著者 : 柴田勝家
昭和2年。稀代の博物学者である南方熊楠のもとへ、超心理学者の福来友吉が訪れる。福来の誘いで学者たちの秘密団体「昭和考幽学会」へと加わった熊楠は、そこで新天皇即位の記念行事のため思考する自動人形を作ることに。粘菌コンピュータにより完成したその少女は天皇機関と名付けられるがー時代を築いた名士たちの知と因果が二・二六の帝都大混乱へと導かれていく、夢と現実の交わる日本を描いた一大昭和伝奇ロマン。
陰陽師・御陵清太郎と刑事・音名井高潔は対心霊の最強バディ!霊障事件を調べるため御陵が女子校に潜入捜査。流行するおまじない「クビナシ様」は、ゲームアプリを利用するものだった。異色の呪術に御陵は興味を持つが「クビナシ様」は暴走を続けー。密室での呪殺に隠された、悲しい恋物語の結末とは。FBI仕込みの管理官・青山が現れて、二人の関係にも不穏な影が差し…!?
東北復興と科学振興のため、北上山地の地下への誘致をめざす国際リニアコライダー(ILC)。ILCとは、全長約30kmのトンネル内で電子と陽電子を衝突させてビッグバン状態を再現、宇宙の誕生や素粒子の起源について研究するための巨大加速器である。このILCが建設された近未来を舞台に、小川一水、柴田勝家、野尻抱介の3人のSF作家が、岩手と日本、物理学の新たなビジョンを紡ぐ書き下ろしアンソロジー。
1970年代カンボジア、クメール・ルージュによる不条理な殺戮の地を論理で生き抜いた少年ー第3回SFコンテスト受賞者・小川哲「ゲームの王国」300枚、電子書籍版が話題の草野原々「最後にして最初のアイドル」ほか、黒石邇守、柴田勝家、伏見完、ぼくのりりっくのぼうよみの、20代以下6作家による不世出の作家に捧げるアンソロジー第2弾。
地下アイドル・奏歌のCDが誘発する、ファンの連続自殺事件。CDの呪いの科学的解明に挑むのは、陰陽師にして心霊科学捜査官の御陵清太郎と警視庁捜査零課の刑事・音名井高潔のバディ。奏歌は自殺したアイドルに祟られているという。事件の鍵となる、人間が死後に発する精神毒素“怨素”を追って、地下アイドルの光と影に直面した御陵と音名井が導き出す「呪いの構造」とは?
生体通信によって個々人の認知や感情を人類全体で共有できる技術“自己相”が普及した未来社会。共和制アメリカ軍は、その管理を逃れる者を“難民”と呼んで弾圧していた。軍と難民の間で揺れる軍属の人類学者シズマ・サイモンは、訪れたアンデスで謎の少女と巡り合う。黄金郷から来たという彼女の出自に隠された、人類史を鮮血に染める自己相の真実とは?クラウド時代の民族学が想像力を更新する、2010年代SFの最前線。
生体受像の技術により生活のすべてを記録しいつでも己の人生を叙述できるようになった人類は、宗教や死後の世界という概念を否定していた。唯一死後の世界の概念が現存する地域であるミクロネシア経済連合体の、政治集会に招かれた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、浜辺で死出の旅のためのカヌーを独り造り続ける老人と出会う。模倣子行動学者のヨハンナ・マルムクヴィストはパラオにて、“最後の宗教”であるモデカイトの葬列に遭遇し、柩の中の少女に失った娘の姿を幻視した。ミクロネシアの潜水技師タヤは、不思議な少女の言葉に導かれ、島の有用者となっていくー様々な人々の死後の世界への想いが交錯する南洋の島々で、民を導くための壮大な実験が動き出していた…。民俗学専攻の俊英が宗教とミームの企みに挑む、第2回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。