著者 : 梶よう子
朝顔栽培が生きがいの気弱な同心・中根興三郎は、植木職人が殺された事件の探索を手伝うことになった。その直後、大地震が発生し江戸の町は大きな被害を受け、さらに付け火と思われる火事もつづいた。無関係に見えるいくつかの事件の真相を、興三郎は暴くことができるのか。松本清張賞受賞作の姉妹編。
「あなたには、もう小鳥は売りません」行方知れずの夫の帰りを待ちながら、鳥を商う店「ことり屋」を営むおけいは、突然店に現れた美しい娘が、鳥にまったく興味がないにもかかわらず、紅雀、相思鳥、十姉妹と次々ともとめていく様子を不審に思う。娘が鳥を買い続ける理由とは…?おけいの元へ持ち込まれる鳥にまつわる不思議な出来事と、その裏に隠された恋模様を描く連作時代小説。
幕末前夜の江戸。瀬戸物屋の五男坊に生まれた駿平は、百五十俵の貧乏御家人「野依家」に婿養子入りした。男五人兄弟では、この先分家を立てられる保証もなく、うまくいっても商家の婿。いっそ武士になるのも面白かろうと軽い気持ちで引き受けたものの…当主になって待っていたのは、過酷な「就職活動」だったー新米武士の駿平が武家の世界を駆けずり回って「立身出世」をこころみる!
血が嫌いで人が苦手な見習い医師の孝之助は、長屋に引き篭もり、小遣い稼ぎに富山の薬の「おまけ絵」を描く毎日。そんなある日、父が幼馴染みの藩士に斬られた。孝之助は藩の存亡を揺るがす深刻なお家騒動が起きていることを知る。家老の陰謀を国許に伝えるにはー孝之助は弱虫絵師ならではの奇策を思いついた!時代小説界に、史上最弱の新英雄、登場!
江戸の町を繁栄させるのは物が動き、銭が動くことだーいなりずしから贋金まで、物価にまつわる騒動の始末に奮闘する同心・澤本神人。家では亡くなった妹の娘・多代を男手ひとつで育ててきたが、そこに居酒屋の美人女将が現れてー物の値段に人情を吹き込む新機軸の時代ミステリー!
わけありの武家の女三人と頼りない案内人(御師)の珍道中若い女巾着切り、いわくありげな浪人者、犬を相棒にした抜け参りの子ども…いくつもの出会いが祖母の、母の、孫の人生を変えていく。心がほっとあたたまる長編時代小説。
水上草介は、薬草栽培や生薬の精製に携わる小石川御薬園同心。人並み外れた草花の知識を持つものの、のんびり屋の性格と、吹けば飛ぶような外見からか、御薬園の者たちには「水草さま」と呼ばれ親しまれている。御薬園を預かる芥川家のお転婆娘・千歳にたじたじとなりながらも、草介は、人々や植物をめぐる揉め事を穏やかに収めていく。若者の成長をみずみずしく描く、全9編の連作時代小説。
日本橋の高札場で、元盛岡藩士が切腹した。背景には、盛岡・弘前両藩の二百数十年にわたる確執があるらしい。旗本の嫡男・神木光一郎は、盛岡出身の剣豪・相馬大作と親交を深めるうち、大藩の存亡にかかわる真実を知ることとなるが…。