著者 : 日暮雅通
1889年夏。元オペラ歌手のアイリーンと親友のペネロピーは、パリで毒殺されかけた男性を介抱する。偶然にも、彼クウェンティンはペネロピーの古い知人だった。彼は身の危険をかえりみず、かつてアフガニスタンの激戦地で自分を助けてくれた軍医を探しだし、その命をねらう敵から守ろうとしていた。軍医の名はワトスンー。アイリーンたちは名探偵ホームズとまたもや相まみえる!
アフガニスタン帰りの男クウェンティンは誰にも告げず姿を消した。手段を選ばず襲ってくる神出鬼没の敵を、旧知のペネロピーやアイリーン夫妻から遠ざけるためだ。ペネロピーたちは彼を追い、パリからロンドンへ渡る。自分がねらわれているとはつゆ知らないワトスン博士を守るため、名探偵ホームズの力を利用しようとするのだが、折しもホームズはある事件の極秘捜査中だった…。
1889年冬。とある名家のマダムと知り合ったホームズとワトスンは、一族の夕食会に招かれた。だが最後の料理皿の銀蓋を開けると、そこに人間の切断頭部が…。事件調査のため、一族が暮らすスコットランドの古城にすぐさま向かった二人。その城は幽霊が出ると噂されていて、何年も前から不審死が相次いでいるようでー。すべての謎はやがて予想外の結末へ!本格パスティーシュ第2弾。
月の無数の破片が落下する“ハード・レイン”により地球が滅亡し、それから5000年の月日がたった。その直前に宇宙に脱出して生き残った人類、「七人のイヴ」の子孫たちは、月が元あった軌道上に無数のハビタットや宇宙エレベーターを建設して、七つの人種による新しい文明を築きあげていた。一方、いったんは不毛の地と化した地球では、ふたたび地上で暮らすために、テラフォーミングが進められていた。だが、思いがけない発見により、“ブルー”と“レッド”二陣営に分かれた地球の覇権をめぐる戦いへと発展していく…。全滅の危機に立ち向かう人類の未来を描き上げたSF巨篇、堂々の完結へ!
月が七つに分裂した日から二年がたった。無数の月の破片の落下“ハード・レイン”による地球滅亡の危機に、人類という種を残すため、宇宙ステーションを核とした“クラウド・アーク”が急造され、選ばれた若者たちと生活に必要な物資、そして数々の人類の遺産が送りこまれている。そんななか予測どおり“ハード・レイン”が始まった。地球は死の世界と化し、人類の生き残りは“クラウド・アーク”の千五百人だけとなった。だが、彼らは思想の違いから二つの派閥に分裂していく。そこに彗星に向かった探査チームの宇宙船が巨大な氷塊とともに帰還するがー近未来宇宙開発ハードSF大作、第二弾!
突如、月が七つに分裂した!原因は不明だったが、その月のかけらがやがて指数関数的に衝突を繰り返し、二年後には無数の隕石となって地球に落ちると判明する。その結果、数千年続く灼熱地獄“ハード・レイン”が起こり、地球上のすべてが不毛の地となるだろう、と。人類という種を残すため人々は宇宙に活路を求め、各国政府が協調して、国際宇宙ステーションを核とした「宇宙の箱舟」をつくることになるが…。新作が次々とベストセラーリスト入りする、アメリカ・エンターテインメント界を代表する作家ニール・スティーヴンスンの、人類の未来を俯瞰する破滅パニック大作、開幕!
ブロードウェイで男たちを手玉に取りつづけてきた美しきマーガレット・オウデルが、密室で無残に殺害される。カナリアというあだ名のもと女優殺人事件の容疑者は、わずかに四人。矛盾だらけで不可解きわまりない犯罪に挑むのは、名探偵ファイロ・ヴァンス。彼は独創的な推理手法で、犯人を突き止めようとするがー。著者がその名声を確固たらしめたシリーズ第二弾、新訳で登場!
エラリイ・クイーンの名のもとに集められたホームズ・パスティーシュの古典的傑作集にさまざまな事情から掲載されなかった“伝説”の作品たち。
すっかり新しい広告のかたちのひとつとして定着した“爆発”-ロンドンにあらわれた新しい破壊芸術ーを描く表題作。ある夜、娘と連れだってひっそりと宿を出た男が特別警戒地域コヴハイズであるものを待ち望む「コヴハイズ」。カードゲームに興じる勝負師たちのまえに突然現れた、ありえざるものをめぐる奇妙な物語「“蜂”の皇太后」。とある昼下がり、街で開催された豚の解体ショーで、豚の頭をかぶせられた男の身に降りかかった顛末を描く「祝祭のあと」…。英国SF界のトップランナーたるミエヴィルが贈る、ダークでシュールな物語28篇を収録した短篇集。
名探偵が過ごした19世紀ロンドンを、貴重な写真と絵画で歩いてみる。300点に及ぶロンドン博物館の資料をもとに編集、第一線の研究者による解説で蘇る、世界都市の実像!
鉄道事故で“死亡”した元オペラ歌手アイリーン・アドラーは、夫や親友とパリ郊外の村で静かに暮らしていた。だが、持ち前の好奇心が、ふたたび彼女を冒険と推理の旅へといざなう。花の都で起きたいくつもの事件に現れる入れ墨の謎を追って訪れたモンテカルロの地では、同じ事件を追う名探偵ホームズとの再会が待っていた…。稀代のヒロインによるヴィクトリア朝ミステリ第2弾。
証券会社の経営者ベンスンがニューヨークの自宅で射殺された事件は、有力な容疑者がいるため、解決は容易かと思われた。しかし捜査に、尋常ならざる教養と才気をもつファイロ・ヴァンスが加わり、事態は一変する。物的・状況証拠を否定するヴァンスが用いる、心理学的推理とは?巨匠のデビュー作にして、米国本格ミステリ黄金時代の幕開けを告げた記念碑的傑作、新訳で登場。
ふたつの都市国家“ベジェル”と“ウル・コーマ”は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく…。ディックーカフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。
ロンドンは、どこからともなく出現した謎の存在“イマーゴ”に幾度となく蹂躙され、無秩序状態に陥っていた。わずかに残った数千人の市民は、レジスタンスを組織し抵抗運動を続けていたが、容赦ない攻撃を繰り返すイマーゴの前になすすべもなかった…。グロテスクなイメージに彩られたローカス賞受賞の傑作「鏡」、世界の終焉を迎えつつあるロンドンを彷徨う男を描いた表題作ほか、英国SF界の旗手による全14篇を収録。
ハロウィーンの夜。映画スタジオと隣り合う墓地。夢の都。死の都。出没する死者。跳梁する怪物。秘密の地下道。謎が探偵小説作家を惑わせる。長きにわたって入手困難だった謎と怪奇の物語、待望の復刊。
第一次世界大戦直前のロンドン。セバスチャンは、シャーロック・ホームズの実子ながら、伯父マイクロフトの子として育てられた。彼は、来たる戦争によってドイツと接触をはかり莫大な利益を狙う米国実業家の秘密結社を捜査する任務を請け負う。しかし、英国政府からは一切の資格や支援は得られない、という条件付だった。鬼才フリーマントルが初めて挑んだ冒険パスティーシュの傑作。
セバスチャンは青年実業家を装って単身アメリカへと向かった。そこで米国の鉄鋼王や銀行家、ロシアの皇子などと接触。入手した情報は父シャーロックへ“ノーション”という暗号電文で送る。さらに彼は、ドイツ大使館でのレセプションに潜入することに成功。その席で、謎の積み荷が英国を経由してドイツへと運ばれる、という極秘情報を掴む。汽船の出港を阻止することは可能なのか。
「ホームズはなぜ、切り裂きジャックについてまったく言及していないのか?」-ホームズ物語の中でも最大級の疑問に、ひとつの解釈を与えたホームズ・パロディ界の名著、待望の邦訳。英推理作家協会賞を受賞したイギリスを代表する現役人気作家が、ホームズ研究者や批評家の間に強烈な反応を引き起こした問題作。
日常に普及したナノテクノロジーが、文明社会を根底から変容させた21世紀中葉。世界は、多種多様な人種・宗教・主義・嗜好の集まりからなる国家都市に細分化されていた。文化の坩堝・上海でヴィクトリア時代復興を願うフィンクル=マグロウ卿は、孫娘の教育のため、若き淑女のための絵入り初等読本の開発をナノテクノロジストのハックワースに依頼した。ナノテクの粋を集めたプライマーは、読み手を主人公とし、その境遇を“物語”に取りこみながら教育していく、究極のインタラクティヴ・ソフトだった。しかし、ハックワースが自分の娘のために不正コピーした〈プライマー〉は、ある事件をきっかけに、貧困と虐待の境遇にある少女ネルの手にわたってしまう。プライマーをめぐる複雑な思惑が渦巻くなか、そのささやかな物語によって育てられたネルは、己れの人生という大いなる物語を切り拓き、その物語の力は、やがて激動の世界そのものを変えてゆく。『ニューロマンサー』の“近未来”に『ハイペリオン』の“叙事詩”をリミックスし、デジタル仕様の世界観を華麗かつ過激に超越する、SF新紀元のパラダイムシフト。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞。