著者 : 川西蘭
シティポップが生まれた80年代。同時代の日本の「文学」は何をしていたのだろう?世界のファンのSNSが甦らせたポップ音楽の背後には、同じ時代状況から生まれ、同様に日本オリジナルの発展を遂げた、都会文学の世界が隠されていた。それは現実の都市生活をベースにしながらも、フィクションのヴェールを1枚かけて理想化された、作家たちの“夢”の中の「街」、「どこにもない」場所を架構する文学だった。本書に収めた“9つの物語”は「シティポップの時代」を並走した、そんな日本の忘れられた都会小説。そこには今も優しい風が吹いている。
溝口洋は、キャプテンとして南雲学院高校自転車部を率いる立場になった。自転車部を取り巻く環境も変わった。予算が削減される中、新任コーチが就任。その厳しい指導への不満やインターハイ連覇を義務づけられたプレッシャーで、チーム内の不協和音が高まっていく。それは必然的に、怪我から復帰して間もない洋に、大きな波涛となって押し寄せるのだった。高校最後の夏、親友でライバルでもある岳との切磋琢磨で、洋はどう成長するのか。連覇は達成できるのか。大人の世界への旅立ちを前に、もがく少年たち。ベストセラーシリーズ高校生編、クライマックス!
彼女の死体は香しく可憐な小舟のように流れに浮いていた。それがパールだった。天使にして妖しい精の少女が、地獄ゆえに楽園である最終戦争後の物語を照らし出していく…リアルでファンタジックな書き下ろし近未来小説。
『舞夢』で知り合った謎の美女・涼子は三度目のデートに現れなかった。十日ほどして訪ねてきた彼女の姉・桐子は、涼子が行方不明になったことを告げ、部屋に残されていた涼子の日記を置いていく。その日記には、ぼくには全く覚えのない、ぼくと涼子との異常なセックスが綴られていた…。エロチシズムの香り漂う傑作長篇。
「ぼく」は冷えきった家庭でいつもひとり。密かに音大をめざす高校生。「わたし」は新しいママを迎え、ちょっぴり“複雑”をかかえた中学生。ふたりは大人たちに翻弄されながらも恋をする。これはキュートでドライな恋物語。
突然ひらめいた旋律を追い掛けていたぼくの右脚に、スリップした車のバンパーがぶつかってきた。それがぼくと静香との出会いだった。それから2年、ぼく達はとても仲の良い夫婦として暮らしていた。でも、魅惑的で謎めいた少女ルルがぼく達の前に現われた時から、少しずつ何かが変わりはじめた。とろけるような音楽、倒錯した性、そしてドラッグ…。新感覚トライアングルLOVE STORY。
降り続く砂に覆われ、廃墟と化していく都市の崩れゆくビルの地下で、前時代の戦車の復元に情熱を燃やすキキと少年たちー。不毛な光景の中、哀しくも美しい愛を求める若者たちの、こころやさしい近未来純愛長篇小説。
恋の風が吹はきじめ愛の声が聴こえると人はとても優しくなれる。ロマンのそよ風ただよう街中に躍り出た男女。きまぐれな天使がくれた素敵なプレゼント。バリエーション豊かな“すがすがしい虚構”のなかに現実世界への光を投げかける新しい挑戦。
ぼくたちの愛は、とても素敵なハーモニーだった。ゆたかな情感とはじけるような青春の中に、あなたへの限りない愛と、ぼくへの確かな信頼があった…。「マイ・シュガー・ベイブ」「チープ・スリル」「ジェラス・ガイ」「マイ・ラスト・アフェア」軽快な会話で知と愛をやさしく奏でる4つの恋愛楽章。