著者 : 汀一弘
春の雪が舞う朝、わたしは妻の部下と対していた。健康上の理由から妊娠を禁じられた彼女は養子縁組をへてわが子を得たのだが、くだんの赤ん坊が昨朝姿を消してしまったのだという。悪質な養子斡旋業者による誘拐?だが調査にかかるや事件は哀しい素顔を表わしはじめた…。真相を追いながらも父であり夫であることを忘れない探偵ボウディン。ウイッティで重厚な好連作発進。
娘の名はクリーオウ、自称22歳。とある風の強い午後、スメドラー法律事務所を訪れた被女は、謎めいた台詞を残して帰途についた。そして数日後、ひとつの報せがもたらされる。娘が失踪した、という。捜索に駆り出されたアラゴンだったが、澱んだ池に投じられたこの一石は、人々のあいだに意外な波紋を描き出していく…。心に弱点を負った男女の軌跡を辿る、異色のサスペンス。
ジョン・ロークは生き別れになった妻子を探して、第3次世界大戦後の荒廃した世界を旅するうち、奇妙な町に行きついた。そこではまるで戦争などなかったかのように、平和そのものの暮らしが営まれていたのだ。店ではごく普通に商品が売られ、ガソリンスタンドではちゃんとタンクを満タンにしてくれる。しかし、どこかが、ほんの少しおかしかった。
ダラスの高校教師デヴィッドは、美しい恋人ローラと幸福な生活を送っていた。そんな彼の唯一の心残りは、ヴェトナム戦争で死んだ愛する兄のこと。ある日、天才物理学者クープマン博士がタイムマシンを発明したことを知り、デヴィッドは一つの計画を思いついた。ヴェトナム撤退を決定していたケネディ大統領の暗殺を阻止すれば、戦争は拡大せず、兄も死ななくてすむのだ。博士を説得したデヴィッドは、暗殺現場に跳ぶ。だが一足違いで間にあわず、あろうことか暗殺犯として逮捕されてしまった。軽快なタッチで描く愛と勇気の冒険ファンタジイ。
ロックが少年の脇で急停止した車に気づいたときは手遅れだった。彼はもう一台の車から飛び出して襲ってきた3人の男を倒すのがやっとだった。その隙に、少年を押しこんだ車は彼の眼の前を走り去った-。かつてSAS将校として勇名を馳せたジョン・ロックは、トロントに住む一匹狼のボディガード。彼の今回の仕事は富豪の一人息子ハービーの警護だった。ハービーは高校をドロップアウトした問題児だが、以前は絵を描くことが好きな心優しい少年だった。家族は優れた芸術作品に触れさせることで昔の情熱を取りもどさせようと、護衛をつけて彼をイタリア旅行に出すことにした。が、到着早々ハービーは何者かに誘拐されてしまったのだ。-プロの意地をかけて少年を奪回せんと反撃に出たロックだが、そこには犯罪組織の絡む罠が…。
20年にわたる暴力と謀略の世界に別れを告げ、FBIを辞めたピート・ケッターは静かな町カスケードへ帰ってきた。法律家として再出発し、平穏な生活を送ることを夢みて。だがー次々と女性が殺されるという事件に彼の夢は破られた。一見穏やかな故郷の荒廃に気づいたピートは、姿なき殺人者を追ううち、捨てたはずの「狩人」としての情熱の甦りを感じていくー。苦悩する男の変貌を息子との交情を通じて描く、新鋭ウイルツの人間ドラマ!