著者 : 橋本槇矩
アイルランド文学の本領は短篇小説にこそある。歴史・風土・宗教・口承の伝統など、アイルランドを様々な角度から浮き彫りにする傑作短篇一五篇を精選。イギリス文学とはひと味ちがう、独特の味わいに満ちた緑色のオムニバス(乗り合いバス)にあなたも乗ってみませんか。
ボウエン夫人の自慢は庭の草木の手入れ。地面に挿し木をしてやるだけで野菜や果物はすくすくと成長し、庭を覆うほど繁茂する。あるとき、彼女は誤って自分の指を斧で切り落としてしまうが、病院から戻ってみると何と…(「園芸上手」)、ポーの「黒猫」を思わせる恐怖小説の逸品(「人殺し」)など戦慄の8篇。
八十万年後の世界からもどってきた時間旅行家が見た人類の未来はいかなるものであったか。衰退した未来社会を描きだした「タイム・マシン」は、進歩の果てにやってくる人類の破滅と地球の終焉をテーマとしたSF不朽の古典である。他に「水晶の卵」等9篇収録。
「ほとんどなにも信じない代わりに偏見もない」と自負するハロルド・ライト一家は、陰惨な殺人事件があったため誰も買い手のつかない豪邸を格安の条件で手に入れるが…。(「猫は跳ぶ」)コナン・ドイル,H・G・ウエルズ、コンラッドら9人の作家が腕によりをかけてお届けする、とっておきのコワーイ話のオンパレード。
「恋はたいせつなもの…永遠だ。人生は、あっというまに過ぎるのに、聞いてごらん。流れる水が教えてくれるのもそのことなんだ…」少年の、月あかりのように淡く幼い愛と時間と死が、幾筋もの虹のように交錯しつつ展開する美しいメルヘン「恋のお守り」、主人公の少年と頭のおかしいオールド・ミスの奇妙な交友を描きつつ人間の宿命を暗示する「ミス・ダヴィーン」など、珠玉の抒情小説10篇。たそがれの詩人デ・ラ・メアによって誘われる、夢と現実のあえかな境界ー。