著者 : 嶺里俊介
一生働ける場所が欲しい、金しか信じられないんだ。大義のためなら、家族も子供もどんな犠牲だって払ってやる。自分さえ良ければそれでいいんだよ。時代の流れを掴めば勝ち組さー破壊と創造に明け暮れた怒涛の六十四年間を、年代ごとに描き出す異色の作品集。関東大震災の傷跡、戦争と復興、高度経済成長と公害、マスメディアの台頭、バブル崩壊…。時代の熱と人間の脆さが生みだす怪談はかくも怖くて愛おしい。
長谷川祐子は、霊視の依頼で来た客から、悩んでいる若い夫婦を紹介された。夫婦の二人の幼い娘が車に撥ねられ、姉が亡くなったという。その後生き残った妹が変なことを言い出した。「あたし、鏡に映らない。きっと吸血鬼になったんだ」(「鳥は涙を流さない」)。霊が人の身体を離れるときに起こるさまざまなトラブルを解決するため、人知れず命までかける霊能者たちの活躍を、ときに優しく、ときにシニカルに、ときにユーモラスに活き活きと描く連作ホラー・ミステリーの傑作。
2020+年、オリンピック後の東京に新設された、対自然災害の実験都市・SC特別区。そこは未来の理想都市として、AIで完璧に管理されていたはずだった。そのオープン初日、安全管理センターの所長・神代は、街に仕掛けられた罠に気づく。街のセキュリティ突破には、ダークWEB上で巨額の懸賞金がかけられていたのだ。神代は、副所長の鷹宮やオペレーターたちと、カジノやITサミットを狙ったテロに対処していく。だが、その裏では不可解な死がエリア内で多発していて…
片桐真治は亡母の遺品から、行方不明だった母の弟・赤石の住所を知った。そこは過去、凄惨な殺人の現場となっていた房総半島奥地の山荘だった。翌日友人・貫井の勧めで、片桐は赤石を訪ねるが、赤石の態度に奇妙な違和感を感じる。帰途、自動車内でムカデに襲われ死にかけた片桐が戻ると、自宅が放火され、留守番をしていた貫井の妻と娘が惨殺されていたー。さらに一族の宿命の「敵」は奇怪な力で大量の死者を出しながら、片桐を狙う。彼に逆転の方法はあるのか!?第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した著者が満を持して放つ伝奇ホラー・サスペンス力作長編。
「不思議な夢が続き、寿命が喰われていく。これは“夢喰い”だ」恩師の堀越教授はそう言い残して死んだ。これは病気なのかー大学助教授の牧野は何人もが犠牲になった“夢喰い”の正体を究明しようと調査に乗り出した。一方、牧野の中学の後輩で、通信会社NJTT社員の咲元光明は奇妙な夢を見るようになり、身の回りで不可解な出来事が起こるようになった。咲元は“夢喰い”に蝕まれていく…。社会を変革するようなビジョンを持つ前途有望な若者に取り憑く“夢喰い”の犠牲者をこれ以上出してはならない。追う者、追われる者の交錯する物語。果たして咲元の運命やいかに!?
大学生の天崎悟は、家出した妹の帰りを待っている。ある日、家に見知らぬ老婆がやってきた。何を聞いても判然としなかった。その後、妹が見つかる。虫に喰い殺され、血が黄色くなった異様な遺体となっていた。宗教法人の施設で見つかった遺体と同じだ。この虫はなんなのだ?どうやって感染したのか。治療法は?第19回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
日本ミステリー文学大賞新人賞が誕生してから二〇年。幅広く活躍を続ける受賞作家から、大石直紀、岡田秀文、新井政彦、望月諒子、嶺里俊介の五名が「街」をテーマに競作。普段、ぼんやりと見えている風景、行き交う人たちの何気ない行動…その中に数々の謎が潜んでいる。五つの味わい深い短編を収録した、珠玉のアンソロジー第一弾!
長野県の宗教団体施設が燃え、不審な遺体が多数発見された。同じ頃、静岡県山中で見つかった老婆の遺体は、光を放つ虫の大群に覆われ、流れ出す血液は黄に変色していた。周囲には何故か讃美歌が響き、虫は列をなし銀河鉄道のように夜空へと…。異様な事態に、警察は法医昆虫学者の御堂玲子に調査を依頼。また、妹を虫に喰い殺された大学生の天崎悟は感染ルートを探る。増える犠牲者。虫の正体は?治療方法は?第19回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞。