著者 : 武藤浩史
一五〇年前に描かれた「理想郷」に、私たちはいま辿り着こうとしているーー。羊飼いの青年が迷い込んだ謎の国「エレホン」。人びとはみな優しく、健康的で美しくー。でも、それには“しかるべき理由”があった。自己責任、優生思想、経済至上主義、そしてシンギュラリティ……。社会の幸福とはいったい何なのか? ディストピア小説の源流とされる幻の長篇が、現代人の心の底に潜む宿痾をあぶり出す。
『碾臼』から半世紀、八十を前にした大家が描く英国の枯れない老人たち。知的で辛辣、自由を重んじ、七十代のいまも仕事のため遠方まで車を走らせるフランチェスカ、病床にあるどこか憎めない元夫、高級老人ホームで悠々自適の女友だち、恋人を突然亡くした息子が身を寄せるカナリア諸島のゲイの老カップル……。いかにも英国的なユーモアをちりばめながら、人生の終盤を生きる人々を描く長篇小説。
20世紀イギリス文学を代表する作家ロレンスの自伝的小説。19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台に、主人公ポール・モレルの生い立ちと成長が、親子、兄弟、仕事、恋愛、性、生死など人生の重要な要素と局面を中心に、喜びと悲しみの両方向から力強く生き生きと描かれている。全著作の中でも、とりわけ芸術性が高く、しかも親しみやすい傑作を、完全復元版の新訳で。ちくま文庫オリジナル。
『ドラキュラ』の中の興味をそそってやまない謎や矛盾に焦点を当て、大学生や一般読者に物語テキスト読解のコツを伝授する。「口」をキーワードにしたメディア・セクシュアリティ・帝国・大飢饉などの歴史。基礎作業として真理と物語の問題。多彩な要素が絡み合うなかを、領域横断的に読解する面白さとスキルを教える。 序 第1章 真理と物語 第2章 表の真理、口を通して裏の世界へ --口と聴覚・音声メディア文化事情 第3章 セクシュアリティ 第4章 西と東の政治的裏表 --音声情報戦、そしてアイルランド大飢饉 あと書き 文献案内
愛の悲喜劇を完璧な筆致で描く英国不倫小説の極致!それは恋なのか、臓腑をえぐる欲望なのか?ロレンス、ジョイスなど20世紀を代表する作家を世に送り出した名編集者にして英国モダニズムの巨人、本邦初登場。