著者 : 横山貞子
孤立無援の少女たちに迫る悪の影 一八四〇年代のイギリス、身寄りのない少女ルーカンは勤め先の主人に言い寄られて屋敷を逃げ出し、学校時代の親友で大富豪の娘ゾジーヌのもとへ向かった。しかし、ゾジーヌの側にも大きな境遇の変化があり、財産もなく孤立無援の二人はロンドンへ出て職を探すことに。そこでフランスの田舎に住む慈善家の牧師夫妻から一年間の期限付きで養女にしたいという申し出を受ける。異国の地に落ち着いた少女たちは、老牧師から授業を受け、菜園の世話をしながら平和な生活を送り始めるが、やがて仮面の裏側に隠された恐ろしい事実を知ってしまう。圧倒的な悪の力に立ち向かうことを決意した二人の運命は? 『アフリカの日々』の作家ディネセンが、ナチス・ドイツ占領下のデンマークで変名を用いて発表した本書は、悪の支配に抗う少女たちのロマンティックな冒険を描いて、暗い時代に生きる人々の心を虜にした。
ナチス占領下のデンマークで書かれ、作家自身がもっとも愛した短篇小説集。北欧の春は華やかに押し寄せ、美しい夏が駆け抜けると、長く厳しい冬がひたすらつづく。ナチス・ドイツ占領下にあった冬の時代、デンマークの人びとの生の営みを、大自然のなかに灯された命の輝きとして描きだす。『アフリカの日々』の作家が物語る力を存分に発揮した作品集。〈イサク・ディネセン生誕一三〇周年〉
冒険を求めて出奔、海賊になったと噂される弟が三十年ぶりに帰ってきた。その報せを聞いた二人の姉は故郷の家へ向かうが…「エルシノーアの一夜」。重層する語りの中に浮かび上がる女の謎を追う「夢みる人びと」他、全3篇。夢想と冒険、人生の神秘を描く不滅の物語集下巻。
北海沿岸を襲った大洪水の夜、崩れかけた農家に残された人々が数奇な身の上を物語る「ノルデルナイの大洪水」、若い男女の結婚話が驚くべき展開を見せる「猿」他、愛の奇蹟と運命の不思議に満ちた全4篇。『アフリカの日々』の作者が典雅な筆致で紡ぎあげた珠玉の物語集上巻。
フラナリー・オコナーは20代半ばから亡くなるまで、アメリカ南部の農園で母とともに暮らした。難病と戦いながらも、午前中の数時間を必ず執筆にあてた。南部の人々を多く描いたが、その目は全世界を見捉えていた。O・ヘンリー賞を生涯で4度受賞し、短篇の名手と賞賛される。下巻は、死後刊行の短篇集『すべて上昇するものは一点に集まる』と後期作品2点、年譜、訳者あとがきを収録。
北アイルランドはデリーの町。人びとの根深い対立に端を発する、うわさや密告や陰謀がうずまくミステリアスな町。行方知れずの伯父さんに一体何があったのか?心を閉ざす母。愛すべき沈黙をまもる父。家族一人一人が決して口にしてはならない秘密を胸深く封じこめて生きている。魅惑と恐怖が背中あわせの闇のなかで、のびやかにして繊細な少年の心に刻まれる、生と死と愛と孤独-。アイルランドのゆたかな幽霊伝説や妖精譚に彩られた少年の日々を詩情あふれる筆致で描く。「今日のアイルランドが生んだ小さな大傑作」と絶賛された、心ふるえる連作小説。ガーディアン紙小説賞受賞。
街中の白い目を逃れて、ケヴィンとセイディーが故郷ベルファストから駆け落ちして4年。お金も、家も、たしかな仕事もなにも持っていない。ロンドンへ、リヴァプールへ、ふたりは、自分たちの本当の場所をさがして移り住む。やがて、ちいさな新しい家族ブレンダンも加わった。だが、ようやく落ち着いたチェシャーの田舎暮らしもつかのま、農園主の突然の死が、一家の運命をまたもや変える…。若い夫婦と赤んぽう、そして犬のタムシンは、ポンコツのワゴン車を改造して、ふたたび旅立っていく。カトリックの夫、プロテスタントの妻。旧世代がけっして越えることのできなかった、あの厳しい宗教的対立を、この若い夫婦は身をもって乗りこえようとする。イギリスの女性作家ジョアン・リンガードの感動の5部作、待望の完結篇。