著者 : 峯村利哉
途方もない悲しみが、若き牧師の心を引き裂いたー6歳の僕の前にあらわれたジェイコブス師。神を呪う説教を執り行ったのち、彼は町から出て行った。しかしその後も僕は、あの牧師と何度も再会することになる。かつては電気仕掛けのキリスト像を無邪気に製作していた牧師は、会うたびごとに名前を変え、「聖なる電気」なるものを操る教祖にのぼりつめる。少年小説であり青春小説である前半を経て、得体の知れぬ恐怖が徐々に滲み出す。忌まわしい予感が少しずつ高まる中、あなたは後戻りのきかない破滅と恐怖への坂道を走りはじめる。
何かが起こった。ジェイコブス師の稲妻の肖像写真に撮られたオクラホマの娘に、恐ろしい何かが起こった。牧師の電気治療でドラッグ中毒から脱した僕の身にも何かが起こるのだろうか?オクラホマ娘の一件で再び僕のもとから去ったジェイコブス師。だが運命の糸は僕たちを三度目の邂逅へと導いてゆく。二〇〇八年。初老となった僕はジェイコブスが「ダニー牧師」と名を変えて、一大信仰運動を開始したのを知る。牧師の主催する集会にもぐりこんだ僕は、彼の「癒し」を目撃する。“聖なる電気”による電撃で、歩けなかった者が歩きだし、病に苦しむ者は苦痛から解放される。まやかしか?それとも電気の魔術は本物なのか?僕と牧師の運命が、またもやひとつに撚り合わされる。だが僕は知りつつあった。ジェイコブスの「癒し」を受けたひとびとに何かが起こっていることをーそして僕がジェイコブスとともに稲妻の降り注ぐ山荘を訪れたとき、ああ、何かが起ころうとしていた、ひどく忌まわしい何かが!この世ならざる怪異。悲しみの淵から噴き出す恐怖、恐怖!ホラーの巨匠が、久々に放つ怪奇小説大作、ついに恐るべきものが電撃とともに頭をもたげる!
誰もが顔見知りの小さな町トールオークス。深刻な犯罪とは無縁のこの町で、嵐の晩に、三歳の子供が忽然と消えた。全米の注目を集めたこの失踪事件は、住民総出の捜索でも警察の捜査でも、手がかりすら出てこない。絶望に抗いながら捜し続ける母親。そして、町の住民たちそれぞれが抱えていた秘密が次第に明らかになっていくなかで、意想外の真相が姿を現してーCWA新人賞受賞の傑作ミステリ!
アフリカの大地で生き別れた姉妹。その子孫たちの、あまりに数奇な運命とはー。2017アメリカン・ブック・アワード受賞!26歳の超大型新人による驚異のデビュー作!「NYタイムズ」や「ニューヨーカー」、「ワシントン・ポスト」「ヴォーグ」など、主要各紙誌にこぞって取り上げられ、世界24か国で版権が売れた話題の文芸大作!
麻薬王アダン・バレーラが脱獄した。30年にわたる血と暴力の果てにもぎとった静寂も束の間、身を潜めるDEA捜査官アート・ケラーの首には法外な賞金が賭けられた。玉座に返り咲いた麻薬王は、血なまぐさい抗争を続けるカルテルをまとめあげるべく動きはじめる。一方、アメリカもバレーラを徹底撲滅すべく精鋭部隊を送り込み、壮絶な闘いの幕が上がるー数奇な運命に導かれた2人の宿命の対決、再び。『犬の力』、待望の続篇。
捜査陣の中に、裏切り者がいる。選び抜かれたメンバーの誰が?密かに調査を進めたケラーは、驚愕の事実に対峙する。そんな中、バレーラが次なる狙いと定めたシウダドフアレスでは、対立する勢力が衝突し、狂気と混沌が街を支配していた。家族が引き裂かれ、命と尊厳が蹂躙される。この戦争は、誰のためのものなのか。圧倒的な怒りの熱量で、読む者を容赦なく打ちのめす。21世紀クライム・サーガの最高傑作。
大恐慌後のアメリカ。ノースカロライナ州の山奥で、製材会社を友人と経営するペンバートンが結婚した。新妻セリーナは美しく、天涯孤独で、謎めいたところがあった。彼女の影響で彼の周辺は少しずつ変化しはじめ、次第に強い我欲と支配欲に取り憑かれていく。渦巻く陰謀、そして殺人…。マクベス夫人をも連想させる悪女セリーナの姿を通じて、人間の業の怖ろしさを描き切った渾身の大作!