著者 : 林譲治
六世紀、南北朝時代の中国に稀代の梟雄が誕生した。北朝・南朝の双方で反乱を起こし、自身が巻き起こした混沌の中で、前代未聞の称号「宇宙大将軍」を名乗った男、侯景である。 侯景の知名度は高いとはいえない。しかしその人生、その時代はいわば「ネタの宝庫」だ。ではそれらを種に物語を書いたら、どのような実が結ぶだろうかーー。 本書には、宇宙大将軍侯景をインスピレーションの種として、15名の作家が銘々に紡いだ15篇の物語が収録されている。 「アンソロジーを編むにあたっては、侯景SFというテーマがあまりにも狭いため、似たような作品ばかりになるのではないかと心配した。しかし、ふたを開ければとんでもない。極狭のテーマに対し、かくも多種多様な作品が寄せられたのである」(編者解説より) 予備知識はいらない。読者のなかに、異形の怪物として侯景が立ち上がるかもしれないが、責任はとれない。ご注意を。 序 藤吉亮平 十三不塔 太清元年のフードトラック 林譲治 軍師の箱 木海(大恵和実訳) 井戸 田場狩 徳音 宮園ありあ 馬駆林外白 蓮開水上白 武石勝義 宇宙大将軍、名乗るなかれ 楊楓(大恵和実訳) 昇天六記 波間丿乀斎 梁は燃えているか 勝山海百合 偽帝のしおから 大野城 アムリタ 立原透耶 孤 舟 梁清散(大恵和実訳) 金光人日 猿場つかさ 画牌する叛乱者 陸秋槎(大恵和実訳) 法身は滅しない 長谷川京 エクストリーム・グリッチ 編者解説(大恵和実) 「侯景?」から「侯景!」へ
ミッドウェー海戦により大型正規空母を失い、劣勢となりつつある日本は、ガダルカナル島の攻略を決行するも奇襲作戦自体は失敗に終わり、米軍飛行場の無力化には成功するものの、一方で米軍も日本の輸送部隊を襲撃し、ガ島をめぐる攻防戦は、日本の撤退という形で終結する。 しかし、ここが歴史の転換点となった……。国力の限界を痛感した日本は、陸海軍が手を取り合い戦線を縮小させるかたわら、秘密兵器の開発に取り組む。それは、噴進弾の原理を利用し、爆発により敵の攻撃を相殺する特殊な装甲……爆裂装甲を施した空母艦隊であった。 ふたたび戦場となったガダルカナル島近海に、満をじして日本の逆襲の狼煙が上がる。
いまだ激戦が続く南洋珊瑚海。戦艦榛名を撃沈した米艦隊は引き続き他の標的を狙うが、秘密兵器とも言える戦艦金剛の対空攻撃により、航空部隊に多大な被害を被る。多くの戦艦と空母二隻を撃破し、米海軍の戦力を大幅に削った連合艦隊は、いよいよ米豪遮断作戦の一歩として、ガダルカナル島基地の建設を目論む。 だが一方の米海軍も、迫りくる日本を迎え撃つべく、ガダルカナルを要衝とすべく動き始めていた。くしくも同じ島を奪い合うこととなった日米両軍……そんな矢先、帝国海軍の切り札とも言える『大和』『武蔵』を擁する原子力艦隊が出撃していく。 果たして、日米戦の運命を決する南洋の要衝争奪戦の行方はいかに!?
原子力を用いて、重装甲や高速化など驚異的な進歩を遂げた戦艦大和。帝国海軍はその技術を活かし、同型艦である戦艦武蔵を竣工させる。さらに零戦改の開発や電探の実戦装備、対空兵器を強化し、バリ島攻略のため武蔵を中心とした異色の艦隊を出撃させる。 これに対し、日本側に空母無しと判断したABDA艦隊指揮官ドールマン少将は、勝利を確信し攻撃隊を出すが、そこに待ち受けていたのは、帝国海軍の秘密兵器であった。確実に覇権を広げつつある日本は、さらなる攻撃目標をニューカレドニア島ヌーメアと定め、米豪遮断作戦を遂行すべく戦艦大和と戦艦武蔵の新鋭原子力戦艦部隊を派遣するのであったが……。
昭和初期、世界情勢の緊迫感が高まるなか、海軍技術者の吉田は軍艦の動力として原子力を利用することを思いつく。 さまざまな試行錯誤の結果、試験的な原子力機関改装が行われた戦艦伊勢は、最大速度の増加、太平洋を無補給で渡りきる機動力など、艦船にとって非常に強大な力を手に入れることとなった。続いて、思わぬ副産物となった新型爆弾や、蒸気カタパルト搭載の原子力空母を造りあげた日本は、ついに本命とも言える巨大原子力戦艦「大和」を誕生させる。 戦艦の原子力機関化に端を発し、次々と新技術を会得した日本海軍は、大和率いる原子力艦隊により、大胆不敵にもハワイ真珠湾への砲撃作戦を決行するのだが……。
日本軍の機密兵器である高高度偵察機は、いまだ露見されておらず、絶大な戦果をあげていた。善戦を続ける日本に対し、米国は日本本土攻撃を開始するが、日本側は接近する空母をいち早く察知し、攻撃は失敗に終わる。 苦戦続きの米太平洋艦隊は戦略の方針転換を行い、極秘裏のうちにガダルカナル島へ航空基地を建設、ツラギ飛行艇基地を襲撃する。一転して窮地に陥ったラバウル防衛隊であったが、救援に訪れた戦艦「霧島」と装甲空母「比叡」からなる第七電撃艦隊の活躍により、からくもラバウルを死守する。ここにきて日本は、電撃艦隊を多数投入する大規模作戦……ガダルカナルとポートモレスビーの同時攻略を決意する!
先の戦闘でオーストラリアを降伏させることに成功した日本は、ジャイロ爆弾やラムジェットを搭載した新型爆撃機の「九三式陸攻乙」などを用いて快進撃を続けていた。そしてオーストラリア軍残党が抵抗を続けるラバウルへの侵略を開始し、占領することに成功する。 その頃、米太平洋艦隊は宣戦布告の遅れなどの政治的要因により、出遅れたものの、撹乱を目的としたトラック島への攻撃を敢行した。その後、日本は来たる真珠湾攻撃に向け、米艦隊の注意を逸らすべくミッドウェー島との両面同時奇襲を画策する。 暗号解析により日本の動向を察知した米艦隊の魔の手が迫るなか、熾烈を極める戦いの舞台は太平洋へと移る!!
日米戦が避けられない状況のなか、帝国海軍は苦戦する現状を打開する術を模索し、帝大航空科の大竹教授によって考案された世界初の成層圏偵察機「一四試偵察機」を連合艦隊の目として実用化することを決めた。潜水艦へのレーダー搭載も決まり、真珠湾攻撃を目前に控えていた海軍だったが、連合艦隊司令長官である山本五十六の急病により、真珠湾攻撃中止という予想外の事態に見舞われる。 真珠湾に代わり東南アジアを標的とした海軍は、一四試偵察機改め「零式陸上偵察機」を艦隊の目とし、最小単位の艦船による電撃的な攻撃を開始した!果たして連合艦隊は、この歴史的海戦に勝利することができるのか!?
ガダルカナル島上陸を果たした米海軍であったが、物資の揚陸作業の途中で、日本の駆逐艦により奇襲を受けてしまう。思わぬ妨害工作によって、島内の基地建設が進まずに苛立つ米海軍。そこへ日本海軍は追い討ちをかけるように、第七戦隊によるガダルカナル島への砲撃を開始する。潜水艦部隊が蠢動し、日米は互いに貴重な航空戦力をすり潰しながら、島をめぐる攻防戦は激化の一途をたどっていく。 そんななか、ついに改造空母と新型戦闘爆撃機を擁する第一四航空戦隊に、ガダルカナル島奪取作戦の命令が下った。残存戦力を掻き集め、南洋の覇権をかけた日米の一大決戦の結末やいかに…!?
「真珠湾攻撃はパンドラの箱を開けてしまった。 しかも残っているのは希望かどうかもわからん」──ABDA艦隊を撃退せしめた日本軍。 次なる作戦の議論はミッドウェー島攻略とハワイ占拠の間で揺れていた。 一方、欧米に遅れて電波探信儀が第一四・一五航空戦隊に新たに装備され、有用性が認められつつあった。 それでも国力差を埋めることができないまま、日本は米豪遮断作戦を開始する。 最終目標は敵艦隊壊滅。ニューギニアの要塞化を企図してまずはポートモレスビー攻略へと動き出す。 日米互いに電探(レーダー)を駆使する攻防のなか、 囮と思われた第一四航空戦隊に、思わぬ米戦艦部隊との戦いが訪れるのだが……。
昭和12年、日本海軍は世界最大の大型戦艦建造を起工する。 その一方、海軍軍縮条約をかいくぐるため、 有事の際に商船を短期間で戦力化する商船改造空母構想も練られていた。 しかし雷撃機も搭載できず、収容できる機数も少ないなど大きな制約が課せられていた。 そうした中、艦上戦闘機を必要に応じて爆装し急降下爆撃機とする方法を考案。 さらに航空魚雷までも搭載する改造まで開発された。 こうして昭和16年12月、日本海軍は新たな戦力を手にした小型改造空母「雪鷹」を完成させ、 マレー半島侵攻作戦を実行に移す。 日本海軍の進撃に英海軍が立ち塞がるも、新生戦闘爆撃機が襲い掛かる!
日本海軍はガダルカナル島の米航空基地を壊滅させるため、戦艦大和による巨弾砲撃を実施。奇襲攻撃は見事成功するが、極秘裏に造られていたマラバ泊地を見逃してしまう。そんな中、同泊地に一機のB17爆撃機が着陸する。一方、ガ島攻撃後、ムンダに向かう米艦隊の情報をつかんだ日本軍は、同島に戦艦大和、そして水上機母艦瑞穂を急行させるのだが、ガ島方面から飛来したB17爆撃機により水上母艦瑞穂が沈没してしまう。「ガ島の飛行場はまだ生きている」。そう考えた日本軍は潜水艦による偵察を徹底的に行い、ついにマラバ泊地を発見。ガ島攻撃部隊を特別編成し出撃するのだが…。
昭和17年8月末、日本海軍はポートモレスビーの占領に成功する。しかし、オーストラリア軍は同島の重要性を理解しており、インフラを破壊するという焦土作戦を実行していた。そんな中、ラバウルとトラック島も同時期に占領していた日本軍は、ソロモン海で無線電話の電波をキャッチする。同海域の制海権を完全には掌握していなかった日本軍は、米軍の意図をつかみかねていた。そこで偵察機を飛ばし、ガ島北方に秘かに造られている米航空基地を発見。ただちに攻撃を仕掛けるのだった。米軍の陽動作戦に惑わされる日本海軍。巨大戦艦「大和」が、ガ島攻略のため進撃するのだが…。
昭和17年6月、ミッドウェー島に向け出撃した連合艦隊第一航空艦隊は、サンド島米軍基地爆撃に成功するも、米空母部隊に発見されてしまう。その報せを開いた山本五十六大将は、第一航空艦隊援護のため、戦艦「大和」を本隊から離し急進させる。ところが、不沈戦艦といわれた「大和」は、B17爆撃機の先制攻撃、さらに米空母部隊攻撃機による集中爆撃を受け、戦線離脱。作戦は中止に追い込まれた。一方、ミッドウェー島防衛を果たした米太平洋艦隊は、一気に攻勢に出るため、ソロモン方面に主軸を移動。ガダルカナル島に航空基地を建設し、ラバウル攻略作戦を実行に移そうとするのだが…。
ニューギニアにおける航空基地争奪戦は、一進一退の攻防が続いたが、日本軍はブナとソプタ、ドボデュラの基地死守に成功する。対する米軍は、輸送機用の滑走路を持つ拠点・バークベースを建設し、ブナ地区からの日本軍一掃を試みる新たな作戦を実行に移すのであった。戦略上、ポートモレスビーの無力化を図る日本軍に対し、劣勢に立たされた米海軍は、何とかニューギニア島の日本軍の戦力を削るべく、要衝・ガダルカナル島攻略作戦を打ち立てるのだった…。日米軍の思惑が交差する中、ついに井上成美率いる戦艦部隊と、スプルーアンス率いる空母部隊が、珊瑚海沖で激突する!
19世紀末、ドイツがニューギニアの南半分の植民地化を宣言し、ドイツ領のアルベルト・ハーフェンを建設。その港湾都市をオーストラリアがイギリスの支援を受け、ポートモレスビーとして自分たちのものにしようと試みるが失敗に終わる。第一次世界大戦時、ドイツ海軍に翻弄される英海軍を支援するべく、帝国海軍は装甲巡洋艦磐手をニューギニアへ派遣。磐手の決死の奮闘もあり、アルベルト・ハーフェンは日本の管理下で磐手市と呼ばれることになった…。1942年5月、連合国軍はポートモレスビー(磐手市)を奪還するため、一大作戦を発動する!
軍縮条約の期限後、帝国海軍の軍備拡張計画の目玉は新型戦艦であった。そして新型戦艦の建造と同時に、水中を20ノットで潜航する新型高速潜水艦と潜水母艦の建造も決定された。連合艦隊は真珠湾攻撃に成功。昭和17年1月、新型潜水艦・伊201型と共にボルネオ島沖で初陣を迎えた戦艦大和は英戦艦を沈める。米豪を遮断するため、ポートモレスビー封鎖を目論む連合艦隊は伊号第201潜水艦の活躍もあり、米空母ヨークタウンを撃沈した。反撃を期す米軍は、フレッチャー艦隊に日本軍の一大拠点ラバウルへの奇襲攻撃を命じる…。
昭和17年、第一航空艦隊はミッドウェー海戦により大型正規空母三隻を失った。戦力が半減した日本海軍は根本的な戦略変更に迫られ、空母に代わる航空基地を島嶼などに建設する「電撃設営隊」を新編。機械化した設営隊を高速船に乗せ、二ヶ月以内に完成させる任務を負った。そんな中、米太平洋艦隊はガ島周辺での日本海軍の動きを不審に思い、潜水艦バラクーダを偵察に向かわせたが、あえなく撃沈。基地建設が進んでいると考えたニミッツ司令官は特殊部隊を送り込み、日本軍のレーダー施設破壊を実施する。作戦成功の一報を手にしたニミッツは、空母サラトガから二〇機の戦爆連合を出撃させるのだが…。戦記シミュレーション・シリーズ。