン・クリアリーは医師になりたかった。しかし、家が裕福ではない彼女にとって夢がかなう唯一の道は、イングラム医科大学に合格することだった。イングラムは製薬会社関連の財団が設立した大学で、全米から選ばれた優秀な学生が、無料で教育を受けることができた。補欠ですべりこんだクインは、有頂天で新生活に飛びこんでいく。だが、彼女は奇妙なことに気づきはじめた。クラスメイトたちが、医学倫理を受け持つオールストン教授の理論とまったく同じ-将来、限りある医療資源を分配するのに、その人間の社会的価値によって差をつけるべきだという-考え方をするようになってきたのだ。正義感の強いクインは反発するが、彼女と同意見だったボーイフレンドのティムまで、オールストンの思考様式に染まりはじめた。クイン以外に、その考え方に疑問を覚える者がひとりもいないのはなぜか。やがて、寄宿舎のティムの部屋で盗聴器が発見され、彼の姿が消えた。いたれりつくせりの医学部のキャンパスをひそかにおおう悪夢-屈指のストーリー・テラーによる医学サスペンス。
1995年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞受賞作。マンハッタンの北端、インウッド・パークの洞窟で暮らしていることから“ケイヴマン”と呼ばれるホームレスのロミュルス・レッドベターは、クライスラー・ビルに住む悪の首領スタイヴェサントが世界征服を目論んでいるという妄想に取りつかれている。ある日、洞窟の前で仲間の死体を発見した彼は、犯人を探し出すべく、悪が巣食うダウンタウンへとただひとり乗り込んでいく…。いまアメリカでもっとも注目を集める気鋭の新人が、独創的な人物造形と詩的な文体で描く、話題沸騰のエンターテインメント。