著者 : 斉藤博昭
リリーのすべてリリーのすべて
1920年代、デンマーク。画家のアイナー・ヴェイナーは、同じく画家である妻グレタに頼まれて女性モデルの代理を務めたことをきっかけに自らの中に潜む“女性”に気づいていく。やがて“リリー”という女性として生きることを決意するアイナーを妻は理解し、献身的に支え、愛し続けるが…。世界初の性別適合手術に成功した人物の実話を基にした、切ない愛の物語。トム・フーパー監督、エディ・レッドメイン主演映画原作。
世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語
「お願いがあるの」あの日の午後、グレタが寝室から声をかけなかったら…。すべては、バルト海から風が吹きつける、あの寒い午後に始まった。絵のモデルとなる女性が来られなくなり、妻が思いついたのは、夫に女性用のストッキングと靴を穿いてもらうことだった。夫は承諾するが、それが20世紀初めの、もっとも激しく奇妙な愛の物語の始まりになるとは知る由もなかった。デンマーク人の画家アイナー・ウェゲナーと、やはり画家で、アメリカ生まれの妻グレタ。事実に基づいて書かれた本作は「愛する人の変化に、どう対処するか?」を問いかけてくる。グレタが授けたリリーという名前で、女性の服を着るようになっていくアイナー。ゲームのような夫婦関係は、やがてそれぞれに大きな決断を迫るのだった。リリーをモデルにしたおかげで、グレタの絵の才能は花開く。フランス人の美術商が彼女の絵に目を付け、夫婦はパリへ移り住むが、ふたつの大戦に挟まれたパリの自由な空気はリリーをさらに解放し、アイナーの存在は徐々に記憶のなかに消されていく。ドレスデン婦人科病院での、ある外科手術を知ったグレタの勧めで、アイナーは、永遠に「リリー」になるべくドイツへと旅立つが…。
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