著者 : 後藤美香
彼にも楽しいクリスマスを 過ごしてほしかっただけなのに……。 ロンドンの超高級ホテルで客室係として働く派遣メイドのグレース。 クリスマスも近いある雪の日、いつもとは違う部屋の清掃を任され、 初めて足を踏み入れたのは最上階のスイートルーム。 ホテルのオーナーで美貌の大富豪フィンリーが使っているらしい。 壮観な眺めを誇る室内に入ると、彼の旅行かばんが置かれていたので 中身を片づけていくうち、ツリーに飾る天使の像が出てきた。 きっと彼は家族と離れてクリスマスを過ごさないといけないのかも……。 母に捨てられ、代わりに育ててくれた祖母も1年前に亡くした私みたいに。 せめて、この洗練されているけれど冷たい空間をクリスマスらしく 温かい雰囲気にしてあげようと、グレースは一生懸命に飾りつけをした。 フィンリーから罵声を浴びせられ、涙を流すことになるとも思わずに。 フィンリーが怒ったのは、亡き妻を思い出させるクリスマスが嫌いだからでした。解雇を仄めかされたグレースは、祖母がいないだけでもつらいクリスマスなのに、家賃も払えなくなったらどうしようと震えます。ところが怒りの爆発の後で彼はなぜか優しくなり……。
踊れないシンデレラは逃げ出したーー 白馬の王子に恋してしまうのが怖くて。 幼いときに親と死に別れたレイナは、若くして結婚と離婚を経験し、 二度と不実で傲慢な男性にはかかわらないと心に誓っていた。 あるとき、親友の結婚披露宴のためにギリシアを訪れ、 街で美神を彷彿とさせる黒髪の男性とぶつかりそうになった。 ほんの一瞬だったのに、彼の顔はレイナのまぶたの裏に焼きついた。 翌日、披露宴で花婿付添人を見た彼女は思わず息をのんだーー昨日の彼! その正体は、ギリシア屈指の大富豪アキス・ジアノポウロスだった。 宴の後、ホテルまでリムジンで送ってくれた彼に胸を高鳴らせる一方、 レイナの心は沈んだ。また恋に落ちて傷つくのは、耐えられない……。 恋心を戒めると、レイナは名も告げずに彼のもとから逃げ出した! ギリシア語を話せない名もなきヒロインのゆくえを、懸命に捜し始めるヒーロー。その姿はさながら、消えたシンデレラを追いかける王子様のようで……。
牧師の父と古風な母に育てられたレティシアは、初めての恋に破れて以来、男性には心を開けなくなっていた。そんなときに出会ったのが、知人宅に滞在しているヤソンだった。35歳のオランダ人医師はとても背が高く、ハンサムで、警戒心をあらわにするレティシアに優しく言った。「いつの日か、きみは誰かを好きになる。そしてその誰かは、きみが世界でいちばんきれいだと気づくんだ」事情を知る彼の、なぐさめの言葉でしかないことはわかっていても、レティシアはしだいにヤソンに惹かれていくのを感じた。夏の恋のはじまりーそれは、眠れない夜のはじまりでもあった。
ギリシアのホテルに休暇で滞在していたフランは、裏庭で傷ついてぐったりした小さな女の赤ん坊を見つけた。親が見当たらず、急いで病院に運びこんだあとも、赤ん坊のはかなげな姿に胸がつまり、涙ながらに励まし続けていた。何時間もたち、やがてさまざまな状況が明らかになるー不幸にも赤ん坊の両親は竜巻に巻きこまれて亡くなったという。そして、この子の伯父と名乗る男性が現れ、フランは目をみはった。世界でも指折りの巨大企業のCEO、ニコロス・アンゲリスだったのだ。さらに驚くことに、彼は姪を親身に看護するフランを見て、世話係としてアンゲリス一族の本拠地へ来てほしいと申し出た!
ある日、ローラは姉夫婦が死亡したという連絡を受け取った。 知らせてきたのは義兄の親友で名門出身の大富豪アントン・ドヴィア。 何度か会ったことはあるが、過剰なまでの男っぽさや尊大さに、 ローラはつい怖じ気づいてしまい、ひどく苦手な相手だった。 遺された姪サリーのもとに駆けつけると、そこにはアントンがおり、 驚いたことに、後見人としてサリーを引き取ると言う。 たしかに一介の秘書の私より彼に育てられたほうが幸せかもしれない。 でも、両親を亡くして不安になっている姪を放ってはおけないわ……。 ためらい、思い悩むローラを、アントンは嘲るように眺めると、 有無を言わせぬ口調で言った。「君は僕と結婚しなくてはならない」 幼い姪のために愛なき結婚を余儀なくされたローラ。まだ男性を知らないため初夜を恐れる妻を尻目に、アントンはふつうの結婚生活を送りたいとベッドをともにすることを望み……。ほんとうの夫婦となるまでの、二人の心の変遷をお楽しみください。
ロンドンで病院勤めをするセリーナは、車の事故で入院してきたオランダ人男性と出会う。長身で金髪の彼は入院初日から気さくに話しかけてきて、仕事を辞めて僕とオランダに来ないかと熱っぽく誘った。そんな強引さに不安を感じながらもきっぱり断れないセリーナを、患者の従兄弟で、オランダで医師をしているというヘイスは、いつも紳士的に気遣ってくれるのだった。やがてオランダへ渡ったセリーナが不実な恋人の裏切りに遭い、途方に暮れているときも、助けの手を差しのべたのはヘイスだった。彼は落ち着いた声で、それなら僕と結婚しないか、と申し出た。
大富豪の逆鱗に触れたメイドは、 降り積もる雪に涙を落とした。 あと少しでクリスマスを迎える冬のロンドンで、 派遣メイドのグレースは超高級ホテルの客室係として働いていた。 ある雪の日、いつもとは違う部屋の清掃を任され、 はじめて足を踏み入れたのは最上階のスイート。 ホテルのオーナーである美しき大富豪フィンリーが使っているという。 壮観な眺めを誇る部屋に入ると旅行かばんが置かれていたので、 中身を片づけていくうち、奥からツリーに飾る天使の像が出てきた。 洗練されているけれど冷たい感じのこの部屋をクリスマスらしくしたら? そう思いついたグレースは即座に行動し、完璧な飾りつけをした。 フィンリーから罵声を浴びせられ、涙を流すことになるとも思わずに。 富裕な顧客向けに派遣されるメイドたちのロマンスを描く、作家競作シリーズ〈メイド物語〉。よかれと思ってした行動でフィンリーの心のかさぶたを剥がしてしまったグレース。怒りの爆発のあとで彼が示した優しさの意味は? 次回最終話はジェシカ・ギルモア作。
両親亡き後、アンは鬼のような大伯母のもとで家政婦同然にこき使われ、20歳になった今、好きでもない男性と結婚させられそうになっていた。もう我慢できない……。アンは古い車に乗って家を飛び出し、カリフォルニアに向かおうとしたが、途中で車が故障してしまった。窮地を救ってくれたのは、ローリーとアンジェラの若夫婦。学生結婚した二人は夫婦で初めてローリーの実家へ行くところだという。二人の車に同乗してほっとした矢先、衝突事故に巻き込まれ、アンは病院のベッドの上で意識を取り戻した。そばにいたローリーの兄マットの言葉で、驚き
幼くして最愛の両親を亡くし、祖父母に育てられたレイナは、20歳で結婚したものの卑劣な夫に傷つけられて離婚を経験した。以来、もう二度と傲慢な男性にはかかわらないと心に誓っていた。あるとき、親友の結婚披露宴のためにギリシアを訪れ、神話に登場する黒髪の美しき男神を思わせる男性に出会うーーギリシア屈指の大実業家、アキス・ジアノポウロス。気を引こうと躍起な女性には目もくれずレイナをダンスに誘う彼は、まるでシンデレラの義理の姉たちを避ける王子のようだ。けれど、どれほど彼が魅力的でも、また恋に落ちたら傷つくだけ……。み
ある日、ローラは姉夫婦が死亡したという連絡を受け取った。知らせてきたのは、義兄の親友で名門出の大富豪アントン・ドヴィアー何度か会ったことはあるが、過剰なまでの男っぽさや尊大さに、ローラはつい怖じ気づいてしまい、ひどく苦手な相手だった。遺された姪サリーのもとに駆けつけると、そこにはアントンがおり、驚いたことに、後見人としてサリーを引き取ると告げる。たしかに一介の秘書の私より彼に育てられたほうが幸せかもしれない。でも、両親を亡くして不安になっている姪を放ってはおけない…。ためらい、思い悩むローラを、アントンは嘲るように眺めたあげく、有無を言わせぬ口調で言った。「君は僕と結婚しなくてはならない」