著者 : 川西政明
長い時間をかけた人間の経験長い時間をかけた人間の経験
八月九日にすでに壊された「私」。死と共存する「私」は古希を目前にして遍路の旅に出る。「私」の半生とは一体何であったのか…。生の意味を問う表題作のほか、一九四五年七月世界最初の核実験が行なわれた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち「人間の原点」を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞。
村の家・おじさんの話・歌のわかれ村の家・おじさんの話・歌のわかれ
一九三四年五月、中野重治転向、即日出所。志を貫き筆を折れという純朴な昔気質の老いた父親と、書くことにより“転向”を引受け闘いぬくと自らに誓い課す息子。その対立をとおし、転向の内的過程を強く深く追究した「村の家」をはじめ、四高時代の鬱屈した青春を描き、抒情と訣別し変革への道を暗示した三部作「歌のわかれ」、ほかに「春さきの風」などを収録。
田紳有楽・空気頭田紳有楽・空気頭
あくまで私小説に徹し、自己の真実を徹底して表現し、事実の奥底にある非現実の世界にまで探索を深め、人間の内面・外界の全域を含み込む、新境地を拓いた、“私”の求道者・藤枝静男の「私小説」を超えた独自世界。芸術選奨『空気頭』、谷崎賞『田紳有楽』両受賞作を収録。
悲しいだけ・欣求浄土悲しいだけ・欣求浄土
緊張した透明度の高い硬質な文体。鋭角的に切り抉られた精神の軌跡。人間の底深い生の根源を鋭く問い続ける藤枝静男の名篇「欣求浄土」「一家団欒」を含む『欣求浄土』、藤枝文学の“極北”と称讃された感動の名作、野間文芸賞受賞の『悲しいだけ』を併録。
祭りの場・ギヤマン ビードロ祭りの場・ギヤマン ビードロ
如何なれば膝ありてわれを接しやー。長崎での原爆被爆の切実な体験を、叫ばず歌わず、強く抑制された内奥の祈りとして語り、痛切な衝撃と深甚な感銘をもたらす林京子の代表的作品。群像新人賞・芥川賞受賞の『祭りの場』、「空缶」を冒頭に置く連作『ギヤマンビードロ』を併録。
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