著者 : 楠木誠一郎
戦国大名のはざまに生きる遠江の国人領主の一人娘に生まれ、幼くして許婚との別離に遭遇。出家を決断するが、その後も一族の男系を次々と失うと、男の名に改めて城主の道を選ぶ。お家存亡のなか、許婚の遺児を育て、乱世の覇者と見た徳川家康のもとに出仕を果たす。井伊家を再興し、大大名に押し上げた女城主の波瀾の生涯を描く歴史小説。
昭和三年、帝室博物館でメキシコから寄贈されたミイラが展示されることになったが、公開されてみると全裸の若い女性の死体と入れ替わっていた。しかも、その死体には首がなかった!この猟奇的事件に興味を持った雑誌『新青年』の編集長・横溝正史は、江戸川乱歩を訪ね独自の推理を依頼する。しぶしぶながら横溝と現場に出かけた乱歩だが、そこで今度はマネキンの頭とすり替えられた女性の首に遭遇、いや応なく事件に巻き込まれてしまうことになった…。
満洲・大連で探偵事務所「大連新生公司」を開く草壁新生。若い中国人女性が彼のもとを訪ねてきた。名前は周莉。ダンスホールの美人ダンサーだ。奉天に行くと言って出かけたきり行方不明になった恋人の李雄の捜索を依頼に来たのだ。『満洲日報』記者の五十嵐の話によると、先日起きた張作霖爆殺事件の謀略に雇われた中国人のひとりが逃走中らしい。果たして李雄なのか?草壁は、周莉の勤めるダンスホールを張り込むが、支配人の惨殺死体を発見。そこへ李雄が姿を現した!歴史小説の気鋭、トクマ・ノベルズ初登場。書下し長篇歴史ミステリー。
時は退廃の風たちこめる大正末期。帝大生、蒲生鉄哉のもとにもたらされたアルバイトは財閥の総帥、北畠家での住み込みの仕事だった。不吉な死の匂いの漂う館には、夜な夜な縄で責めさいなまれる二人の美少女と淫蕩な未亡人、そして北畠家乗っ取りを謀る後見人が棲んでいた。娘たちの調教を強いられた鉄哉はみずからの命をかけて、彼女たちを救い出そうと決心するが…。陰謀と肉欲がうごめく長く暑い夏の日々のよどんだ均衡を破ったのは毒薬と銃声の饗宴だった。
「御大喪当日、先帝の霊柩を奪い返す。聖都研究会」明治天皇の柩を奪取するという、警視総監に届けられた脅迫状。誰が何の目的のため?いかなる方法で?西園寺公望の特命を受けた徳大寺五郎は、聖都研究会の正体を暴き、犯行を阻止すべく密偵を続ける。歴史ミステリーに新たな世界を拓く、著者渾身の挑戦作。