著者 : 森村誠一
「第一回論創ミステリ選賞」入選作品を一挙掲載!森村誠一が贈る名作短編『殺意の演出』と入賞した俊英作家が放つ傑作短編ミステリ七作品。小説家志望者への特別指南エッセイ「作家の条件」も特別収録。
元刑事の鯨井義信は、電車内で黒服の男たちに囲まれた女性を共に救った同世代の紳士たちと親交を深める。彼らは戦場カメラマンや新聞記者など、社会の第一線で戦いながらも、己の信念によって職を退いた者たちだった。現役時代の知識と技術を活かし、黒服集団の謎に迫る鯨井たち。そこには悪辣な政財界の思惑がうごめいていたー。リタイアしてなお正義の実現を目指す男たちを描く、巨匠・森村誠一、渾身の長編ミステリー。
OLの松葉絵里子は別れた恋人を忘れるため、街で声をかけてきた鮫島の誘いにのり一夜を共にした。その日、偶然轢き逃げ現場を目撃した彼らは、轢き殺された男が所持していた一億円を横獲りし、山分けする。二人は二度と会わないことを約束し別れたが、一年後、幸せな結婚生活を送る絵里子のもとに鮫島から不穏な「呼び出し」の電話がありー。日常と背中合わせの闇を描いた社会派ミステリ。棟居シリーズ新装版、第5弾。
伊賀忍者の末裔・流英次郎とその一統は、影将軍に隠密の護衛役として仕え、幕府の危機を救ってきた。その影将軍が正統の血筋に戻すことを決意すると、幕閣、大奥、御三家の思惑や野心によって抗争が勃発。英次郎一統は現治世を護るため最後の戦いへ。吉川英治文学賞受賞作「悪道」シリーズ、ついに完結!
元自衛隊レーンジャーで今は代行業を営む降矢浩季は、結婚式当日に失踪した新郎の行方を捜していた。しかし、新婦の志織が何者かに命を狙われたことから、降矢はこれがただの失踪ではないと勘づく。一方で、棟居刑事は連続老女強盗殺人事件を捜査していた。全く関係がないように思えた二つの事件の裏に、政界やカルト教団を牛耳る人物の存在が浮かび上がりー!?
一男一女に恵まれ、平凡ながらも幸せな家庭を築く石坂の生活は、愛猫の毒殺を機に大きく揺らぎ始める。娘の家出、息子の事故死、会社の倒産、離婚、火事…。人生のどん底で聞こえてきたのは亡き母の声。不思議な声に導かれて人生をリセットする方法を試すと、気づけば目の前には2年前の一家団欒がー。幸福の崩壊を阻止するため、石坂は記憶と経験を武器に奔走する。
九十を過ぎ、穏やかな余生を送っていた山鹿俊作。共に太平洋戦争を戦い抜いた仲間・青柳の突然の訪問が、彼の生活を大きく変える。志なかばにして、無念にも戦場に散った友の遺言を果たすため、山鹿は安寧な日々と訣別し、修羅の巷へ向かうのだった!
雑木林に生き埋めにされた数十匹のひよこの下から出てきた変死体は、政財界に大きな影響力を誇る大物総会屋だった。捜査の過程で棟居刑事は、夏の終わりに熱海の海でかりそめの時を過ごした六人の男女と思いがけない再会を果たすー。数奇な運命に翻弄される人間の悲劇と希望を描く感動長編。
一流商社の部長職を辞め、名門ホテルで第二の人生を送ることになった畑中教司。マラソン中に眼前で社長の犬飼が誘拐された。数日後無事に救出されたものの、犯人からホテルに対して執拗な脅迫が始まる。犬飼から特命を受けた畑中は、誘拐直前に起きたホテル従業員の転落死に着目。ホテルの裏側の極秘事項に肉薄し、真相を掴もうとするのだが…。巨大企業に巣食う悪を描く傑作長編社会派推理。
亡君の仇討ちを胸に秘めた赤穂浪士・前原伊助は、吉良家の奥女中・千尋と許されざる恋に落ちてしまう。いずれも主家を捨て、2人の思いを達成すべきかと思い悩むが、吉良邸への討ち入りは予定通り決行される。討ち入りの夜、2人は声なき声を交わして別れた。「いつの日か、自分たちの末裔が後の世に出会って、実らざる恋を達成するだろう」。時代を超え、波乱万丈の出会いと別れを繰り返す恋人たちを描いた、重層的恋愛小説。
弁護士・前原和男は憩いの喫茶店で、彼の“指定席”に桜の花びらを残して立ち去った美しい女性の面影を瞼に刻む。その後、まぼろしの女性に瓜二つの双子の妹から、新興宗教に入信して音信不通となった姉を捜してほしいと依頼された前原は、組織の暗部へと近づいていくがー。地下鉄サリン事件、9.11、東日本大震災。時代に引き裂かれた男女の宿命を、圧倒的なスケールで描き出す。作家生活50周年記念作品。
天下泰平の世にあって、一度も未来の務めを果たさぬまま隠居した元御庭番の和多田主膳。家では煙たがられ、どこにも居場所がない。そんな折、桜田門外で井伊大老が襲われた。偶然居合わせた主膳は、襲撃者から大老の首級を奪還。その腕を見込まれ、主膳は隠居した御庭番仲間とともに、将軍から直々に密命が下されるが…。老人四人組の活躍を描く痛快歴史小説!
新選組の陰供の任に就くことになった、和多田主膳ら元御庭番の四人組。瞬く間に盛名を轟かせた新選組だが、池田屋事件を境にやがて時代の流れに取り残されてゆくー。近藤勇、土方歳三に武士の魂を見た主膳らは京から会津、箱館までも同道し、共に戦い抜く。死出の花道を探すため、そして落日の幕府のため、時代と年齢に抗い、隠居老人たちが死闘を繰り広げる!
青春の幻影ともいうべき心の「女神」に似た女性に遭遇した銀行員・明石は、彼女の面影を忘れがたく、ついには拉致監禁という暴挙におよんでしまう…。しかし事態は明石のまったく予期せぬ方向へと進み、殺人事件へと二人を巻き込んでいく。よじれた愛と憎しみの闇に、棟居刑事の推理が冴えわたる!
太平洋戦争中、零戦の機長の矢橋は、若き日に机を並べた米軍の少尉、ダニエルと戦中に対峙することになる。その悲しい再会は彼らの運命を大きく揺るがし、ダニエルは戦後に行われた矢橋の葬儀にて驚くべき行動に出るのであった(「永遠のマフラー」)。作家生活50周年の記念に書き下ろされた8編に加え、デビュー初期の代表作3編を収録。社会派ミステリーの巨匠が築き上げた技巧とロマンティシズムを味わえる短編集。
交通事故で息子を失った悲しみに暮れる妻が、故郷の同窓会へ出かけていった翌日、遺体で発見された。現場には似た手口で殺害された見知らぬ男性の遺体が。同一犯の仕業か?犯行の動機は何か?それまで知りえなかった妻の交友関係をはじめ、事件の真相が徐々に明らかになっていく。ドラマ化され人気を博した棟居刑事らも活躍する、森村ミステリーの傑作長編!
新宿・歌舞伎町のラブホテルのフロントに立つ本杉高志は、奇妙な成り行きから18歳の少女理絵と同居を始めた。その頃、高志の顔見知りのエスコートクラブ嬢フェリシアが町田市内の「防空壕」で絞殺死体で発見される。死体のそばには隠岐島特産の桧扇貝の断片が落ちていた。しばらくして、理絵が姿を消し、彼女の残した手帳には「隠岐汽船乗船名簿」がはさまっていてー。棟居の推理が切ない真実を暴く、森村ミステリーの傑作。
警視庁警護課のSP、寒川の妹の加菜が突然消息を絶った。雑誌のフリー記者だった加菜は何を追っていたのか?さらには、寒川が年に一度、上高地で逢瀬を重ねていた女性も謎めいた伝言を残して消えた。二人の大切な女性の行方を捜す寒川は、連鎖する事件と謎の背後に、自らの警護対象である国土交通省大臣が存在するのを知る。
細川澄枝は銀行帰りに社員の賞与二千万円をタクシーに忘れた。次に乗った男達が、運転手を殺害しお金を強奪。翌月、澄枝は駅のホームから転落、事故死として保険金が支払われた。この調査にあたった保険会社査定員千野は、二年後、東京で起きた追突事故調査中にタクシー運転手殺害との関連に気づき…。保険査定員が現代社会の死角をついた巧妙な完全犯罪に挑む。日常に潜む恐怖を描く傑作長編推理。