著者 : 松本昇
見えない人間(上)見えない人間(上)
町の有力者の集まりでバトルロイヤルに参加させられ、演説を行なった代償に、黒人大学の奨学金を貰った“僕”は、北部出身の白人理事を旧奴隷地区へ案内するという失敗を犯して大学を追い出されてしまう。学費を稼ぐためニューヨークへやってきたが、学長の紹介状は役に立たず、ようやく採用されたペンキ工場ではさらなる災難が…。地下の穴ぐらに住み、不可視の存在となった黒人青年の遍歴を描いた20世紀アメリカ文学の名作。全米図書賞受賞。
見えない人間(下)見えない人間(下)
ハーレム地区で立ち退き騒動に遭遇し、住人のために弁舌をふるった“僕”は、演説の才を見込まれて民衆運動を組織するブラザーフッド協会に勧誘される。集会の演説で注目を集め、やがてハーレム地区の代表に任命されるが、街には過激な民族主義者たち、協会内部にも彼を敵視する者がいて…。社会の周縁に追いやられ、“見えない人間”となった黒人たちが置かれた状況を描いて現在の世界にも通じる普遍性をもつ、20世紀アメリカ文学を代表する名作。
マグノリアの花マグノリアの花
ハーストンは現代の多くの作家たちにインスピレーションを与えた作家でありかつ文化人類学者。アフリカ系アメリカ人女性としての精神や物語の手法は、多くの作家が受け継ぎ、作品に活かされた。彼女には長編『彼らの目は神を見ていた』があるが、その魅力に手軽に触れることができるのが、ここに集めた短編である。表題の「マグノリアの花」は、川が語るという形式をとった民話のようなつくりで、冒頭から詩的で絵のような情景に引きこまれ、人物描写も戯画的な部分がある。しかし父娘の衝突や民族を取り巻く複雑な感情の描写、情感の把握の確かさ、そして民族の歴史をふまえた作家の意識が見られ、たんなる民話とはかたづけることができない。
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