著者 : 森島小百合
18歳の夏、ロージーは初恋の人ガードとキスを交わした。それは体中に電流が走るほどの、甘く衝撃的な体験だった。それから3年。カラシア国大公となるガードの戴冠式に、ロージーは招待された。祝賀舞踏会で彼と久々に顔を合わせ、その腕に抱かれたとたん、抑えてきた熱い想いが溢れ出た。あろうことか身分を忘れ、彼と一夜を共にしてしまったのだ。ガードにはすでに花嫁候補もいる。私は身を引くしかない…。ところが、盗撮された二人の熱愛写真が流出してしまい、ガードは態度を翻して、ロージーに求婚した。これは愛のためでなく、国の平和のための結婚だと言って。
看護師のエミリーは、旅先で負傷したギリシアの裕福な老人に雇われ、アテネにある彼の屋敷に住みこんで世話をすることになった。老人の息子ニコは罪深いほど魅力にあふれた男性だが、父親とはいつも角突き合わせていて、優しさが感じられない。エミリーに対しても、父の財産を狙う女だと疑っている様子だ。あまりの邪推にエミリーは怒りをおぼえた。ところが落雷による停電で屋敷が真っ暗になったとき、触れ合った二人はいつしか唇を重ねていた。その瞬間、エミリーはニコのとりこになってしまった。彼の父から、息子は女性をおもちゃにする男だと言われていたのに。
「社長から、電話を取り次ぐなと言われておりますので」ギリシア大富豪クリストの秘書の返答に、エリンは愕然とした。クリストと同棲していたのに、理由も告げられずに突然捨てられ、エリンは気まずくなって、彼が所有するホテルでの仕事も辞めた。すべて忘れよう…。そう思った矢先、妊娠しているとわかったのだ。収入もないので、せめて援助を、と必死で彼の実家にも連絡したが、息子はもうすぐ結婚するから関わるなと釘を刺されたのだった…。3年後。困っていたエリンに働き口をくれた現在のボスに呼ばれ、オフィスの中へ入ると、そこにいたのはーエリンの仕事場であるホテルを買収しにやってきた、クリストだった!
内気なエミリーは、両親の取引相手であるフランス人実業家、リュックに見初められ、熱烈な求婚を受けて結婚した。だが、多忙なリュックの妻でいることは孤独だった。顔を合わせるのは、社交パーティか、ベッドの中だけ…。待望の赤ちゃんを授かったが、夫と秘書の浮気疑惑が持ち上がる。エミリーは耐えきれず、大きなおなかで屋敷を飛び出してしまう。息子が生まれてから1年が経とうとしていたとき、不意に夫が現れた。やっと見つけた妻と息子を取り戻しに来たという。リュックが所有するフランスの古城で、再び彼との生活が始まった。息子の母親でありながら夫の愛は望めず、ただベッドを温める日々が。
ヴィッキーは父親代わりにかわいがってくれた叔父の会社を救うため、ギリシアの敏腕実業家テオと、名ばかりの期限つき契約結婚をした。離婚の際には多額の金を支払うというテオの言葉を信じて。だがある夜、テオの妖しい瞳に惑わされるように、彼と結ばれてしまう。自分の行いに動揺して、ヴィッキーが思わず屋敷から逃げ出すと、怒り狂ったテオは一方的に彼女を離縁し、そのまま2年の月日が流れた。今、ヴィッキーは勇気を振り絞り、テオに会いにやってきた。恵まれない子供の慈善事業のため、どうしても約束のお金が必要なのだ。しかし、テオの無慈悲な要求が、彼女をうろたえさせる。「金が欲しければ、ぼくのベッドまで一緒に来るのが条件だ」
「わたしのおなかにあなたの赤ちゃんがいるんです」アンジーは見ず知らずの夫妻の受精卵を誤って移植されたと知って、相手の男性、ピレリ氏に電話をかけた。亡き妻の忘れ形見の誕生を待ちわびていたー彼の言葉に心揺さぶられ、アンジーは出産を決意する。無事に生まれたら赤ちゃんは返そう、と。だが、面会に現れたドミニク・ピレリは裕福な投資家で、みすぼらしい格好のアンジーを一瞥するなり、辛辣に言った。「いったいいくらほしいんだ?」うなだれるアンジーだったが、やせ細ったその姿に気づいたピレリ氏に促され、レストランへ。そして帰り道、彼の海辺の邸宅で過ごすよう提案されて…。