著者 : 榊優子
ダブリン西郊のチャペリゾッド。雨の降る五月の夜更け、教会の墓地で埋葬に備えて墓穴を掘っていると、奇妙な穴が穿たれた謎の頭蓋骨が出土した。-上流階級を舞台とした陰惨な殺人事件、白い手の幽霊が出るという古びた館、死と再生の巧妙な筋立て…凶悪な殺人犯が舞い戻り、事件の意外な真相が明らかになる。ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』にモチーフを与え、ブロンテ姉妹に霊感を与えたアイルランド19世紀ゴシック・ホラー小説の大傑作、本邦初訳。
トリナの母レディー・シェリントンは、ジロンヌ伯爵と恋に落ち、結婚するという。ある日、トリナは、プロヴァンスにある伯爵の城に招待された。トリナは、その城の立派さに驚きながらも、実は、その維持のために莫大な費用がかかり金持ちの未亡人に貸すまでになっていることを知った。その未亡人は、伝説の「若返りの妙薬」が手に入るならば大金を積んでもかまわないと言っている。トリナは、自分で薬を研究し、彼女からお金を得ようと策略した。名案を思いつき、計画に着手したトリナだったが…。
マギーとチェース(「見はてぬ夢」に登場)の愛の結晶、タイの青春を描く待望のカルダーシリーズ第4弾。成長したタイは、父に反発をおぼえながらも、牧場に生きる男としての自覚を深めつつあった。しかし、都会育ちの美しい妻タラ・リイの野心と浪費にふりまわされる日々の中で、牧場育ちの素朴な娘ジェシィに、心の安らぎを求めるようになっていく。そんな折、タイの両親や妹キャスリーンまでも巻き込む恐ろしい事件が起こった。カルダー牧場の未来は、そしてタイの愛のゆくえは-。
モンタナの大牧場主の息子チェースと貧しい娘マギーとの恋はかなうはずのない夢でしかなかった。ましてマギーの父が、大牧場の牛を盗む泥棒とわかってからは…。警告にもかかわらず盗みをやめなかった父は、ある日マギーの見ている前で処刑されたが、そこには黙って見守るチェースの姿もあった。マギーの愛は一転して、激しい憎しみに変わる。カルダー大牧場への復讐を心に誓うマギーだったが、皮肉な運命の女神は、16歳の彼女にチエースとの愛の結晶を授けていた。絶大な権力を誇るカルダー家の愛と憎しみの歴史を描く、待望の大河ロマンス、カルダーシリーズ第一弾!
墓碑は断崖の突端に立っていた。銘板には、なぜか自分の名前が刻まれている。没年月日は四年もまえー。不思議な夢だった。そのあまりに生々しい感触に不安をおぼえたデイジーは、偶然知りあった私立探偵ピニャータの助けを借りて、この“失われた一日”を再現してみることにしたが…。アメリカ女流随一の鬼才が、繊細かつ精緻な心理描写を駆使して描きあげた傑作長編の登場。
犬、猫、駱駝、象、鼬、…。彼らが人を殺してしまったのには、やはりそこにいたるまでの事情というものがあったのです。最新式の養鶏場を舞台に悲劇と狂気が描かれる「総決算の日」、滑稽にしてブラックな、少年の日の物語「ハムスター対ウェブスター」など、13種類の動物たちの物語を収録。毒とユーモアの組み合わせが、ハイスミスならではの独特の妙味を生み出す傑作短編集。