著者 : 水野梓
金融庁・金融危機対応室に勤める香月彩は、業績悪化の一途を辿る地銀と中小企業のテコ入れを図る一方、父親の死の真相を探っている。11年前、父は、祖父が経営していた運送会社の粉飾決算に荷担していた。良心の呵責に耐えかね、金融庁が所管する証券取引等監視委員会に告発を試みた父だが、告発文は握りつぶされ自死してしまったのだ。もみ消した人間は金融庁内部にいる。絶対見つけ出し復讐するー。必死に勉強し金融庁に潜り込んだ彩の悲願は、果たして叶うのか。
「ねえ先生、私まだ生きていていいんでしょうか?」「あたし、人の気持ちがわからない子なんです」臨床心理士の藍が出会ったのはある殺人事件をめぐる二つの家族。背後に潜む“闇”に気づいたとき、事件の真相が見えてくる!現役記者が描く、渾身の社会派長篇小説!
私たち、三十八歳。全てが順風満帆にすすんでいる、はずだった。出産によってマミートラックに追いやられてしまった凛。シングルマザーとして、発達障害の子供を抱え貧困から抜け出せずにいる響子。週刊誌のサブデスクにまで昇進しながらも、不妊治療がうまくいかない美華。月一回のランチ会で愚痴をこぼすことでストレスを解消していた私たち。いつの間にか本当の悩みは避けるようになっていた。誰にも言えないその感情はやがてー。日々の痛みに挑む三者三様の闘い。
テレビ局に籍を置き、ドキュメンタリー番組の制作を手がける美貴。ある日、高齢者施設で不審死が相次いでいるとの週刊誌の記事が目に留まる。その後、主要メディアや官邸に犯行声明が届く。書面には「何も生み出さない高齢者は『社会悪』だ」などと書かかれていた。取材を進める美貴は、偶然の出来事から悟と名乗る青年とかかわるようになる。悟の生きてきた道程を知った美貴は、この国が抱える深い闇の存在に強い衝撃を受けるー。
「私は事件には一切関係していません。真犯人は、別にいます」そう言い残して絞首台を登っていった男。時はめぐり、小学生が学校の屋上から落ちて亡くなるという事故が発生する。いじめによる自殺を疑って取材を進めていたテレビ局社会部の女性記者は、少年の母親が、冤罪が疑われる事件の加害者として極刑となった男の娘だと知る。果たして二つの事件と事故に関連はあるのか!?警察権力との暗闘の果てに、女性記者がたどりついた驚愕の真実とは…。