著者 : 松本みどり
古びた二階建ての建物で、開業医を始めたサックス。いままで医師のいない村だったプライの住民たちは、まだ若く独身の彼を、最初は好奇の目で見る。どうせ、すぐ町に転居してしまうのさ。子供が泣きやまないんです…大したことはないと思うんですが、熱が…病気や怪我や老いは待ってくれない。いつしか待合室は満員になり、人々は熱心に噂を交換する。友達もいないのかな…本屋で見掛けた…食生活がみすぼらしい…でも、いい人みたいだよ…時間外でも、往診でも、ほかの医者の患者でも、常に患者と正面から向き合う医師の日々。フランスで、文芸書としては異例の60万部を売り上げ、世界中で反響を呼んだ話題作。
敬虔なイスラム教徒のアリと、侯爵家の娘でキリスト教徒の美しいニノは、愛し合っていた。しかし、異なる宗教と異なる民族という東西2つの世界に引き裂かれ、越えなければならない深い断絶ゆえに、本書は恋愛小説以上の高貴で美しい物語になった。カスピ海沿岸の古都バクーを舞台に繰り広げられる幸福と絶望、第1次大戦とロシア革命前夜の新興小国の悲劇を描いたこの小説は、1937年にウィーンで刊行されベストセラーになって以来、数奇な運命をたどることになる。そして2000年、2度目の奇跡の復活を遂げた本書は、ニューヨーク・タイムズ紙など多くのメディアから最高級の讃辞で迎えられた。
パックスとローザー人種も育ちも容貌も、すべてが対照的な二人の女性裁判長の友情と野望、そして恋の葛藤。パックスが審理する養育権訴訟は、同性愛・エイズ問題もからんで全米を揺るがす事件へと発展する。息づまる展開の法廷ドラマと心を濡らすロマンス。女たちは苦悩を越えて、どう決断を下すのか。
もう40年以上まえの話になる。わたしがまだ12歳だった1948年の夏、モンタナ州の小さな町で、一人のインディアン女性が死んだ。彼女の名前はマリー。わたしは、彼女を愛していた…。12歳のデイヴィッドは、どちらかといえば内向的な少年だった。一年じゅう風のやまないモンタナの草原や川を、一人で歩きまわるのが好きだった。ある日のこと、デイヴィッドの家で家政婦として働くマリーが、高熱を出して寝込んでしまう。それが「事件」の発端だった。町の保安官をしているデイヴィッドの父は、自分の兄で医者のフランクを呼ぼうとするが、マリーはそれをかたくなに拒む。フランクは診療にかこつけて、インディアン女性に性的ないたずらを繰り返しているというのだ。動揺したデイヴィッドの父は、保安官として兄の行状を調べはじめるが、そんな矢先、マリーが突然の死を遂げてしまう…。少年の心に深い傷を残した事件を、静謐で透明感あふれる文体と瑞々しい感性で描き出し、読む者の胸に深い感動を刻む、珠玉のアメリカ文学。
その男は合衆国上院議員、将来の大統領とまで目されていた。だが彼には宿敵がいる。通称〈ドラゴンマン〉、国際的な企業家だ。しかもこの二人は恐るべきパワーを秘めた超能力者でもあった。やがてある日、一人の少女が彼らの前に現われた。史上最強の超能力少女。彼女を手に入れれば、地上の王となることができるのだ。ついに世界を二分する争奪戦が始まった。そして、愛する娘を守るため父親もまた闘いの渦中へ…。大型スリラー。
酔っぱらい運転のあげく一人の黒人を轢き殺した少年。しかも、彼の父親は郡裁判所判事だった。さっそく保安官が事件の揉み消しに動く。そうやって彼らは、長いあいだ司法界を私物化してきたのだ。だが、若き新任検察官ジョシュアがそれを許すはずはなかった。司法の腐敗を暴く闘いは熾烈な妨害に行手を阻まれ、ついには殺人が…。そしてジョシュアを襲った悲劇とは。アメリカン・ミステリ賞受賞作家がおくる感動の法廷ドラマ。