著者 : 平井呈一
『吸血鬼ドラキュラ』に代表される西洋怪奇小説の紹介と翻訳、洒脱な語り口のエッセーに至るまで、その多才を以て本邦における怪奇翻訳の礎を築いた巨匠・平井呈一。名訳として知られるラヴクラフト「アウトサイダー」ほか、ポリドリ「吸血鬼」、ベリスフォード「のど斬り農場」等この分野のマスターピースたる13篇に、対談やエッセー・書評を付して贈る、怪奇小説読者必携の一冊。
日本を終世愛してやまなかったハーン(一八五〇-一九〇四)が我が国古来の文献や民間伝承に取材して創作した短篇集。有名な「耳なし芳一のはなし」など、奇怪な話の中に寂しい美しさを湛えた作品は単なる怪奇小説の域をこえて、人間性に対する深い洞察に満ちている。
空にはすさまじい赤光があった。イギリスは片田舎の山奥の、その赤光に燃えたつ古代ローマ人砦に独り遊ぶルシアン・テイラーは、作家になる夢を紡いで暮らしていた。だが、こんな田舎にいて何ができよう。夢に憑かれた彼は故郷をあとにする。牧神が逍遥する山々からサバトの街ロンドンへ…。一人の青年の孤独な魂の遍歴を描く、神秘と象徴に満ちた二十世紀幻想文学の金字塔。
罪とエクスタシーの作家アーサー・マッケン。イギリス怪奇小説の黄金期を代表する彼の作品は、いずれも妖しいまでの白光に包まれている。本書には、白い粉薬を飲んだがために肉体が溶けてしまう青年を描いた「白い粉薬のはなし」をはじめ、円環をなす一連の奇譚を集めた表題作に、“聖杯”をテーマにすえ、怪奇小説のひとつの終点をも暗示する「大いなる来復」を併せて収録した。
日本を終生愛してやまなかったハーン(一八五〇-一九〇四)が我が国古来の文献や民間伝承に取材して創作した短篇集。有名な「耳なし芳一のはなし」など、奇怪な話の中に寂しい美しさを湛えた作品は単なる怪奇小説の域をこえて、人間性に対する深い洞察に満ちている。