著者 : 清水徹
18歳でわたしは年老いたー。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インドシナを舞台に、15歳のときの、金持の中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。センセーションをまきおこし、フランスで150万部のベストセラー。J・J・アノー監督による映画化。
早朝、汽車に乗り込んだ「きみ」はローマに住む愛人とパリで同棲する決意をしていた。「きみ」の内面はローマを背景とした愛の歓びに彩られていたが、旅の疲労とともに…。一九五〇年代の文壇に二人称の語りで颯爽と登場したフランス小説。ルノードー賞受賞作。
彼は、1932年1月、私の人生にはいってきて、それからは一度も立ち去ることはなかった。あのときから四半世紀あまりが過ぎた。そのひとのためには喜んで生命さえも投げだしていいと思う少年の日の友情。第二次大戦前の暗い雰囲気を背景に、貴族の美少年とユダヤ人医師の息子の友情と別れと悲劇的な「再会」を描く必読の青春の書。
あのひとが何年もまえに死んだと人づてに聞いた。「…」あの中国の男の死、あのひとの身体の死、あのひとの肌、あのひとのセックス、あのひとの手の死が起ころうなどとは想像もしていなかった。-その知らせを契機にデュラスは『愛人』で語られた物語を根本的に考え直す。狂おしいほどの幸福感とともに書きすすめられたのが、もうひとつの“愛と死の物語”『北の愛人』なのである。
『愛人』のモデルとなった男の死を最近知ったデュラスが、憑かれたように書き上げたもう一つの愛の物語。『愛人』の姉妹篇。最新作。〈絶望のワルツ〉にのせて語られる、15歳の少女と中国人青年との、性的悦楽と殺意が溶けあった“狂気の愛” デュラスの最高傑作。
故国ベネズエラでの政治的迫害をのがれて絶海の孤島に辿り着いた《私》は、ある日、無人島のはずのこの島で、一団の奇妙な男女に出会う。《私》はフォスティーヌと呼ばれる若い女に魅かれるが、彼女は《私》に不思議な無関心を示し、《私》を完全に無視する。やがて《私》は彼らのリーダー、モレルの発明した《機械》の秘密を…。二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。