著者 : 川野太郎
かつて大学で親しかった仲間が東海岸の大屋敷を共同で借り切って過ごす夏休み。アルコールとドラッグとセックスに溺れて、子供たちは放ったらかし、そこに超弩級の暴風雨が襲来し建物も電力もやられてしまう。語り手イヴを含む12人の少年少女は無為無策の両親たちを見限り、幼い者たちを連れて迫り来る危機から脱出する。だが外に広がっていたのは黙示録のような混沌の世界だった。そして、壊滅的な状況で起こる出来事は、イヴの弟ジャックが持ち歩き「解読」している絵入り聖書物語をなぞり始める…気候変動、経済格差社会、世代間の断絶という今ここにある現実を、子供たちの冒険譚として、予言的で痛切ながら溌剌とした「気候フィクション」の名作。全米図書賞最終候補となり、「ニューヨーク・タイムズ」年間ベストテンに選ばれた。
カナダ、マニトバ州北部の一軒だけの村。母親と従妹と暮らす14歳のノアが、地図製作者の父親が持ち帰った短波ラジオで最初に聞いたのは、親友ペリーが割れた氷から一輪車ごと湖に落ちたという報せだった。死んだペリーの両親の村で次の夏も過ごすと決めたノア、村には先住民クリーの人びと、罠猟師、宣教師、そして行方不明の父親までが…。物語は後半、大都会トロントの映画館“ノーザン・ライツ”に舞台を移し、そこでノアと家族は思いもかけぬ出会いを経験する。著者デビュー作。全米図書賞候補作。
科学者ケイト・フィーロらを乗せた調査船が北極海で発見した未曽有の規模の氷山、その中深くには、ひとりの男が氷漬けになっていたー。富と名声を追い求める傲慢な研究所所長、スクープを狙う雑誌記者、「凍った男」の蘇生を神への冒涜と考える狂信的な抗議団体、甦った男の生を長引かせるため研究を重ねる科学者たちの、欲望と思惑の渦まく世界が、長い眠りから覚めた男を待ち受けていた。科学の倫理性、人生の意味、そして愛の本質を問う、サイエンス・ロマンの傑作!