著者 : 武藤浩史
羊飼いの青年が開拓地を求めて挑んだ険しい山、その向こうに謎の国「エレホン」はあった。手づくりの清潔な街並みに住む人びとはみな優しく、健康的で美しい。でも、それには“しかるべき理由”があった。病める者、不幸な者が処罰される一方で、お金持ちは罪を犯しても心の迷いとして許されるー。自己責任、優生思想、経済至上主義、そしてシンギュラリティ…150年前、自由主義経済の黎明期に刊行されたイギリス小説があぶり出す、現代人が見ることになりそうな未来、人間の心の暗がり。
七十をすぎても引退せず、老人施設の研究調査のためにイングランドじゅうをクルマで走るフラン。当人は元気だが、高級老人ホームで余生を送る親友、重病の幼なじみ、自宅で寝たきりの元夫、新聞を開けば飛び込んでくる誰かれの訃報と、老いと死を意識せずにはいられない。友人を見舞い、50年前に別れた夫にせっせと手料理を届け、恋人を亡くした息子を案じて携帯メールを送るが、気難しい娘との関係には自信がない。傷心の息子が身を寄せる、カナリア諸島の高名な老歴史家と長年連れ添ったゲイの恋人の姿をあわせて描きながら、人生の終盤を送る人びとの心理と日常を、英国的ユーモアを随所にちりばめながら描きだしたビターでみずみずしい長篇小説。ドラブル健在!
20世紀イギリス文学を代表する作家ロレンスの自伝的小説。19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台に、主人公ポール・モレルの生い立ちと成長が、親子、兄弟、仕事、恋愛、性、生死など人生の重要な要素と局面を中心に、喜びと悲しみの両方向から力強く生き生きと描かれている。全著作の中でも、とりわけ芸術性が高く、しかも親しみやすい傑作を、完全復元版の新訳で。ちくま文庫オリジナル。
キーポイントは、口。メディア・セクシュアリティ・帝国・大飢饉などの歴史。そして、基礎作業として、まず真理と物語の問題。多彩な要素が絡みあいながら、テキストをさまざまに彩ってゆく。
愛の悲喜劇を完璧な筆致で描く英国不倫小説の極致!それは恋なのか、臓腑をえぐる欲望なのか?ロレンス、ジョイスなど20世紀を代表する作家を世に送り出した名編集者にして英国モダニズムの巨人、本邦初登場。