著者 : 成川裕子
2002年、シエラレオネで5人の女性が殺害された。元少年兵3人が起訴されるが、記者コニーはイギリス人のマッケンジーを疑っていた。2年後、バグダッドで彼に遭遇したコニーは拉致監禁されてしまう。解放時、彼女はほぼ無傷なうえ曖昧な証言ばかりで監禁中の出来事を警察に話さない。何を隠しているのか?圧巻の心理描写と謎解きの妙味を堪能できる、著者渾身のサスペンス。
1920年冬、エルシーは教会で純朴な青年に声をかけた。恋人となった彼が4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろうー。英国で実際に起きた殺人事件をもとにした「養鶏場の殺人」と、強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮した傑作中編集。
資産家の老婦人、マチルダ・ギレスピーは、血で濁った浴槽に横たわって死んでいた。睡眠薬を服用した上で手首を切るというのは、よくある自殺の手段である。だが、現場の異様な光景がその解釈に疑問を投げかけていた。野菊や刺草で飾られた禍々しい中世の鉄の拘束具が、死者の頭に被せられていたのだ。これは何を意味するのだろうか?英国推理作家協会ゴールドダガー賞受賞作。
邸の氷室は十八世紀に小丘を模して造られた。冷蔵庫の出現にともない保冷庫としての役目を終えていたそこで、不意に死骸が発見される。胴体は何ものかに食い荒らされた、無惨な死骸。はたしてこれは何者か?…ここにはすべてがある。悲嘆も歓喜も、幻滅も信義も。これはまさに人生そのもの、そしてミステリそのもの。ミステリ界に新女王の誕生を告げる、斬新なデビュー長編!CWA最優秀新人賞受賞作。
女の名はオリーヴ・マーティン、現在、無期懲役の刑に服している。母親と妹を切り刻みそれを再び人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女-だが、本当に彼女がやったのか。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作。
十年前に当主が失踪したストリーチ邸で正体不明の惨死体が発見される。はたして彼は誰なのか?そして、村人から“三人の魔女”と呼ばれる現在の当主たち…。設定は読者を欺くほど伝統的だが、展開する物語の行方は誰にも予測がつかないミステリの新女王、衝撃のデビュー作。CWA最優秀新人賞受賞作。
「ぼくは殺される」-。心理カウンセラーのエイリーンが託された少年の訴えは、単なる妄想なのか?少年を観察するうちに、彼はまぎれもないわが子ではないかと疑念を抱くエイリーン。彼女には、混乱が支配する60年代、誤って胎児を死亡させた悲惨な過去があった。現在と、過去、現実と幻想が錯綜し、読む者を果てしなきトリップに誘う注目のアシッド・サイコ・サスペンス登場。
映画祭で賑うモスクワのホテルで、4人の男が毒殺される。被害者のひとりが取材していた映画関係者たちを結ぶ1本の線とは?事件は殺人というレベルを超え、大規模な同時多発テロ計画へと発展して行く。捜査陣をあざ笑うかのように跳梁する首謀者を追うロストニコフ。彼の胸には、自身と妻だけが知るある計画が秘められていたー。好評のロストニコフ捜査官シリーズ第3弾。
わたしの名はディライラ。職業、私立探偵。その日わたしは、見知らぬホテルの一室で目をさました。ベッドには男の刺殺体が転がっている。なぜこんな羽目に陥ったのだろう?パニックをこらえつつ、わたしはその日の行動に思いを馳せた…。六か月前、眼前で殺されていった夫の記憶に悩まされながら、ひとり窮地に立ちむかう女探偵。カリフォルニアに展開する新シリーズ第一弾。
初夏。傷ついた心をたずさえて、わたしはサンタマルゲリータへ帰ってきた。だが待ちうけていたのは、暗黒街の男からの呼び出し状。覚えのないこととてあとまわしにすると、敵は実力行使で召喚に及んだ。いままたここで、何かが動きはじめているのか…?イタリアの街に、山野に、地中海に展開する熾烈なアクション、『傷だらけの挽歌』の続編登場。
突然、背中に銃が突きつけられた。今のわたしには、こういうことをされる謂れはない。幸いプロともいえない男だったから、諜報部仕込みの技で叩き伏せ、ポケットを探った。出てきたのは曰くありげな手紙が一通。意味は判じかねたが、銃を持った男を送りこむ輩をこのままににしておけない!陽光きらめくイタリアに展開する哀感のハードボイルド。
傍目に安逸をめさぼっているかに見えたマイフリート館。だが優しかった当主夫人は、ある夜、不可解な深夜の散歩に出た挙句、森の奥で殴殺されてしまう。誰が?何のために?捜査の進展とともに、館はしだいにその真の貌をあらわにしていく。そして人々の入り組んだ心理の綾の中にウェクスフォードが見いだした、ある衝撃的な事実とは…?
男はいつも、フォード・ゼファーに乗って現れた。夫の留守中、いそいそとその男を迎え入れるルイーズのことを思うと、隣りに住むスーザンの心は痛んだ。夫に愛人ができた結果、捨てられた過去をもつ彼女としては、かつての苦い経験が思い出されてならないのだ。そんな心の振幅が、やがて自らを、渦巻く詭計の中へ導こうとは夢にも思わずに…!