著者 : 末延弘子
私は見つけた。 自分たちのしたいことをした女たちをーー。 四十代、独身、子なしの女性作家は、 十九・二十世紀の探検家やルネサンス期の画家ら、理想の女たちを追い求めて、 アフリカ、イタリア、日本を旅する。 『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』に続く長編紀行エッセイ。 カレン・ブリクセン、イザベラ・バード、 ネリー・ブライ、ラヴィニア・フォンターナ、 アルテミジア・ジェンティレスキ、草間彌生ーー。 賢明で勇敢、そして情熱溢れる女たちの生涯を辿りながら、 女性が生きることの本質に迫る。 「私はM。四十三歳。 夜に女たちを思って何年も経つ ーーセックスのこととはなんら関係はない。 人生が、恋愛が、置かれた状況がつまらなくて、 恐ろしい悪夢が永遠に終わらないように感じられると、 私は眠れずに夜に女たちを思ってきた。 そうした夜は、歴史上の女たちに 目に見えないボディーガードや守護聖人になってもらって、 私を前へ引っ張ってもらう。」(本文より) 【目次】 I 夜の女たち:告白 第一部 アフリカ II 白い霧、冬ーー夏 キリマンジャロ行きの飛行機に乗り、怖くなる カレン・ブリクセン III アフリカ、五月 カレンから勇気をもらうため、そしてサバンナへたどり着くため、アフリカへいく 第二部 探検家たち IV カッリオーーヴィヒティ、夏 ヴィヒティの屋根裏部屋で女性探検家たちを見つけて、世界をまわる イザベラ・バード イーダ・プファイファー メアリー・キングスリー V 京都、九月 鬱改善旅行で日本へいく(またも大荷物で) アレクサンドラ・ダヴィッド゠ネール ネリー・ブライ 荷造り下手な人top3 第三部 芸術家たち VI フィレンツェ、十一月 これといった理由もなくフィレンツェへいって、ウフィツィの女たちについて書くことになる ソフォニスバ・アングイッソラ ラヴィニア・フォンターナ アルテミジア・ジェンティレスキ VII カッリオーーマッツァーノ、冬ーー春 書く暇もないほど楽しいアーティスト・イン・レジデンスへいく VIII ローマーーボローニャーーフィレンツェ再訪 IX ノルマンディー、秋 大西洋岸で私の夜の女たちを思い、メリーゴーラウンドのキリンに乗る 草間彌生 X 魔の山 謝辞 訳者あとがき 参考文献
ある晩、血にまみれた少女が織の家の敷地内で発見された。舌を切られた少女の手の平に彫られていたのは、織り子エリアナの名だった。彼女の素性と入れ墨のことを探るうちに、エリアナは町の背後に見えない組織の力がうごめいていることに気づく。洪水が島を何度も襲い、未知の病によって動植物や島民に異変が起こり始め、織り子たちが織り上げた道はゆっくりと沈んでいく。やがてエリアナは、糸が結びあい絡みあうような島の過去と現在に、自身の運命も編みこまれていることを知る。織り子たちの糸の壁ーもしくは、島で固く禁じられている夢のなかにいるかのように。