著者 : 押田由起
アリスがまだ魔女や妖精を信じる幼い少女だったころ、親友のエルシーが突然姿を消した。彼女の行方も誘拐犯の正体も分からぬまま、事件は迷宮入りとなる。それから十年、封じられていた魔法が今、アリスを事件の真相へと導くのだった。運命的な暗合の連鎖が不思議な世界を作り出す、傑作「不思議の国の悪意」他七編を収録。かのエラリー・クイーンも絶賛した、才気溢れる短編集。
1956年2月、ふたりの青年はペンシルヴァニア大学のキャンパスで出会った。刑事弁護士を目指すジェシーと、ジャーナリスト志望のマイク。彼らは野望に燃えていた。そして、それを実らせる術を心得てもいた。戦争と暗殺という病魔に蝕まれつつあったアメリカ。ふたりはそこで、ユダヤ社会、マフィア、政界と、あらゆる人脈を利用したー。パワーエリートの世界を活写する問題作。
次々と秘策を繰り出し、法廷を沸かせながら連勝を記録するジェシー。一方マイクはジャーナリストとしての手腕を高く評価され、ロバート・ケネディに秋波を送られるまでになる。だが彼は歴史的スクープをものした後、父の死を受けてアイルランドへと移り住む。そして現代ー。法曹界の仇敵に弾劾されたジェシーは倒産詐欺事件の被告となり、自らを弁護する戦いの舞台に立った…。
サム・レイナー、二十八歳。海軍航空基地所属の一等兵曹。妻への虐待を繰り返し、離婚訴訟のただ中にあるこの男は、十万ドルを越える金を貯めこんでいた。金の行方を探ってほしいというのが依頼の内容だったが、ある夜、そのレイナーが何者かに射殺されてしまう。疑われたのは妻。調査に乗りだしたわたしの目に、壊れた家族の肖像が見えてくる。自然体の探偵ジェリ、待望第三弾。
殺されたフィリピン人教授の未亡人を名乗る女が現れたのは、事件後四か月を経てのことだった。遺品引き渡しを強硬に求めるその女は、実直で亡妻をこよなく愛した教授にはまるでそぐわない。女の狙いははたしてどこにあるのか…。巻きこまれた父親を気づかいながらも軽やかにプロの立場を貫く女探偵ジェリの活躍。故人の足跡を辿るひたむきな探索の旅が面白い、充実の第二弾。
ベーカー街に奇妙な依頼人が訪ねてきた。年齢不詳のその男は、一年前の嵐のクリスマス・イヴ以来、甥が行方不明なのだと訴える。興味を持ったシャーロック・ホームズは現場に赴くが、そこに待っていたのはなんとも意外な事態だった…。文豪ディケンズが遺した未完の書『エドウィン・ドルードの謎』の真相に名探偵ホームズが挑む。絶妙の着想が光る、異色の贋作ホームズ譚。
好評を得た『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』につづいて気鋭の女流が贈る、正調贋作第二弾。ミュージックホールを舞台にした不可能犯罪物「ハマースミスの怪人」、若き日のホームズが潜入捜査を敢行する「ロシアの老婦人」、ハメルンの笛吹き男を名乗る人物が英国全体を人質にとる「スマトラの大鼠」など、ホームズ譚の妙趣を心ゆくまで味わえる、謎と推理の一級品。
初めはよくある事件に思えた。まだ若い主婦の、突然の失踪。夫が語るあれこれも中流核家族にはいかにもふさわしく感じられたが、調査を始めるや、問題の妻は5年間ひたすら偽りの人生を生きていたことが明らかに…。くされ縁の親友、運動不足の飼い猫、元亭主ー。そんな仲間に囲まれながら、忌わしい過去の悲劇に深入りしていく女探偵ジェリ。私立探偵小説コンテスト受賞作。
その日までルイーズは平和な毎日を送っていた。やさしい夫、まだ反抗期に手の届かない上の娘たち、そして、夜泣きの虫を発揮してはルイーズをあたふたさせる生後七カ月の息子。だが、あの謎の間借人が現れた日を境に、べては一変した…。研ぎすまされた感性と絶妙のユーモアが生み出す、たぐいまれなサスペンス。アメリカ探偵作家クラブ最優秀賞に輝く傑作、遂に登場。
今なお読者を魅了してやまない名探偵シャーロック・ホームズ。彼こそ名探偵の代名詞でありミステリ史上最大のヒーローである。本書は気鋭の英国女流がこの不世出の天才を甦らせたファン必読の傑作集。傘をとりに戻ったきり一切の消息を絶った給仕の秘密から、厳重な監視下ドイツに国家機密を流さんとする天才科学者の奇策まで、胸躍る七つの冒険を収めた贋作ホームズの決定版。
ナーシング・ホームだと?聞こえはいいが、老人用の強制収容所じゃないか。ここでおれは“キャプテン”と呼ばれている。海軍大佐だったからじゃない、警部だったのだ。それがどうだ。何十年ものあいだ社会正義のために尽してきたあげくが、子供たちにも見捨てられ、こんな老人ホームで廃物扱いとは。実は今おれの手もとには、こっそり持ちこんだ拳銃がある。おれを、老人を虐待する奴らは許せない。だからこれでおれは、おれは…。
その年のイギリスは最悪だった。政治や経済は破綻の一途をたどり、絶望的ムードが国全体を覆っていた。このままでは、ソヴイエトが介入してくるのも時間の問題だ。それだけは阻止しなくてはならない。先手を打つのだ。イギリスを武力制圧せよ!アメリカ合衆国大統領の命令が下った。かくして、イギリスを内乱状態に陥れるために、秘密工作部隊が潜入を開始した。だが、この謀略劇の裏にはさらに…。迫真の近未来サスペンス。
リンは受話器を取った。「ハーイ」「もしもし…ドーンかい?」「そうよ」相手の男がひと呼吸おいた。そして言った。「砂浜で裸で寝てるつもりになってくれないか」-誰が好きこのんでこんなことをするというの。テレフォン・セックスの仕事だなんて。でも、まともな職を見つけるまでの辛抱。一人娘のレイチェルだけには、このことを知られたくない。そのころ、ある男が彼女のすぐそばまで迫っていた。現代サイコ・サスペンスの傑作。
第一級のテロリスト、セグンダがパリに現われて不審な動きを見せているとの情報を得、スイス情報部は内偵を開始した。浮かびあがってきたのは、主要なテロ・グループを一堂に集め、統一を計らせようとするKGBの謀略。ヴェークミュラー課長は、会議の場に少数精鋭の奇襲部隊を送りこんでテロリスト撲滅に賭けたが、会議が開かれるのは灼熱の太陽輝くサハラ砂漠、しかもプロの傭兵たちによる鉄璧の警戒態勢が敷かれていた…!