著者 : 森浩美
母が他界した五年後に、独り暮らしの父が亡くなった。納骨を済ませ子供たちは実家に集まり、ぽつりぽつりと両親の想い出話をする。遺品整理を始めたところ、父は意外なものを遺していた。そして初めて父の家族に対する想いを知るのであった(「月の庭」より)。大切な人の死や老いに直面したとき、生きている今、何をすべきか…。前向きに生きるその先には、救いの光が見えてくる。“人生の閉じ方”を描く「家族小説」第八弾!
結婚や、家庭に興味がないと言い切る交際中の彼女が、僕の家族を目の当たりにしてー「しあわせやあ」。そのタワーから、願いを書いた紙ヒコーキを飛ばすと願いが叶うという。亡き母がそこに託したのはー「紙ヒコーキ飛んだ」。提示した入場券が期限切れのため、諦めて帰ろうとする母子に遊園地の男が掛けた意外なひと言「お駄賃の味」ほか、誰もが心に持つ“大切な一枚”が蘇る八つの物語を収めた短篇集。
交通事故で幼い息子を失って以来、亀裂のできた夫婦の縁を描いた「桜ひらひら」。妻が娘を残して家出。イクメンとして有名な夫だったが、実際は何もできず…「仮面パパ」。一見バラバラな8つの物語は、幼い息子を虐待して殺してしまった母親のニュースに触れる8組の人々を巡っていくー。それは“ひとごと”と言い切れるのか。それぞれの人生の一片を、温かくも鋭い眼差しで切り取り、家族の絆を描く感動の号泣小説。
たとえ互いの距離は遠くとも、心は近くにいられるのが家族。長い年月を過ごせば、色々とあるけれど、けっきょく家族の繋がりは、かくも強くしなやかでたくましい。-本書には八つの家族のかたちが。大学入学で上京する息子の素っ気なさと、見送る側の親の寂しさ。そのギャップがもどかしく、一計を案じる母親の姿を描いた「笑えよな」など、くすり、ほろりの珠玉の短篇が揃いぶみ。読むほどに“家族が見えてくる”大人気シリーズ第7弾!
交通事故で幼い息子を失い、自分を責め続ける妻。ともに悲しみを乗り越えなければならないはずの夫との間には、次第に亀裂が入っていった。一周忌の法要が終わり、夫は躊躇いながらも、妻に意外な話を切り出すが…。(第一話「桜ひらひら」)。幼い息子を虐待して殺した母親を逮捕ー残酷な事件のニュースが、人々の心に起こした波紋…。8組の家族の人生の転換期を、鮮やかな手法で描いた感動の連作集。
「母さん…」痩せて節くれだった指に触れる。まだ温もりがある。きっと魂はまだ近くにいるのだ。窓の外に目を向けると、何かの鉄塔の先端に光が点滅していた。まるでオンエアーの赤いランプが点いているようだ。「母さん、いいかい…」私はベッドに上体を載せると、母の耳元に口を近づけた(「最後のお便り」から)。最後に必ず一条の光が射し込んでくる、現代の「リアル家族短編集」第7弾!
シングルマザーに育てられた奈々は、結婚を翌年に控えた12月、実の父親が軽井沢で働いていると聞き、ひとり訪ねていく。ランタンが灯る教会で聞かされたのは意外な真実だった(「ひかりのひみつ」)。愛犬を亡くし哀しみに暮れる男、ダンナの浮気を疑う妻、義母の介護を献身的に続ける主婦…毎日を懸命に生きながら少しずつ歩みを進める人たち。大切な人との絆を丁寧に描いた、心にじんわりとしみわたる8つの家族の物語。
夫を事故で亡くした私は、小学生の息子をひとりで育てながら、傷心の日々を送っていた。寂しく迎えたクリスマスイブの夜、解約せずにいた夫の携帯電話からメールが送られてきて…(「聖夜のメール」より)。不倫を疑う妻、若い部下の扱いに戸惑う中年部長、仕事に行き詰まったキャリアウーマン…どこにでもいる普通の人たちに起こった、8つの小さな奇跡。日常の些細な出来事を丁寧に掬い取った、心あたたまる家族小説集。