著者 : 斎藤純
そのフレーズを耳にした瞬間、誰もが息をのんだ。リオの片隅で歌う黒人少年=ルーシオ。奇跡の歌声を、ビデオが捉えていた。新人女性ディレクターは、歴戦の音の狩人たちと闘いつつ、少年のデビューに向けて動く。だが、ルーシオは忽然と足跡を絶った…。次第に明らかになる音楽業界の闇。すべての答えは、セナの待つF1グランプリに。ノンストップ・ミュージック・サスペンス。
俺は葉山恋太郎。二十六歳。オートバイと女をこよなく愛する男だ。だが、近寄ってくるのは中年女や誰も相手にしないような肥満体の女ばかり。時々相手をしてやるのが俺のビジネスだ。ある日レース中、警察に追いつめられた俺を助けてくれた謎の老人。奴の話を聞いてビックリ。この俺が十億の遺産の相続人だって!?俺はその爺さんと愛車V-MAXにまたがり、ご先祖様の出身地・岩手へと向かったが…。
あの黒人少年の歌声には百万ドルの価値がある-。ふと耳にしたプロモーションビデオから、少年を日本でデビューさせようと目論んだ若き女性ディレクター。その日から、音の狩人の群れに立ちまじっての孤軍奮闘がはじまる。F1のエンジン音かまびすしいモナコでのラストまで、息つく暇なく読ませてくれる驚異の音楽サスペンス。
70年代に作られたという“幻の映画”が、蒸発した夫の部屋から出てきたので見てくれないかと、人妻から誘われたぼくは、一夜を共にしてしまった。それが彼女との最後になった。ぼくは幻のフィルムを作った男たちを、女子大生・初美と共にバイクを駆って探し回り、一人の美女を巡る深い疑惑の渕に飛び込んだ。
その人妻はバーボンに似ていた。甘さに気を許すと手ひどい目に合う。彼女は涙を見せたあとで死んだ。女子大生はバイクの風切り音を思わせる。興奮のるつぼの中で、勝手に歌を口ずさむ。彼女は一緒に探偵をしてくれた。男は60年代の映画だ。泣き虫のくせに他人を傷つける。そいつは殺人者という名前だった。-ウィットあふれる会話と繊細な構成、哀しいジャズの旋律に乗せて、新感覚ハードボイルドの世界が拓ける!