著者 : 海老原志穂
チベットの現代作家たちが描く、 現実と非現実が交錯する物語 伝統的な口承文学や、仏教、民間信仰を背景としつつ、 いまチベットに住む人々の生活や世界観が描かれた物語は、 読む者を摩訶不思議な世界に誘うーー 時代も、現実と異界も、生と死も、人間/動物/妖怪・鬼・魔物・神の境界も超える、 13の短編を掲載した日本独自のアンソロジー まえがき 三浦順子 1 まぼろしを見る 人殺し/ツェリン・ノルブ カタカタカタ/ツェラン・トンドゥプ 三代の夢/タクブンジャ 赤髪の怨霊/リクデン・ジャンツォ 解説 海老原志穂 2 異界/境界を超える 屍鬼物語・銃/ペマ・ツェテン 閻魔への訴え/エ・ニマ・ツェリン 犬になった男/エ・ニマ・ツェリン 羊のひとりごと/ランダ 一九八六年の雨合羽/ゴメ・ツェラン・タシ 解説 三浦順子 3 現実と非現実のあいだ 神降ろしは悪魔憑き/ツェラン・トンドゥプ 子猫の足跡/レーコル ごみ/ツェワン・ナムジャ 一脚鬼カント/ランダ 解説 星泉 おわりに 星泉
現代人の孤独という同時代的な問題を投げかけるチベットを代表する作家・ツェラン・トンドゥプの初翻訳小説集。社会や宗教、政治の腐敗に対する風刺をテーマに、変わりゆく世相や、人びとの抱える現実や苦悩をリアリスティックな筆致で描き出す。 チベットの人びとだけでなく、英語、フランス語、ドイツ語などにも翻訳され、世界各地で読まれている。およそ30年にわたる作家活動の中で生み出された数多くの作品の中から、珠玉の短編15篇、中編2篇を掲載。 地獄堕ち ツェチュ河は密かに微笑む 黒い疾風(はやて) 月の話 世の習い ラロ 復讐 兄弟 美僧 一回の真言(マニ) D村騒動記 河曲馬 鼻輪 両親の介護をした最後の人 あるエイズ・ボランティアの手記 ブムキャプ 黒狐の谷 訳者解説