著者 : 松下隆一
侠侠
元は名うての博奕打ち、今は江戸は本所でさびれた蕎麦屋を営む銀平を、不治の病が襲った。死を前に、残された時間をいかに生きるべきか問い続ける銀平のもとへ、かつての自分を彷彿とさせる青年・清太が転がり込んだ。銀平は、清太や店を訪れる客らとの交流に、次第に残り僅かな人生を前向きにとらえるようになっていく。だが、再会を果たした元妻を襲った悲劇、さらに信頼していた清太の裏切りが、銀平の生きる気力を奪ってしまう。そして、逃れられない過去の因業が忍び寄り…。貧しさと業に苦しみながらも、希望と義理人情に賭けた人々の心揺さぶる人生賛歌。
春を待つ春を待つ
愛する息子を喪い、未来をなくした夫婦は悲しみの果てに離別。平和だった家族は崩壊した。それから数年を経た命日の前日、夫は過去を忘れるために、息子の骨壼を抱え、心が凍てつき暗い家に引きこもる妻を訪ねる。だがその途上、夫は実の両親を亡くした少年と出会い、妻の家に一緒に泊まることに。その日から心に仄かな灯が生まれた…。
ゲンさんとソウさんゲンさんとソウさん
江戸の片隅。捨て子のゲンさんは生きる意味すら知らない物乞い。御家人だったソウさんは視力を失ったことで妻娘と離別、過去を捨てた按摩。二人は掌に画を描き合うことで心を通わせていく暮らしの中、赤ん坊を拾う。一心にその娘を育てる日々の中で見出した希望の光とその行方…。第一回京都文学賞受賞後書下し第一作!
羅城門に啼く羅城門に啼く
疫病が猛威をふるい、死臭でむせかえる平安朝の洛中ー一生消えぬ傷を負い、人と世を呪詛しながらしかし、イチは変わりかけていた。空也上人、命拾い、救った命、身寄りをなくした身重のおなご…。NHKドラマ『雲霧仁左衛門』ほか執筆。着実にキャリアを重ねた脚本家が満を持して挑み、心血を注いだ長篇小説。京都文学賞受賞作。
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