著者 : 柘植由紀美
スモッグの雲スモッグの雲
「スモッグだ!」クラウディアに叫んだ。「あれが見える?スモッグの雲だよ!」だが彼女は、…何かに気をとられていて、鳥のひと群れが、飛ぶのを見ていた。そして私はといえば…。存在の仕方が異なる五人の副次的人物との関わりから描かれる「私」という人物像。樹上を軽やかに渡り歩く「ペンのリス」カルヴィーノの1950年代の模索がここにもある。他に掌篇四篇併載。
サトコと里子サトコと里子
「行為のスタイル」が「存在のスタイル」でもある世界をめざして。日本にいるサトコは職場での軋轢にもがき、イタリアを旅する里子はトリノという文学の磁場で模索する。二つの連作と屋根裏部屋の「私」の呟きが交錯する短篇集。
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