著者 : 日暮雅通
大レースの本命馬が失踪、その調教師の死体も発見されて英国中が大騒ぎとなる「名馬シルヴァー・ブレイズ」。そのほか、ホームズが探偵になろうと決心した若き日の事件「グロリア・スコット号」、兄マイクロフトが初めて登場する「ギリシャ語通訳」、宿敵モリアーティ教授と対決する「最後の事件」まで、雑誌掲載で大人気を得た12編を収録した第2短編集。
ホームズ物語は、月刊誌『ストランド』に短編が掲載されはじめてから爆発的な人気を得た。ホームズが唯一意識した女性アイリーン・アドラーの登場する「ボヘミアの醜聞」をはじめ、赤毛の男に便宜を図る不思議な団体「赤毛組合」の話、アヘン窟から話が始まる「唇のねじれた男」、ダイイングメッセージもの「まだらの紐」など、最初の短編12編を収録。第1短編集。
ハロウィーンの夜。映画スタジオと隣り合う墓地。夢の都。死の都。出没する死者。跳梁する怪物。秘密の地下道。謎が探偵小説作家を惑わせる。長きにわたって入手困難だった謎と怪奇の物語、待望の復刊。
第一次世界大戦直前のロンドン。セバスチャンは、シャーロック・ホームズの実子ながら、伯父マイクロフトの子として育てられた。彼は、来たる戦争によってドイツと接触をはかり莫大な利益を狙う米国実業家の秘密結社を捜査する任務を請け負う。しかし、英国政府からは一切の資格や支援は得られない、という条件付だった。鬼才フリーマントルが初めて挑んだ冒険パスティーシュの傑作。
セバスチャンは青年実業家を装って単身アメリカへと向かった。そこで米国の鉄鋼王や銀行家、ロシアの皇子などと接触。入手した情報は父シャーロックへ“ノーション”という暗号電文で送る。さらに彼は、ドイツ大使館でのレセプションに潜入することに成功。その席で、謎の積み荷が英国を経由してドイツへと運ばれる、という極秘情報を掴む。汽船の出港を阻止することは可能なのか。
「ホームズはなぜ、切り裂きジャックについてまったく言及していないのか?」-ホームズ物語の中でも最大級の疑問に、ひとつの解釈を与えたホームズ・パロディ界の名著、待望の邦訳。英推理作家協会賞を受賞したイギリスを代表する現役人気作家が、ホームズ研究者や批評家の間に強烈な反応を引き起こした問題作。
日常に普及したナノテクノロジーが、文明社会を根底から変容させた21世紀中葉。世界は、多種多様な人種・宗教・主義・嗜好の集まりからなる国家都市に細分化されていた。文化の坩堝・上海でヴィクトリア時代復興を願うフィンクル=マグロウ卿は、孫娘の教育のため、若き淑女のための絵入り初等読本の開発をナノテクノロジストのハックワースに依頼した。ナノテクの粋を集めたプライマーは、読み手を主人公とし、その境遇を“物語”に取りこみながら教育していく、究極のインタラクティヴ・ソフトだった。しかし、ハックワースが自分の娘のために不正コピーした〈プライマー〉は、ある事件をきっかけに、貧困と虐待の境遇にある少女ネルの手にわたってしまう。プライマーをめぐる複雑な思惑が渦巻くなか、そのささやかな物語によって育てられたネルは、己れの人生という大いなる物語を切り拓き、その物語の力は、やがて激動の世界そのものを変えてゆく。『ニューロマンサー』の“近未来”に『ハイペリオン』の“叙事詩”をリミックスし、デジタル仕様の世界観を華麗かつ過激に超越する、SF新紀元のパラダイムシフト。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞。
肥満し醜い気弱なレナード。だが彼は周期的に「風の吟遊詩人」へと変性し、浄化の神となって人を殺す。天才的ハッカーの腕前でセキュリティを打ち破ってどこにでも侵入しては女性を惨殺し死体を切断する。犯罪プロファイラーのカレンと捜査官のジョンは偶然、インターネットでレナードの秘密のチャットルームをのぞいてしまう。急きょ追跡を始めるが、レナードも彼らの侵入に気づき、迎え撃とうとしていた。
パリの下町で怪しげな老人からモジリアーニの幻の絵の存在を聞き出した女子学生ディーはイタリアへと向かった。彼女の動きを嗅ぎつけたロンドンの画商達がその跡を極秘に追う。一方、大家至上主義のロンドン画壇へ憤りを募らせる気鋭の前衛画家は友人の美術教師とともに復讐を画策する…。企みと企みが複雑に絡み合うストーリー、巧緻な仕掛け、そして意外な結末を用意した野心作。
ニュージャージー・マフィアとその仲間たちが1970年代から20年以上の歳月をかけてきた、ある壮大な陰謀。それは自分たちが牛耳れる人間を大統領にして組織暴力の取締法をつぶし、FBIを骨抜きにしようという計画だった。彼らは莫大な資金を使ってテレビ・ネットワークを買収。無名の州知事を抱き込んで、立候補させる。何も知らずに選挙ドキュメンタリーの製作に加わったプロデューサーのライアン・ボルトは、ホワイトハウス乗っ取りを阻止すべく、マフィアに闘いを挑む-。
午前六時。ロンドンの長く熱い一日が始まったー。甘美な情事の余韻を楽しむ閣僚を襲う突然の恐喝劇。油田採掘権の落礼をめぐって画策される企業買収。そして廃棄に回される古紙幣を狙った現金強奪。夕刊紙〈イブニング・ポスト〉の編集スタッフが綿密な取材をつづけるなか、それぞれの事件は意外な方向へ…。