著者 : 平江まゆみ
キーナは18歳のとき、父が働く工場の御曹司との恋に舞い上がったが、手酷くあつかわれ、逃げるように故郷を後にした。夜間工場で仕事をしながらデザイン学校に通い、卒業後は、業界の帝王である大実業家ニコラスに雇われ、身を粉にして働いた。当時、妻を亡くしたばかりのニコラスはその冷徹さが妻の死を招いたともっぱらの噂だったが、キーナは知っていたー彼が美しき妻の生前の写真を、大事そうにデスクに飾っていることを。初恋の傷心で臆病になっていなかったら、私も恋におちていたかも…。そんなニコラスと出会って6年。食事をともにしたある夜、彼がキーナに思いがけない申し出をする。「僕は君の愛人になるつもりだ」
子守の求人広告を見て、カリーナはこれに懸けるしかないと思った。3年前に墜落事故で両親を失ったが、金メダルという母の夢を叶えるため、カリーナはフィギュアスケーターとして頑張ってきた。だが足首の骨折で選手生命を絶たれた今、経済的にも困窮していた。広告主は、数々の石油会社を経営する大富豪マイカ・トランス。なんとか面接を通り、住み込みで働き始めたカリーナはいつしか、ボスの威厳あふれる態度の下に隠された優しさを知る。彼のことを考えるたびに感じるこの胸の切なさは、いったい何?ある夜、悪夢から覚めたカリーナが寝間着姿でキッチンに行くと、偶然居合わせたマイカが咎めるような視線を向けてきたかと思いきや、無防備な彼女の唇をいきなり奪って…。信心深い家庭に育ったカリーナは、純潔を重んじるまじめな女性。過去のトラウマから男性が苦手だったが、よりによって、かつてないほど男らしい大富豪に恋をしてしまい…。不動の大スター作家が贈る、真冬の甘いシンデレラ・ストーリー!
天涯孤独のサニーには、他人には話せない秘密がある。6年前、人違いで悪党に襲われた。母と幼い弟の命を奪われ、生き残ったサニーの左胸にも、今なお大きな傷が残っているのだ。人生でたった一度、その醜い痕を見られたことがあるが、相手からあからさまに拒まれたときは、まるで悪夢のようだった。だから、職場のパーティですてきな男性ジョンから声をかけられても、いずれ拒絶されると思うと怖くて、内気にふるまってしまった。案の定、彼は唐突に「失礼」と言い捨て、彼女を置いて去っていった。誰かを好きになっても未来がないのなら、誰とも関わらないもほうがいい。そう自分に言い聞かせる彼女に、ほどなくジョンとの再会の時が訪れ…。
真っ青な空を背に15歳のジェーンは笑顔で泳ぎを楽しんでいた。絵葉書のように美しい海と眩い太陽。その時どこからともなくモーターボートが近づいてきた。ボートは明らかにジェーンを標的にして突進し、スクリューが彼女を切り裂き…そこで悲鳴とともにジェーンは目を覚ました。何度となくうなされるこの悪夢は、16年前に実際に彼女が経験した悲劇だ。その苦しみを乗り越えた今、ジェーンはハンサムな医師と結婚し、お腹には待望の赤ちゃんがいる。人生はまさに順調だったー“ボートの男”が再び現れてすべてを脅かすまでは。
高校を卒業して働きだしたコーリーには憧れの人がいた。ひとまわり以上も年上のJ・C・カルホーンーハンサムで大人の魅力あふれる彼からデートに誘われ、コーリーは夢見心地でイエスと言った。独身主義の彼に言われるまま、親の反対を押し切って同棲を始めた。目もくらむほどの幸せの果て、コーリーは小さな命を授かった。だが長期出張から帰ったJ・Cに妊娠を告げようとすると、なぜか彼は激昂した。君の浮気相手から、その話はもう聞いていると。J・Cはコーリーを真冬の寒空に放り出し、嫌悪もあらわに吐き捨てた。「君の顔は二度と見たくない。僕にとって君は存在しない人間だ」
新しい仕事のスポンサーが、まさか彼だったなんて…。全身全霊で恋した人に無垢な想いを踏みにじられて9年、やせっぽちの少女から美しいモデルへと成長したギャビーは思いもよらない形で初恋の人マークと再会した。だが今や大実業家となった彼にはまったく相手にされず、ギャビーは彼の弟ジョーに誘われるまま食事に出かけるようになる。穏やかな友情もつかのま、ある夜突然、ジョーは不審な死を遂げた。茫然自失となりながらも何とか葬儀に赴いたギャビーを、マークは弟をたぶらかして死に追いやった悪女と一方的に決めつけた。「弟の眠りを妨げるな。出ていけー僕の視界から消えてくれ!」
ベルヴィアは、双子の内気な姉をいつも守ってきた。ある日、会社経営に行きづまっていた父親が、融資目当てで、イギリス屈指の実業家レイサム・タヴェナーを家に招待した。如才なく、世慣れた感じのレイサムは、大人しい姉のほうに関心を持ったらしくて、何かにつけて気を引こうとする。断れない姉をかばうベルヴィアは、彼の興味を引きつけるため遊び慣れているふりをした。すると、真に受けたレイサムは奔放な娘だと思いこみ、辛辣な態度で接してきたあげく、“浮気女”と嘲りながら、ベルヴィアにキスをしてきて…。
ティナは姉の結婚式のため、幼い息子とサントリーニ島へ向かった。旅の途中でギリシアの実業家アリと再会するとは思いもせず。6年前、ティナはアリに激しく惹かれ、すべてを捧げた。だが彼は去り、彼女はひとり身ごもった体で残されたのだった。真実を知ったアリは妊娠を黙っていたティナを責め、息子の父親になるため、すぐさま結婚しようと迫った。アリは、浮気をしたら親権を手放す婚前契約を結ぶと宣言し、二人きりで過ごす時間を取って夫婦の相性を確かめようなどと言う。条件の有無ではなく、愛のない結婚がいやなのだと心で叫びながら、今も彼に強く惹かれるティナに、抗うすべはなかった。
やむなき事情でワイオミングに来たメリーは、友人に連れられ、その兄である全米有数の企業の会長レンの広大な家に身を寄せた。背が高く豊かな黒髪のハンサムな彼を見たとたん、メリーのみぞおちにえも言われぬ衝撃が走った。これが…恋に落ちるということなの?ところが、一方のレンはメリーの姿を目にするやいなや、なぜかあからさまな敵意をむき出しにした。「僕に色目を使っても無駄だ!」そう言い放ったうえにその後もメリーを軽い女として扱い、ますます彼女のうぶな心を傷つけるが…。
由緒あるブロディ家の昼食会を訪れたティファニーは、偶然ぶつかった長身の男性の顔を見て、息をのんだ。なんてハンサムなのかしらーそれは御曹司のクリスだった。彼との会話で心弾むひとときを過ごしたティファニーだったが、運悪く玉の輿狙いの女と誤解され、たたき出されてしまう。職を失ったあと病に倒れ、貯金は底をつきかけていた。次の家賃を払ったら、本当にもう一文なしだ…。そんなティファニーの苦境を知ったクリスが持ちかけたのは、愛人にならないかという提案だった。
ケイティの父が倒れ、救急車で病院に運ばれるという騒ぎのさなか、大企業の会長を名乗るカールトンという男性から電話がかかってきた。君の父親のせいで大金を失った、と厳しい声で告げられ、彼のオフィスに赴くと、セクシーなオーラを放つ黒髪の男性ーカールトンが現れ、信じ難い事実を聞かされる。父が事業に失敗して全財産を失い、カールトンにも大損害を与えたという。ショックに取り乱すケイティに、数日後、彼からとんでもない申し出が。「僕と結婚するなら、お父さんの借金を清算してあげよう」出会ったばかりなのに、なぜ?ほかに父を救う方法はないの?とまどうケイティに、帰り際、カールトンは強引にキスをしてきて…。
ケルダが13歳のとき母が再婚し、新しい兄ができた。再婚相手の大富豪の御曹司で、見とれるほど美しいアンジェロだ。彼はなぜかケルダに厳しくあたり、彼女の育ちの悪さを咎めた。だがそんな二人の関係はケルダが18歳のときに一変する。あるパーティの夜、成り行きでキスを交わしてしまったのだ。それを見た継父は激怒して、すぐさま彼を家から追いだした。6年後、ケルダは偶然アンジェロに再会した。なぜか彼女の窮状を知る彼は、愛人になれば援助してやると言い、やがてケルダが彼の子を宿すと、強引に結婚を迫ったのだった。
母亡きあと、サリーは横暴な父との暮らしに耐えてきた。異様に厳重な警備に囲まれた黄金の鳥篭のような生活の中で、唯一の心の支えは、彼女の身辺を守る元FBIのポールだった。いつしかサリーはたくましい年上の彼に惹かれ、熱い想いをぶつけた。だが、ポールは彼女に甘いキスを浴びせておきながら、さよならも告げずに、ある日忽然と姿を消してしまった。ショックと悲しみに沈むサリーに追いうちをかけるように、彼には妻子がいると父から聞かされ、彼女は打ちのめされた。それからずっと、サリーの心は死んだままだったー3年後、あの日と変わらぬ魅力的な彼の姿をふたたび目にするまで。
ヴィクトリアには幼い頃の記憶がない。両親の顔さえ知らず、気がついたときにはひとり里親の家を転々としていた。だからだろう、恋人のブレットにすら完全には心を開けずに、写真家としての仕事に没頭する毎日だ。ある日、撮影旅行から戻ったヴィクトリアは、現像した一枚の写真に目を奪われた。そこに写るのは、むっつりした表情の老いた男ーまったく見覚えのない男だというのに、彼を目にした日から、ヴィクトリアは夜ごと悪夢にうなされるようになる。これは、失われた過去と何か関係があるの?この男はいったい誰…?
小さな町の警察官メラニー。といっても普段はご近所トラブルや駐車違反に対処する程度で、町で初めて殺人事件が起きたときも現場で嘔吐し、居合わせたFBI捜査官コナーに馬鹿にされる始末だ。そんなある日、メラニーは最近起きたいくつかの“死亡事故”の共通点に気がつく。被害者は皆、妻や恋人を虐待する暴力男だったのだ。これは過失や事故じゃないー神さま気取りの殺人犯は“闇の天使”と名づけられ、メラニーはコナーとタッグを組んで捜査に乗り出す。やがて思いもよらぬ衝撃の事実が明らかに…。怒涛のロマサス傑作!その死は怒れる“天使”の涙か、それともー天性の作家エリカ・スピンドラーの名作、ここに復刻!
朝早く、玄関をどんどんと叩く音がした。ドアを開けると、見知らぬ男性が険しい顔で家に押し入り、甥の心を弄んで捨てた女だと、リアをなじった。突然のいわれのない非難に面食らったが、どうやら男はリアを、奔放な従姉ポピーと勘違いしているらしい。実業家だという、デミトリオス・クウツウピスと名乗った彼は、端整な容貌を蔑みに歪め、甥の婚約者として、いますぐギリシアに戻るよう、ポピーにーリアに迫った。リアは人違いだと説明する暇も与えられないまま連れ去られた。
テディは夫になったばかりのアレハンドロとともに、アルゼンチンへと向かう自家用ジェット機の中にいた。亡き父の理不尽な遺言状さえなければ、こうはならなかった。父はテディが屋敷を相続する条件に結婚を義務づけ、その相手にアレハンドロを指名していたのだ。アレハンドロは南米で一、二を争う辣腕実業家で非情なプレイボーイ。彼は結婚によってテディの父親にかつて奪われた土地を取り戻せる。テディは半年で別れる約束で、期限つきの結婚に同意した。イギリスの田舎育ちの娘など彼には問題外。でも望みを叶えたければ、この人と6カ月暮らすしかない。それがどんなにつらい責め苦でも…。
猛吹雪の中、メリッサは名士カーク家の邸宅を訪れた。全身ずぶ濡れになりながらもここへ来たのには訳があった。カーク家の三男ドルトンの身に危険が迫っていると感じ、そのことを本人に一刻も早く伝えたかったのだ。私の一家は地元の人々から白い目で見られてきたけれど、ドルトンだけは何かと親切にしてくれた…。幼少期のトラウマのせいで男性を恐れるメリッサだったが、知らず知らずのうちに彼への想いが静かに育っていたのだ。だが、警告を聞くや彼は鬼の形相になり、怯える彼女をなじった。「なぜ、そのことを知っている!誰から聞いたんだ!」