著者 : 幸田真音
渋沢栄一の孫にして、日本銀行総裁、そして大蔵大臣を務めた渋沢敬三。彼はなぜ、第二次世界大戦後、預金封鎖や新円切替などの苛烈な経済対策に踏み切れたのか?生物学者をめざす心優しい少年が、その人柄ゆえに経済界の要職に抜擢され、日本の財政の行方を左右する究極の決断を迫られるようになるまでの数奇な生涯を、大胆な視点で描いた傑作長編小説。
明治41(1908)年、15歳で東京の回米問屋へ奉公に出た山崎種二はやがて金融街・兜町を代表するまでになる証券会社を設立し、「売りの山種」として経済界にその名を轟かせる存在になる。しかし、二・二六事件を皮切りに、経済統制は苛烈を極めー。『日本国債』『天佑なり』を著した経済小説の第一人者が、国民生活に最悪の負担を強いた、戦後財政の真実を描く。天性の相場観と経験を頼りに、日本の経済復興に尽くした男の人生の物語。作家生活25周年記念作品。
彦根で堅実な呉服商「絹屋」を営む半兵衛は、磁器に魅せられ、蓄財をなげうってやきもの作りに挑む。技術と資金の不足に苦しみながらも、妻・留津と手を取り合い、近江で京の磁器を超えると豪語する。試行錯誤の中、「湖東焼」は若き井伊直弼の心をも捉えるが、幕末の動乱が彼らの運命を呑み込んでゆくー。経済小説の名手が新しい産業への挑戦を題材に、変わりゆく時代と貨幣経済の発展を描ききった、歴史経済長篇の金字塔!
広島県の造り酒屋に生まれた池田勇人は、大蔵省に入って5年目に「落葉状天疱瘡」という難病に罹り、退職を余儀なくされた。絶望の底に叩きつけられた池田だったが奇跡的に同省へ復職。主税局長、次官と上り詰めたのち、政治の世界へ身を投じる。時を同じく、新聞記者で水泳指導者としても活動する田畑政治は、幻のオリンピックを再び東京で開催しようと決意。やがて2人の人生は「この日」に向かって収斂し始めるー。
首相に就任した池田勇人は、東京オリンピック開催準備の政府責任者として、東京大改造、東海道新幹線の建設などを指揮。しかし開催直前、病魔に倒れてしまう。一方、オリンピック組織委員会事務総長に就任した元朝日新聞記者の田畑政治は、突如湧き起こった責任問題で予期せぬ辞任に追い込まれる。「記憶に残る大会に」「経済成長に弾みを」。それぞれの理想を掲げて奔走した2人。そしてついに「この日」は訪れたー!
中学生の頃から悪さばかりしてきた、新谷凱。いつも行き当たりばったりの人生を送ってきた彼が、唯一興味を持てたものーそれは「人工知能」の世界だった。携帯電話会社でのアルバイトや電気機器メーカーでの企画開発などを経て、AIに携わる仕事に就いた凱。その企業で彼は、ある事件の捜査に協力することになる。その事件とは、自動運転技術が搭載された試験中の車が、人を轢いたというものだった…。人気経済小説家が描く、衝撃のサスペンス!
2008年の世界的な金融危機でファンドマネージャーだった深尾真司は全てを失った。7年後のある日、コンビニの雇われ店長になった彼は行き倒れの少女を助ける。昆虫のナナフシのような細い肢体を持つ彼女、彩弓は将来有望なバイオリニストだったが病を抱えていた。彼女を救うべく、深尾は再び金融市場へとー。
三崎皓子、五十一歳。気鋭の経済学者で、テレビのコメンテーターとしても活躍中だ。ある日、明正党の総裁・山城泰三に呼び出され、民間人として金融担当大臣に指名される。就任直後、地方銀行の取り付け騒ぎを鮮やかに解決した皓子は、参院選へ出馬、官房長官に抜擢される。そんななか、山城が病に倒れてー。皓子を待ち受ける運命は?
広島県の造り酒屋に生まれた池田勇人は、大蔵省に入って5年目に全身から膿が吹き出す「落葉状天疱瘡」という難病に罹り、生死をさまよう闘病の中で退転を余儀なくされた。絶望の底に叩きつけられた池田だったが、奇跡的に同省へ復職、仕事ぶりの卓抜さから、主税局長、次官と上り詰めたのち、政治の世界へと身を投じる。時を同じくして、朝日新聞政治部の記者で水泳指導者としても活動する田畑政治は、幻となったオリンピックを再び東京で開催しようと動き始めるー。
政治家に転身した池田勇人は着実に要職を踏み、ついに首相に就任。東京オリンピック開催準備の政府責任者として、首都大改造、東海道新幹線の建設などを指揮、経済成長を牽引する。しかし、開催直前、病魔が池田を襲う。一方、東京五輪決定を機に組織委員会事務総長に就任した元朝日新聞記者の田畑政治は、突如湧き起った責任問題で事務総長辞任に追い込まれてしまう。「記憶に残る大会に」「経済成長に弾みを」…。それぞれの理想を掲げて奔走した二人。そしてついに「この日」は訪れたー。
横浜で英語を学び12歳で渡米。契約社会のなか、奴隷として売られる逆境も乗り切った。帰国後は教師、官僚、相場師、銀行員と、官・民でさまざまな職に就く。武器は堪能な英語力と、型破りな発想力、そして持ち前の楽天主義。失敗を繰り返しつつも、現場からの視点を失わない姿勢は、一流の財政センスへ結実してゆくー。日本経済を救った男・高橋是清の生涯を克明に描いた第一級の歴史小説。第33回新田次郎文学賞受賞作。
銀行家としてあらたな一歩を踏み出した是清は、日露戦争の戦費調達という使命を帯び、倫敦で極東の新興国・日本をアピール、日本国債の売り出しを成功させる。以来、昭和金融恐慌の鎮静化、世界恐慌後のデフレ脱却など、日銀総裁、大蔵大臣、首相を歴任して、危機のたび辣腕を振るった。大震災と2度の恐慌を乗り越えた奇跡の男は、なぜ二・二六事件で凶弾に倒れなければならなかったのか。不世出の財政家・高橋是清の生涯。
ファンドマネジャーとして活躍していた深尾真司は、2008年に起きた世界的な金融危機に見舞われ全てを失い、コンビニの雇われ店長として働いていた。ある日コンビニで、彩弓と名乗る行き倒れの女を助ける。トラブルの種を抱え辟易とする深尾だが、不思議な昆虫「ナナフシ」のような細い肢体と切なさを持つ彩弓に亡くなった自分の娘の姿を重ね、彼女の面倒を見ようとする。彩弓は将来を嘱望されたバイオリニストだったが、病を抱え、右手の神経を失おうとしていた。「もう、目の前で大切な人を失いたくない」自らの全てと引き換えにでも彩弓の命と右手を救おうとした深尾は、かつて憎しみさえも抱いた金融市場に、ふたたび身を委ねることを決意するー。著者初の人間ドラマ!
有名デザイナー・ブランドのショップ販売員として働く真昼。商社に勤め、社内恋愛の末結婚するものと思っていた彼にふられやむなく転職した真昼に、先輩バイヤーの病気で海外出張のチャンスが巡ってきた。行き先はミラノ。何もかもが輝くこの街で、真昼はファッションの仕事の魅力に目覚める。だが、帰国後の彼女を待ちうけていたのは、とんでもないトラブルでー!?業界の裏側に鋭く切り込む、新時代のサクセス・ストーリー。
バイヤーとして仕事の手応えを感じる真昼は、古巣の先輩もうらやむ老舗セレクト・ショップに転職、華やかなデビューを飾る。だが、買い付けに行ったパリで、金融危機の影響で親会社がファッション事業から撤退を決めたと聞かされる。時代の荒波に翻弄され、失意のままニューヨークに辿り着いた真昼が見つけた、新たな目標とはー。等身大の女性が情熱を胸に、迷いながらも自分の人生を切り拓いていく、女性版青春起業小説。
財務省で将来を嘱望された若手官僚、原田が自殺した。上司の芹川は、昭和初期の財政政策が克明に記されていた原田のノートに導かれるように、財務省の地下室に向かう。原田は何を伝えたかったのか?地下室で芹川が見た日本の暗部とはー?政策の検証を許さなかったこの国に未来はあるのか。国会議事堂、日本銀行、マスコミ、金融市場などを舞台に、日本経済の裏側に巣喰う禍々しいものの正体に迫る!
外資系クレジットカード会社で働く27歳の藤崎翔は、大規模なリストラ計画のため信頼する上司たちが解雇されることを知る。翔も退職を決め、彼らと一緒にベンチャー企業を起ち上げるが、最年少ながら、なんと社長に選ばれてしまう。夢をみずからの手で引き寄せるために、新しいビジネス・モデルを模索する翔と仲間たち。果たして新会社の行方は?読めば元気が湧いてくる!すべての働く若者たちへ贈る、青春熱血起業小説。
定年を4年後に控えた永関恭次は、ある日、ゲノム解析、予防医学、そしてデータマイニングの先端技術を駆使して、人間の正確な「余命予測」をビジネスとする研究所の存在を知る。余命検査の説明会で偶然居あわせた永関と4人の男女。残された寿命をはっきりと自覚した時、彼らの人生の風景が大きく揺らぎ始める。
なにより大切なのは出口シナリオだー。ファンド業界の風雲児、相馬顕良が仕掛ける、壮絶な企業買収オペレーション。外資系証券会社で働く広田美潮はこのディールに加担することでいったい何を得て何を失うのか。日本経済の希望を描き続ける著者渾身の長篇小説。「会社」は誰のものなのか、を問う倉都康行氏との対談を併録。